表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第9章:美也子の帰還、それぞれの助走

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/212

全力でお祈りするよ

「そんでさくらさんどこに住むんだ?」

「それね。結菜のアパートはもう空きがないんだって」

 橋本の隣の部屋に母薫さんと由麻さんが住むだろうから、さくらさんの定住先が気になる。

「ひとまず薫さんが病院だから、さくらさんは由麻ちゃんと同じ部屋にいるみたい」


 まあそれが自然だし、一番いいよな…と俺は千種と納得する。

 もう秋の県予選の日は近い。偶然か野球愛好会連合チーム(長い)の試合日と、先生が選んだ水泳の県オープン…は今週の土曜日だ。


 先生は大会を後援する地元のテレビ局のローカルインタビューに応じ、個人種目には個々人の調子もあるので確実なことは言えないけど…と前置きの上で、リレー種目は日本記録を出せるでしょうと宣言した。


 ローカルだった数分の番組とは言えかつての巨星の発言は瞬く間に全国へと広がり、一気に注目の的となった。北玲、依田玲がトレンド入りし、つられて依田日向まで注目ワードとなっていた。

 速球と落ちる球の2種を駆使して8回に君臨するセットアッパー…。シーズン中に二軍落ちまでしてモデルチェンジした真意を誰もが推し量った。

 あまりに向こう見ずなほどの強気なスタイル。

 別人ではないかとネットで囁かれるほど。

 本来に戻っただけだと遊佐さんは漏らしたらしい。妻である姉情報だ。

 確かに依田さんは自己最速記録を徐々に更新していた。


 ところで野球と言えば俺のチーム。大前監督がやっとグラウンドに姿を現した。できたばかりのユニフォーム姿だ。

 やはりプロ野球選手だったのはほんとだろう。ユニフォーム姿が板についてカッコいい。

 俺たちを集めて開口一番

「沢村…ツープラトンやりたいか?」

 と主将に声をかけた。

 なんでも最内も異議はないそうで今秋は沢村が主将を務めることになった。あの熱心さは確かに他の者が納得するだろうね。


「最内のチームも見てとりあえずそのツープラトンとやらが良さそうだと俺も思う。よって採用」

 と監督の一言。まるで企業内の企画が通るときみたいだ。働いたことはないけど。

「おまえらの仕事は打て、だ」

 と試合前日までひたすらバッティング練習。

 つまり俺はフル稼働だ。

 …俺もバッティング練習したい。


 さて金曜日。千種と部屋にいると彼女が言う。

「ごめんね幸平。明日行けなくて」

 有能な水泳教室マネージャーは仕事が多い。

「むしろ俺が見に行きたいんだけど」

「そうだよね。みんなにあれだけ気持ちを使ったんだもの」

「誰かのためになんて思ってねえよ」

 千種は俺の右腕を撫でながら

「んー、あたしの旦那」

 とキスを頬に。

「なんだか気合が…」

「絶対勝ってね。そしたら日曜日は応援に行けるから」

「正直相手どころか仲間も半分初顔だからなあ」

「明日はスタメン?」

「聞いてないけど普通に補欠だろ?俺バッピしかしてないし。頭数合わせだよ」

「そんなことないと思うけどな」

「出番あったら活躍するように祈ってくれ」

「うん。全力でお祈りするよ」


 まさかなあ。

 その時の言葉を翌日の試合後に思い出すことになるとは思いもしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ