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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第9章:美也子の帰還、それぞれの助走

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初戦

 秋空だ。

 野球日和。

 初めて最内ナイン(と呼ぶ6人)に会う。投手の東原、捕手の袋井、内野手の一条、菅、菊川、児島。なるほど内野手はみんな小柄で俊敏なタイプか。中学でショートを守ってたイメージの4人。

 沢村の作戦はあながち間違いではないようだ。

「スタメンはピッチャー東原…」


 監督は早速スタメンを発表する。

 投手、捕手、内野は最内。外野は左から田所、黄田、沢村。俺と川上はお留守番。

 一応俺も外野でノックを受ける。

 この感じ。久しぶりだが気持ちいい。


 素直なフライがレフトにあげられ楽々捕球した俺はショートに返す。力余って強めに返したらショートの児島がびっくりしてた。

 児島?


 川上が覚束ない足取りでフライをキャッチする。彼が出場するならおそらく投手で、だろう。

 左投げってだけで監督から投手やれって言われてたな。本人がかなりビビってたけど。

 見た感じショートアームの出所が見にくいフォーム。セットなら左バッターは合わせるのに工夫がいるはずだ。


 シートノックが終わり開始を待つ間、気になって児島くんに話しかける。

 なあ兄弟…

「そっちに姉さんたちが行ってる」

 双子の姉妹?

「ずいぶんモテるんだってな」

 冷やかすように児島弟。間違いないだろう。そんな不名誉な噂は…みささんだよなあ。

「これから…いろいろ頼むぜ」

 なにをだろうね…。


 試合は高校らしくロースコア…僅差で進む。相手はうちと同じくらいのレベルらしく、たまにエラーも絡んだりして終盤で4対3とリードされていた。

 強豪ならコールド負けもあるかと予想していたけどなかなか健闘してる。

 さっき山形も間に合った。バスケの練習後にここに駆けつけたらしい。


 9回裏、1点差。

「代打攻勢だ」

 監督が勇ましい。

 7番の代打、川上。

 あえなく三振。

 8番の代打、山形。

 当たればホームラン級のスイングで華麗に三振。

 9番の代打、早名。

 左に立つ。

「あれ幸平って左打ちか」

 スイッチだよ。知ってるの若葉くらいか。

 その若葉も声をあげる。

「打て〜!」

 あいつ野球になると熱くなるやつだった。


 初球。外角に来た球がわずかに沈んだ。

 やべっ。

 体が反応していた。ショート左へ強い打球。

 回り込んで捕球をしかけたショートの前で、ボールは不自然なほどに弾み、エラーで俺は出塁した。

 いきなりエンドランのサイン。落ち着く間もなく仕掛けるのか。あの監督すごいわ。

 左打ちの一番黄田に合わせてショートが動くはず。三遊間へ。

 そう黄田に目で促すとわずかに頷く。

 牽制する素振りも見せず、投手はセットから打者へ。

 明らかに動揺している。

 モーションを盗んでスタート。ショートが入る。空いた三遊間に綺麗に流し打ち。

 長打警戒で深めの位置にレフト。あまり肩は強くないことを試合中に確かめていた。

 勢いを殺さず三塁へ。

 捕球したレフトは三塁へ…悪送球。コーチャーの回す腕を見て一気に本塁へ。

 同点。

 そして黄田は…三塁にいた。

 あー確かにあれは異次元だわ。早い。


 そして二番沢村の初球。呆気なく幕は閉じた。

 捕手のパスボール。あるいはワイルドピッチか。

 後にボールが転がる間に、黄田は逆転サヨナラのホームを踏んだ。


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