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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第11章:秋のできごと

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181/212

甲子園まであと1勝

 準々決勝が始まった。

 初回、先攻の相手チームは監督の予想通り左が並ぶ。川上は昨日と同じで全力投球だ。セカンドから見てるけど球が昨日より走っているような。

 真ん中に2球。ランナー出してもいいから、相手の出方を大胆に探る田所。そのまま勝負のインローへツーシーム。サインから一塁側へ一歩移動したのが正解でぎりぎり追いつき、ベースカバーの川上へ。まずワンナウト。

 きっちり捉えてくる。


 そして二番、三番も内野ゴロに仕留めた。


 東原がキャッチボールを始める。次の回も川上で良さそうだけど袋井は交代を選択。

 相手投手は背番号10。明日以降を見据え二番手投手を出すのは妥当なところ。

 一番の黄田は数度バントの構えで三塁手を前に出させ、結局は殺したような打球で三遊間へ深いゴロ。楽々セーフ。

 袋井は?

 ノーサイン。


 待つか。二度牽制が入る。黄田がわずかに頷く。

 癖かタイミングか。

 黄田の観察眼に舌を巻く。

 初球は大きくはずれ、次は外側を見送る。

 速いが…あの中学生ほどではない。

 サインが出ないので決め打ち。内側を見せてくるはず。まだボールを使う余裕はないだろう。

 あとはストレートのタイミングで変化球に合わせられるか。

 初めて長打を狙い、振り抜くとほとんど感触のないままライトへ。

 この感じは伸びる。積極走塁を…とファーストのあたりで歓声を意識する。

 入ったようだ。


 ホームからベンチに帰る前に次打者の沢村から

「目覚めの一発だな」

 と声をかけられた。


 沢村は左中間を割り二塁へ。驚いたことに田所に送りバントの指示が出て、サードコーチャーの袋井をみんなが見る。

 バスター。

 なぜか一発に美学を見出だしている田所だが、バットコントロールは人一倍。

 …つまり打球はサードの頭を越え、詰まった当たりがゆえにレフト線を転がる。

 ふざけたような二塁打だった。


 さあ今日の宝くじ。

 ここまでタイムをとる間もなく長打にさらされ、さすがにやっとマウンドに内野が集まる。

 袋井は早くも勝負所と読んだのか、初球スチール。捕手がはずせと立ち上がりかけたが放ったあと。ボールは呼び込まれるように山形の好きなやや低めのゾーンに力なく半速球。

 俺でもあそこまで打ち頃な速さは無理だと思う間もなく…ボールはレフトを遥かに超えていた。


 圧倒的な先制点はかなりのプレッシャーとなっただろう。諦めず相手もこつこつと点を返し、こちらも手堅くワンナウトずつ稼ぐことにより8回表で5対4とリードしていた。

 川上から東原、沢村、黄田、さらに東原と継投を繰り返し、あと1イニング。ここで6番からの下位が粘りを見せ、三番手投手から三つの四球。川上の代わりに入っていた東原がフルカウントからボールを見極め、貴重な追加点を押し出しで得た。


 最終回は左が続く一番から。黄田ではなく俺に指名。延べ6人目だ。捕手は田所から袋井へ。

「監督が代われって」

 サインの確認を…とすると

「全部ストレートでいいよ」

 ほんとに?

「ただし全力で」

 まあそういうことなら。

 打者に対して上から本気で投げるのはいつ以来か。

 ややコントロールはばらつきながらも、俺はゾーン内に打球を飛ばさせず、3人を三振に仕留めた。


 でき過ぎだけど勝ちは勝ち。6対4の勝利。

 あと一勝。


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