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第1回─初めての出会い


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 星空を見上げながら、老人はひとつの古い物語を思い出し、傍らにいる少女へ静かに語り始めた。


「むかしむかし、ある男の子が星の国に住んでいた。そこは希望と奇跡に満ちた場所で、その男の子は百五十歳になるまで、静かに世界の移ろいを見つめることだけを許されていた。


 毎日、彼はそうして世界を見つめていた。けれどある日、ひとりの少女を見つけた。


 少女は道を歩いていて転び、雨の中で声をあげて泣いていた……」


 少女は泥だらけのまま、拳で何度も地面を叩きながら、どうして自分だけが独りぼっちなのかと泣き叫んでいた。何度も、何度も問いかける。


「お父さんもお母さんも、どこにいるの?」


 男の子は、その絶望に満ちた泣き声を見つめながら、胸の奥に驚きと戸惑いを覚えた。


 希望と奇跡に満ちた場所に、こんなにも悲しそうに泣く者がいるなんて。


 少女はなおも地面を叩き続け、ついには手から血がにじみ始めた。


 男の子は彼女が心配になり、禁忌を破って星の国から人の世へ降りることを決めた。


 その瞬間、彼の身を包んでいた銀青色の光は少しずつ薄れていき、そして――大雨の中、道の上へと落ちてきた。


 突然の物音に少女は驚き、慌てて後ずさる。


 男の子はゆっくりと体についた泥を払うと、彼女に近づき、まるで珍しい生き物でも観察するようにじっと見つめた。


「何をしているの? 君は誰?」


 男の子は泥で汚れた袖で、そっと彼女の涙をぬぐった。


 少女は一瞬、ふいに静かになったが、すぐにまた泣き出してしまった。


「どうして泣くの?」


「あなたには関係ない!」


「泣くって、どんな感じ?」


 男の子は、少女が信じられないものを見るように自分を見つめているのを見て、少し考えてからまた尋ねた。


「泣くのって……雨みたいなもの?」


 少女は呆然として、まっすぐに彼を見つめた。


「あなた、泣いたことないの?」


 男の子は静かに首を振った。


 少女はもう泣き続けることができなくなり、代わりに目の前の奇妙な男の子へと興味を引かれていった。


 彼女はゆっくりと近づき、その不思議な衣装に目を奪われる。


 月明かりの下、その長い衣は水色と金色の光をきらめかせていた。


「何がしたいの?」


 少女は手を伸ばしてその衣に触れ、口元に笑みを浮かべながら、小さく鼻歌を歌い、彼の長衣を脱がせようとした。


 男の子は慌てて彼女を押しのけた。


「だめ!」


 少女は眉をひそめ、不満そうに言った。


「けちんぼ。どうしてだめなの?」


「これがなくなったら、希望も奇跡も消えてしまう」


「ふん、信じない」


「本当だよ……どうしてずっと地面を叩いていたの?」


「見てたの?」


「うん」


 少女は空を見上げ、しばらく黙ってから、小さな声で言った。


「お父さんもお母さんも、私を置いていったの。弟や妹のために花を売ってたけど、稼いだお金は全部、お酒や服に使われちゃって……」


「どうして君を置いていったの?」


「私、病気になったから。もうお金を稼げなくなったの……」


「どんな病気?」


「心の病気。黒い穴があって、それが私を飲み込もうとするの」


「怖い?」


「うん」


 男の子は彼女の頭に手を置き、やさしく言った。


「大丈夫。僕が君に光をあげる。手を出して」


 彼の光が彼女の手のひらに落ちると、そこからあたたかさが伝わってきた。


「すごい……どうして私にこれをくれるの?」


「それは、信じる気持ちで強くなる光なんだ。もし黒い穴が来ても、それを信じればいい」


 少女は嬉しそうにその光を空へ放った。光は砂のようにさらさらとこぼれ落ちた。


「見て、私、天使みたいでしょ?」


 男の子はそんな彼女の姿を見て、頬を赤くした。


 少女は声をあげて笑った。


「私、きれいだと思う?」


 男の子は静かにうなずいた。


「じゃあ、ずっと私のそばにいて!」


 彼女は彼の手を引いた。


「行こうよ。一緒にこの世界を見に行こう!」


「でも、君の家族は?」


「平気。あなたがいてくれれば、それでいいの」


 その夜、ふたりの運命は変わった。


 老人はそう語り終えると、遠くの夜空を見つめたまま、何も言わなくなった。


「どうしたの? おじいさん」


 少女は老人の背中を見ながら問いかけた。


「なんでもない。夜風が波を荒らしてきた。危ないから、家の中へ戻ろう」


 老人はそっと扉を閉め、風の音を屋外へ閉じ込めた。


 部屋の中は薄暗く、ひとつの小さな灯りだけがともっている。


「ここで休むといい。寝床はあまり良くないが、眠れはする」


 彼は部屋の隅にある木のベッドを指し、静かな口調で言った。


 少女はそこへ歩いていき、そっと腰を下ろし、粗い毛布を手で撫でた。


 部屋の中は静まり返り、残るのは風雨が窓を打つ音だけだった。


 彼女は毛布を引き上げ、体を丸める。まるでその物語を夢の中へしまい込むように、風雨の規則正しい音を聞きながら、まぶたはだんだん重くなり、やがて静かに眠りへ落ちていった。


 窓の外、木々のあいだで揺れ擦れ合うさわさわという音も、次第におさまっていき、風雨の音も少しずつ遠のいていく。それでも夜の気配だけは、まだ空気の中に残っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 光が霧のようにしみ込んできて、そっと彼女のまつ毛の上に降りた。彼女は目を開け、体の中にまだ昨夜のぬくもりが残っているのを感じた。


 彼女はゆっくりと起き上がり、老人が机のそばで茶を飲んでいるのを見た。


 光が霧のようにしみ込んできて、そっと彼女のまつ毛の上に降りた。


 少女は目を開け、体の中にまだ昨夜のぬくもりが残っているのを感じた。


 彼女はゆっくりと起き上がり、老人が机のそばで茶を飲んでいるのを見た。


「おじいさん、昨日の話、続きを聞かせてくれる?」


 老人は微笑みながら言った。


「ゆっくり食べなさい。食べながら聞けばいい。物語は、これからようやく始まるのだから」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


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