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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第10章:三馬鹿、三人娘、三姉妹

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自我と他我

「思ってたより事業欲のある方だったのよね」

 姉はそう言って笑う。

 橋本母のことを評したときの言葉だ。


「俺に仕事させろよ」

 早く負けても構わないくらいなことを言い、大前監督はなんと本来地区予選の準決勝にあたる土曜日を休みとした。本業のリハビリに関わりたいらしい。

 沢村なんかはグラウンドで調整してると思うんだけど、こちとら補欠の助っ人の身。溜まった諸問題…俺高校1年なんだけどなあ…を整理すべく千種邸の自室で姉と連絡をとった。

 なんせ一生に一度のお願いを既に使ってしまったから、行く末を気にかけないわけにはいかない。


「元さんには私と晶さんの事務所のこと。それと変な名前ね…なかよし水泳会?の組織の事務もお願いするって、玲さんから連絡あったわ。知らなかったけど同い年だったのね」

「弟に水泳やらせてスター(巨星)に興味なかったんだ?」

「他にいろいろあったもの」

 それは確かにそうだ。姉の多忙が回り回って、結果二つの家族の母を救っている。姉に感謝する。


「葉さん?」

 千種が部屋に来て声をかける。

「ん。代わる?」

「うん」

 そう言って千種は嬉しそうに姉と話し出した。

 この二人はほんとに姉妹みたいに仲がいい。それか、橋本家くらいが本来の距離感なのかもしれない。


「中の人はどう?」

 いきなりオカルティックに話題が移る。

「普通に話してますよ」

 自我と他我の会話ですか…。

「なんならさ、私がいなくても出てきていいよって伝えてね」

「いいんですか?確かに幸平に会いたいって言ってましたけど」

「千種ちゃんと幸平が二人きりの時なら構わないよ」

 なんか普通に許可してる。


 千種の中の人…ミコさんって数回しか姉と会話してるのに居合わせてないけど、初めより口調が現代風になっててだんだん違和感がないって言うか、でも年齢は結構いってる風だし…と考えていると、

「失礼じゃな」

 といきなり本来の千種よりオクターブも低い声でこちらに話しかけてきた。驚くからやめてくれ。


「切り替わるタイミングなんかは二人で相談しなさい」

 通話の終わった姉は最後にそう残した。


 ミコさんが現れるためには千種の自我の許可がいるらしい。今日以前にルールを決めたのだろう。

 なら俺は受け入れる他はない。

 時としてミコさんが主人格になることを認めるのは千種だから、千種の意思であることは間違いないからだ。


「ひとつお願いしたいんだけど…」

「ん」

 先を促す千種。

「…してる時に出てくるのはやめてほしい…」

 小声で頼む。

「じゃないとびっくりして…」


「出ちゃうものは仕方ないじゃない」

 千種はそう答えた。


 そういう性別も逆転するような複雑な答えって、ほんと困るんだわ…。


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