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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第10章:三馬鹿、三人娘、三姉妹

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162/207

ピッチャー早名くん

 俺たちの攻撃はまだ続く。

 沢村はしきりにスクイズの仕種を繰り返し、二度のピッチアウトを誘う。シンプルだけど相手投手には嫌な雰囲気を感じさせるだろう。

 フルカウントから、沢村はセーフティ気味に一塁側にバントした。


 マジか!

 慌てて本塁へと駆け出そうとした2歩目…

「バアーック」

 監督の大きな声が届いた。

 ええっ?

 俺ばかりか、打球処理にマウンドを降りた相手エースさえ虚を突かれた。相手エースはサードに送球の意識で塁を見たが、三塁手はダッシュ済みでショートのカバーが遅れている。俺は頭から戻り、沢村はそのまま内野安打で出塁した。

 いつの間にそんな作戦…。


 どうやら沢村だけが知っていたらしい。

 あの監督…なかなかの策士っぽい。


 動揺を深めた相手エースは初球大きくストライクゾーンを外した。沢村はスタンディングで盗塁成功。仮に二塁送球なら突っ込めってことか。判断任せるにも、もう少し優しくしてほしい。


 サードコーチャーの袋井と苦笑いを交わす。

 さて…宝くじ2枚だ。

 田所と山形。どっちが四番かじゃんけんで決めてたぞ、確か。田所が勝ったらしく、ボックスへ。


 すぐにライトフライ。俺は生還して沢村は三塁へ。

 再現のように山形もライトフライを打ち上げて沢村は悠々と帰還した。

 2安打で3点。なんだか打ち崩した気はしない。

 向こうも同じだろう。


 そこからは打ち合いになる。お世辞にも投手力が他のチームより勝るとは言えない我がチームは早めの継投をする。四回からは沢村が投げ(ライト東原だ、人数が少ないので早々交代は難しい)、4イニングをなんとか凌いだ。

 7回終了時で8対6とリード。ここからが勝負。2点ハンデ付きの有利な展開だ。


 8回の表は無得点。裏は川上があがる。

 偶然か、相手は左が3枚続く。

 ここで川上が覚醒(?)した。ストライクゾーン勝負で早めに追い込み、抜いたチェンジアップに相手バッターが空を切る。

「ビハインドであの出所から球を投げられたら、不安で力むよな」

 そうやって相手バッターの心理を読んだ田所の強気が三者三振を呼び込んだ。


 最終回。

 監督から声がかかる。

「早名。次行くぞ」

 投球練習をしろ、と。

 打順の遠い川上とキャッチボール。

「大丈夫。僕だってできたから」

 なんでおまえが緊張してんだよ、とつい笑顔になる。三馬鹿より怖いバッターがいないことは承知済みだ。田所の要求通りに投げればいい。

 簡単に表の攻撃が終わり、マウンドへ。


 投球練習しながらスタンドに目をやると金髪が目立つ。

 へえ、あの色が役立つときがあるんだな、橋本。

 たぶんあの辺りに中学生組は来ているか分からないから別として、なかよし水泳会がいるんだろ。 

 一人だけ見分けがついて、軽く帽子に手を当てて彼女に伝える。

「行ってくるよ」と。

 頷いたのが分かった。


 一仕事終えよう。

幸平くんは今回以上のプレッシャーに常々耐えています。

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