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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第9章:美也子の帰還、それぞれの助走

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美也子の独白4

「最初に話しておきます。たぶんこの家は実家にはならないわよ」

 そうだろうと思う。日向兄は戸籍的には他人、ましてはプロスポーツ選手だ。まだ現役の真ん中にも達していないに違いない。

 出会った頃には無職だったはずの玲姉も、教員となり現役復帰、そして兄の妻。

「日向くんから伝言を預かってるわ」

 心して聞こう。

「玲を泣かせたら叩き出すぞ」

 ははあ…えーと…つまり?

「仲良くやりなさい、かしら」

 引っ越しして初めて玲姉の家に着いてから、交わした会話の後に見た光景は、意外に気の弱い義姉だった。


 この町に帰ってくる前に一度日帰りで高高を訪れた。学校の説明会に参加するためだ。

 その時に背の高い男の子とシルバーに髪を染めた女の子が目についた。

 背の高い子は先輩に似た目をしていて気になった。だがむやみにあたしが話しかけるのはいろんなトラブルの元になる、そう学んできたあたしはひとまず自重する。そしてシルバーの髪の子…どこかで見たような…やはり自重した方がいいだろうと判断した。せめて縁があるならと、男の子に一言だけ声をかける。


「背が高いね」

 どうでもいいあたしの顔が他人にはよほど整っているように見えるらしく、これだけでも記憶に残るはずだ。

 その男の子はその後は他の外国人風な(と言うかそのものだ)二人と仲良く喋っていた。

 せっかくだからとやはりシルバーの子とも縁を結ぶ。

「綺麗な銀髪だね」

 女の子はびっくりしたような表情をして、

「ありがとう。あなたもすごく美人」

 と()()なお世辞を返してくれた。

 今日が晴れ、くらい流れていく言葉だろう。


「あたし六条美也子」

「橋本由麻です」

 …うん?切れ長の目元、橋本?

 あ、水泳の。

「金髪じゃなかった?」

 微妙な顔をして女の子は続ける。

「姉…じゃないかな」

 ああ…。思い当たる人はひとつ上だった。

 じゃ?

「妹だよ」

 なるほど。もしやと思い聞いてみる。

「和田幸平さん、ここにいるよ」

「和田さんって個メの?」

「聞いてない?お姉さんに」

「…ううん」

 そう言って目を伏せる仕種が気になって…。

「連絡先交換しない?」

 構わないと承諾を得て、あたしは珍しく自分から知り合いを増やしたのだった。


 ある日を境に急に由麻ちゃんから連絡をもらうことが増えた。なんでもお母さんの病気治療のために高良に来月から家族ごと引っ越すことになったらしい。

 奇遇と言う言葉しかあたしは思いつかないけど、あたしも同じ頃高良に向かう。義姉のところ。理由はさっき思い返した通り、保護者が義姉になるからだ。


 引っ越してから地元とは言えここら辺は土地勘がないからと、何日かは探検することにした。大きな男の子は新しい中学校にいた。まだ声はかけていない。

 由麻ちゃんがもうすぐこっちにやってくるから、まずはそれからだ。

 そうして町を散策していると…

「あれ、美也子ちゃん?」

 と声をかけてきたのは、唯一あたしの尊敬する早名千種さんだった。横に金髪のヤンキーがいた。


「因縁つけられてるならあたしが…」

「待って美也子ちゃん。あたしの親友」

 孤高みたいに思ってたお姉さんに親友がいるなんて。こういう時にも発揮されるあたしの独占欲。

「えー…。だって金髪になんかして…」

 ……あ。

「由麻ちゃんのお姉さん?」

 渋い顔で由麻ちゃんのお姉さんは答えた。

「そうだよ。あなた幸平くんに中学のとき、横にいた子だよね?」

 そうですね…とお互いなぜか気まずい気持ちになりながら顔を見つめ合った。


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