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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第9章:美也子の帰還、それぞれの助走

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監督を獲得する画策

 美也子と橋本(姉)の邂逅を楽しげに語る千種が珍しかった。

「俺も居合わせたかったな。気の強いもの同士の龍虎決戦」

「幸平はダメよ」

「なんで?」

「こじらせたいの?」

「…こじれちゃう?」

「こじれちゃう」

 うん、と千種は微笑み俺の鼻先をつついた。


「…にしても聞いてくれよ」

「沢村くん?」

 また俺の心読んだ?

 とにかく。

「最内と連合チーム組むって言ったろ?」

「うん。うちだけだと9人いないもんね」

「だからさ、なんでもツープラトン作戦なんだと」

「プロレス?」

 たまに妙な知識もってんだよな。

「お父さん」

 プロレス好きな行朝さん。知ってた。

「打撃はうち、守りは向こうだってさ」

「夏休みずーっとバッピばっかりだったもんね」

「偏ってると思ったけど、そんな分担決めてたなんてさ」

「ん?」

「沢村のくせに」

 見くびってはダメと千種に釘を差される。

 みんな考えてるの。だから。

 だからあなただけが背負いこむことはない、と。


 …ごめんな。ほんとは千種に…俺が言わなきゃいけない言葉だ。


「いつ合同練習するの?」

「ぶっつけ本番だとさ」

「じゃあ名前とかも?」

「当日まで秘密…だとさ」

「仲間…なのに?」

「沢村だろ?」

「確かに」


 山形入れてもこっちは6人、あっちも6人。

 二十四の瞳。


「5イニングくらいまでうちが内野であっちが外野。上位はうちで、下位は向こう。それで万が一リードしたら固い守りで逃げ切る作戦だ」

 ほんと万が一、だな。守りの連携とかどうするんだ?衝突とか洒落にならないぞ?

「譲り合いの精神だ」

 野球の神様に怒られろ。

「たった一度のチームだ。まず参加だけで意義がある」

 どうしようもないけど、俺は賛成だ。

「だろ?」

 ところで監督は?


「いるか?」

 そりゃな。

 とグラウンドで沢村と話す。

「いた方がいいよな、確かに」

 とあたりを見渡すと。


 近くのフェンス越しに見ていた40代くらいの男性に沢村は声をかけた。

「野球しませんか。暇ならぜひ」

 唖然と男性はしたけどすぐに返事をした。

「暇じゃねえけどな。監督いねーの?」

「監督どころか部員も6人です」

「なんだそれ」

「来年は結構楽しみですよ」

「あー。たまに来てるでかい3人組って中坊かい」

「うちの一番のファンならぜひ」

 ははーん…と手を口にやり男性は考えていたけど。

「あの左利き、黄田か?」

 バッティングしている黄田を指して尋ねた。

「知り合いですか?」

「親父と昔な…。足すげーだろ」

「たぶん県内でも3本に入るんじゃないですか」

 え…黄田ってそんなに?

 驚いて沢村を見ると、真面目な顔で男性を見ている。

「ふーん…。黄田にロゼ、キャリパーか。二世がたくさん、か」

「こーちゃんもですけど」

 いきなり若葉が口をはさんできた。いつからいたの?

「なんでい。このあんちゃんもか?」

「一太さんの」

「……羽田か?」

 父の知り合い?

「…ここで会うなんてな。おう、ナカジマ」

 不思議そうに僕は沢村ですけど、と訂正しつつ返事をすると、男性は

「面白そうだからやってもいいけどな。まず学校にゃおまえから話をしな。さすがに売り込んだとか後で噂されたらたまらねえ」


「誰だって聞かれたらこう答えな。元プロでスカウトやった大前だ」

「おまえ?」

「喧嘩売ってんのか?大前(たから)だ」

「失礼しました。では暇なんかじゃ…」

「あ、今はリハビリの医者だ。暇ってば暇かもな」

 そう言って大前さんは高らかに笑った。


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