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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第13章:新しき人々

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母が見たキス

 マリーとの邂逅のあと、千種は帰宅した。

 ほぼ同じタイミングで幸平も続く。


「だぁー、今日も投げたぜい」

「どこの国の人の言葉よ」

 千種はそう笑い

「マッサージいる?」

 ん、ああと幸平。


「二人になったら料理どうしよう」

「アパートに住みだしたらってこと?」

「ん。早めに千紗さんとか橋本に習っていて助かったな。俺は千種にも習ったし」

「そうね。ちゃんと考えないといけないなー」

「今日くらいになるとどっちが作っても遅くなるもんな」

「合宿所みたいなものがあるといいのかな」

 自由に語らいながら帰宅後の用事をこなす。


「また残業?」

「仕事じゃないけどね」

「ほかの部活知らないけど、折井でもしてないくらい千種やってんじゃないかな」

「好きってわけじゃないけど、先生のためになるなら構わないわよ」

「よく続くもんだ」

「あたしは選手じゃないから…」

 そう言って千種は黙り込んだ。


「どうした?」

「今日ね、マリーさんが来たの」

「マリー…スティーブンスだっけ。とんでもない人が来たよな。太郎のお母さんって聞いて見る目変わったわ」

「太郎くんがかわいそうじゃない」

「あいつ、光太郎とは別の意味で化け物だからな」

「そんな風に言わないの」

 でね、と続ける。


「マリー先生が本格的に関わるのでよろしくって挨拶だったんだけど…」

「どうした?」

「私よりも年上みたいに見えるって。選手じゃないからそれ以上は言わないけどって」

 踏み込むべきか幸平は一瞬迷う。しかしある種の決断を持って

「ミコさんのなにか感じたんじゃないか?」

 と聞いてみる。その幸平のためらいを感じて

「あたし、愛されてる」


「どこにそんなこと言った!?」

「いいの。あたしが知ってれば…」

「なんだ、それ?」

 湧き出る愛情表現のように、千種は幸平の頬にキスをする。


 当然のように千紗さんがドアを開けた。

「あらあら」

 とにっこり笑い、そのままドアを閉めた。


 この二人、お互いの信頼感の割にベタつくタイプではない。だからこそ、このタイミングは狙っていなければそうそう出くわすものではないはずなのだが…。


 まあ別に頬だし。

 そうやって幸平は自我を保つ。

 千種はやっちゃったなあと反省したふりをする。

「相原コーチなんだけどさ、来週こっちに来るらしい」

「いよいよね」

「元さんの調子が回復してきたから、退院後のこととか…まあ元さんの面接?かな」

「確認だけど、元さんが相原さんを面接、なのよね?」

「それで合ってると思うんだけど…顔合わせかもしれないな」

「遊佐さんや葉さんのことは始めたみたいだけど、新しいアパートのこととか動かないといけないもんね」

 あくまでも大杉元も(最近特に口が)元気過ぎる橋本薫も療養中だ。実行者が足りない。

「相原コーチにまだマリーさんのこと伝えてないんだよな」


 前途多難である。





千種ちゃんと幸平くんの一日

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