あり続けようとする意思は
驚いた。
生きてきた中で間違いなく一番。
あの千種が唖然とし、当の本人の美也子でさえ言葉が出ないようだ。
行朝さんも千紗さんも眉をひそませている。
「早名さんは…」
千紗さんに喋らせてはいけないと行朝さんが口を開く。
「私個人としたら、もしかして…と胸の中で…」
「うすうす…」
千紗さんはやっとそれだけを絞り出す。
「知る人は少ないです。もしや…と思う方はいらっしゃるようですが」
深く息を吸い、行朝さんは
「驚きました。おそらく妻も。子供たちも」
そして
「美也子ちゃん。この続きを聞くかい?」
懐の深い人だ。美也子をまず思いやる。
美也子は直接答えず、
「お母さん」
と涙を零した。
誠心さんの説明はこうだった。
姉清が巫女を辞した後、やはり次は妹の華が推されるはずたった。
華は嫌がり、たまたま持ち込まれた縁談を選んだ。それが六条家の主となる猛であった。話はすぐにまとまりやがて…長男日向が産まれた。
異変はその時。
子供を愛せない。そう華が気付いたのは初めてわが子をみた時に。
心が動かなかったと言う。
それでも何年かは頑張ってみたものの、同じだった。そしてやがて美也子が産まれ、やはり同じだと分かり、猛と離婚する道を選んだ。
猛がその後どのような心境に至ったかは分からない。が、結果として六条家を絶やす…日向を養子にそして美也子もまた、遠い地へとやる選択をしたのだった。
その時に猛から華に相談があったと言う。手元に美也子を置いてくれないかと。
その後は俺も知っている。叔母さんは美也子に優しくあろうとし、美也子もその努力をしていた。ぎこちないながら、二人はその関係を築こうと間違いなくしていた。
説明を終えて誠心さんは深い息を吐いた。
千紗さんが笑う。
「良かったじゃない。これで晴れて親子よ。あんな面倒くさいところ逃げ出しなさい」
新しい絆を結ぶ。難しいことはない。もう二年も経った。邪魔を誰が許すものか。
「もしかして最近、偉い人とかの接触がなにかありましたか?」
行朝さんが誠心さんに質問する。
「ええ、かなり面倒くさい人たちから数件」
「ほんとサナメノツガイなんてろくなもんじゃない」
千紗さんが珍しく吐き捨てるように言う。
別室へと誠心さんは華さんに言う。
二人が出ていったあと、緊張感がとけた。
そして。
華さんと美也子をいかにするか、大人たちの作戦会議が始まった。




