体育祭、文化祭
朝礼でまず玲先生は野球部に触れた。
「人口減少が日本の課題です。スポーツ界においても様々な種目で競技人口が少なくなることが懸念されています」
連合チームのことだろうか。アスリートの第一人者から出る言葉は重い。
「もう言わなくてもわかりますよね。高良と最内の野球部連合チームが準優勝を飾りました」
おぉーとみんな拍手。千種も笑顔だ。
「…なぜかこのクラスには野球部が全員」
「山形くんが別ですよー」
マロさんが茶化す。
「…失礼しました。ほぼ全員が集まっています。それと水泳のたかだか高校三冠の二人も」
あーなんかやらかしたろ。主に…橋本が。
ちらりと先生は橋本を見る。
肝心の橋本は…知らん顔だ。
「少しタイムが悪かったって先生が注意したら…」
ナイス情報だ、美樹。
「練習のことで言葉が余ってババアって」
いくらなんでも、そりゃ橋本が。
「言ったのはヒメなんだよ」
ええっ?
あの二人普段から緊張感あるからな…。じゃあなぜ橋本が?
「ヒメをかばったの」
確かに意外とリーダーシップあるからな。なかなか女性だけ、しかも指導者が現役となれば難しい感情もあるんだろう。
あ…。相原コーチのこと先生に言わないと。
「千種」
「ん?」
「なんとかできないの?」
「ヒメはとにかく…先生だよ?」
さすがにそれは無理か。
「…今週中には体育祭、文化祭のクラス代表を決めてください」
朝礼が終わった。
体育祭と文化祭って続けてあるらしい。どちらも一日のみ。文化祭は来年から日数が増えるらしいが、今年は転入生がかなり多かったため昨年同様とのことだった。3年生は残念だろうけど、昨年並みならまあ納得の範囲だろうか。
「幸平…ちょっと」
千種に引っ張られるように前へ。
「えーと先生のおっしゃられていたクラス代表ですがまとめて、でいいでしょうか?」
クラス委員だったわ、俺。
「秀吉とヒメで良くない?」
今朝はいつも以上にハイテンションのマロさんが提案する。
ばらばらに、異議なしの声。
あっさりしているって言うか、大人って言うか。
「じゃ田中くん、山門さんどう?」
二人とも指で丸印。あっさりと決まった。
「あとで先生とお願いね」
「はーい」
「うぃーす」
なんとも気の抜けた返事だった。
昼休み。玲先生に相原コーチのことを話に行く。千種に一緒に行くかと尋ねたけど、どうやら橋本のケアをしたいよう。
有能マネージャーは親友のことを一番に選んだらしい。さすが群れのリーダー。
「また変なこと考えてるでしょ」
まさか、ね。




