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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第10章:三馬鹿、三人娘、三姉妹

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魔球のススメ

 大差で高良・最内連合チームが負けた次の月曜日。

 あいにくの雨となり、室内練習場を持たない高良高校野球愛好会は自主練習となった。


 放課後、大前監督は素振りを繰り返す面々を横目に俺に近づいてきた。

「早名、おまえ変化球投げるよな」

「はい、速いのと遅いスライダーなら」

「右打ちのインコースは?」

「あまり曲がりませんけど、抜く感じで…シンカーのまがいものなら」

「…中指の下から抜いてカーブと逆方向に腕をひねって投げてみろ」

 なんの球だろう?


「すごく腕に負担がかかりそうですが」

 実際に握り方はこう、腕の振り方はこうと監督は手を添えて教えてくれる。

「ボールに力が伝わらなくて頼りなさそうなんですが」

 一緒にいた田所は球の軌道がイメージできたのか、

「チェンジアップの変形だ。きっちり決まれば俺打てねえよ」

 と楽しそうに言う。

「よく分かんない球だな」

 聞いていた監督は

「今の日本に投げるやついねえよ。遊佐だって面くらうだろ」

 と義兄の名を出し、やはり楽しそうに笑う。

 二人は投手でも、まして部員でもない俺に何を投げさせたいのやら。

「時間かかるはずだ。来年夏に間に合えばいい」

「中三トリオ、空振りさせられますかね」

「あいつら来年ここに来るんだろ?」

 監督は悪そうに告げた。

「鼻っ柱折ってやろうぜ」


 味方になぜ…?

「おまえならあいつらのいい先輩になるだろうさ」

 ちょっとずつ意味が繋がらないんですよねえ。


 ・・・

 かたや中三トリオ。

 雨で高校に行ってもバッティングができないと、ファストフード店に。

「心配すんな、太郎。おごってやる」

「おまえも太郎だろ」

「ロゼ 太郎」

 わざわざ姓と名の間をあけ強調するロゼ。

「それなら俺は大杉光太郎だ」

「…おまえら何回おんなじやりとりすんの?」

 ブート・キャリパーが呆れたように言う。

「こいつが太郎でなくなる日まで」

 とロゼ。

「死んでもやってんじゃねーか」

 さらに呆れる。

「二人ともほんとに高良に行くのか?」

 と光太郎が聞くと

「親父との約束だからな」

「なんか特別の理由?」

「いくらか知らないけどでかい金額を寄付してるって教えてくれたことがある」

「二人とも?」

 ブートは静かに頷き、ロゼはにこやかに笑った。


 この二人は個性がまるで違って、陽気なアメリカンと物静かな英国人…たかだか同い年の中学生なんだけど、どこか異質さを感じさせ、大人の世界の匂いがするのだった。

次回DTくんたちの帚木の帖です。ちなみに魔球は元西武の潮崎さんのシンカーです(ネタバレ)。

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