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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第9章:美也子の帰還、それぞれの助走

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玲の覚悟

 なんだか美也子さんのまわりはきな臭い。

 夫から

「六条はめんどくさいからよ、玲が守ってやってくれねーか」

 と頼まれて、それなりの気概で受けたものの。

 あたしの携帯やら果ては学校まで、国会議員の秘書だのどこかの議員だの…知らないような会社や個人が美也子さんを求めて五月蝿くて仕方ない。


 取るべき方法は…。私は夫と相談を重ねた。毎日のリリーフスタンバイで体がしんどいだろうに、夫は根気よく話に付き合ってくれた。

 結論は…もう世に出してしまおう…だった。

 その美貌は言うまでもなく、平泳ぎの実力はすでに日本のトップスリーに入る、と私は確信した。

 この県で行われるオープン大会にこの子を参加させる…そして私も。

 夫が私を公表したあと、私がどの大会に出るかは慎重に検討していた。教育に携わる現状も加味して。

 そこに美也子さんを加える。できるだけセンセーショナルに。


 美也子さんに関わる弁護士に依頼してなんらかの団体を作り、そこに窓口を一本化させる。この子はプライベートが大幅に制限させられるだろうけど、いくつもの目が結果的に守ることになるはずだ。あたしや夫が経験したことに基づく法則だ。


 私はこの案を千種さんに相談した。

「いいと思います」

 彼女は了承した。わずか高一とは言え、彼女の落ち着きは私に決断を促させた。

 近く夫が代表者の事務所がここに設置される。


 でも、ほんと。まさか橋本さくらさんまで関わることになろうとは。

 自由形短距離とバタフライの私と大杉さん。背泳ぎの橋本三姉妹(しかも三女は個メでも有望だ)、

 個メには無名だが自由形長距離もこなせ来年には頭角を現すはずの児島姉。

 そこに平泳ぎでまったく世間からノーマークの抜群の美貌の少女。


 事務所の名前を「北玲の帝国」にしようと夫に提案したが

「おまえそういうの中学から成長してないよな」

 とダメ出しされた。仕方なく再考中。


 最初さくらさんと結菜さんがあまりに喋らないのでほんと閉口した。

 だけど幸平くんが面白くない冗談をとばしたのをきっかけに話はずいぶんと進み、姉妹の和解は無事終わった。


 人が増えた。そして背負うものも。

 しばらく前の私には考えられない環境だ。


「深さを知ってなお川を渡る」

 どこかで聞いた、ある国の格言である。

(覚悟はできてる?玲)

 自らに問う。


 この先は彼女たちが私を踏み越えて行けば良い。

 喜んで私はこの身を差し出そう。

 私には…案じてくれる最愛の人がいるのだから。


 まずは直近の大会でリレーの日本記録樹立を事前に宣言しよう。

 このメンバーなら…容易いはずだ。

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