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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第10章:三馬鹿、三人娘、三姉妹

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163/201

勝利

 二塁には一条が入った。機転の利く器用な選手だ。

(ほんとに固いバックだ)

 一夏を内野守備だけに費やしたって言うんだから、東原がキャプテンでよくまとまってたもんだ。この先最内は守備力が特徴のチームになっていくんだろうな。


 規定の球数を終え、打者を迎える。

(シンカーね)

 真ん中へ、と田所。

 そんなに簡単に…。


 かかった。

 いい具合に球が抜け、真ん中のため振りに来た打者の手元でわずかに沈む。

 芯を外したが強い打球が三塁線へ。

 逆シングルで菊川。

 素早く送球してアウト一つ。


 気早に次打者が打席へ。

 これは分かりやすい。

(せっかち、か。なら引っかけさせるんだよな)

 アウトローへまたシンカー要求。

 たぶんバッターより俺の方が余裕あるはずだ。

 セットから少し間を置いて、打者が息を吐く瞬間の手前でモーション開始。

 慌てたバッターは思い通りにショート正面へのゴロ。

(ランナーいたら面白かったのに)

 味方のダブルプレー見たかった。最内の連中の球回しは華麗だ。そして児島の身体能力はすごい。


(代打か)

 苦手な左バッター。

(どうする?上から投げるか?)

 正直俺は横も上手も変わらない。ただ投げやすいのは横。

 田所がモーションで横を指示。

 左右勝負を選んだのだろう。バッターは、強く腕を振れとでも勘違いしてくれるだろうか。

 この場面で腕の振り方指示とかあり得ないもんな。


 と言う訳で。

(結局またシンカーか)

 なんだかずいぶん便利な球種だな…と力強く投げる…真似。

 三球目で一番抜けた。

 二球続けたから頭にあったろうに…むしろ意外だったのか、少し詰まった強い打球。

 一条が素早く回り込んで送球し、山形から代わっていた袋井がなんなく捕球した。


 ゲームセット。

 黄田が一安打、三つの四球。

 俺が三安打、一つの四球。

 宝くじはホームランこそなかったものの、すべて田所と山形で打点を稼いだ。


 要するに。

 立派なまぐれ勝ちだった。


 整列して千種の方を見ると…控えめに右腕でガッツポーズを一瞬した。

 俺も帽子に手をやる。


 ・・・

 次の土曜日。

 俺たちは予定通りと言うにはあまりに大差で敗戦した。優勝候補だものね。

 監督は

「プロより練習しているようなチームに勝ったら野球の神様に失礼だろ」

 と、俺たちを労った。


 この人は…たぶん野球以外のことを俺たちに伝えようとしてる。

 そんな気がする、と沢村は力説してる。


 真相はまだ藪の中。

 さあ、広域大会だ。

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