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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第10章:三馬鹿、三人娘、三姉妹

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二人の母

 さて不戦勝と高校野球では珍しい知らせが入る金曜日より逆上ること数日、橋本三姉妹の母薫さんの検査入院が終わり、退院となった。結果はやはり風土病であり、定期的な通院が必要らしい。ただ症状自体は抑えやすい類で、ここで治療法の進度とともに注意しながら生活をしていくことがおそらく最良の方法と医療チームは判断したとのこと。

 かたや大杉姉弟の母(もと)さんは未だに入院中。病気の進行度もやや深刻ではあったのだが…元来の体力が極端に落ちていた理由が大きいらしい。言葉を飾らずに言うなら物を食べない栄養失調…。

 娘が日本一になれたこと。意識が純化して周りが見えなくなったこと。それは元さんなりの精一杯の闘いの戦果だった。淡々と説明する美樹に橋本はより涙を流し、千種も俺も言葉を出すことは躊躇われた。現在は英語原書を読めるほどに回復して将来を考えることも時にあると言う。


 入院中に元さんと知り合いになった薫さんは急速に意気投合したらしい。共通項が多く互いを案じる境遇であるなら必然のことだと思う。

 そしてあっさりと(姉の葉にはどのように映るか分からないけれども)、姉が用意した仕事…遊佐晶と葉のまわりのあれこれの整理ほか…を元さんに譲ると決断した。なによりリモートでできることが元さんの自尊を助けることを、薫さんは見抜いていた。


「私はチマチマ事務をするより、どーんと稼いだ方が性に合ってるから」と笑い、まわりに心配をさせない姿はどこか、橋本結菜を思わせた。

 て言うか、娘が似たのか。


 小料理屋、女性専用アパートなんかを視野に不動産を物色し始めたらしい。アクティブな性向は、静かに一人闘う元さんと対をなし、この地方の風土とは異色の風を、わずかでも吹かせることになるのだろう。

 たぶん…小さな芽は少しずつ育つはずだ。


 ただまあ…元さんは別として、薫さんと千種の母千紗さんを混じり合わせるのは、化学爆発しそうで少々怖い。


 後年のことだけど、橋本家の長女さくらさんがアメリカ留学から帰国した際に何気なく持ち込んだ原書(本人曰く帰国の飛行機待ちの空港で暇つぶしに購入した、何がなんだか分からないから、すぐに寝ちゃった)は、やがて回り回って元さんの手に渡り、その後格調高い名訳として知られるベストセラーになる。


因果は巡ります。

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