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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第8章:母はきませり

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自由時間

「他薦を頂きましたので、本意ではありませんが学級委員を務めさせていただきます」

 静かに千種は挨拶をする。

 ヒメさんの推薦に異論は出ず、自動的に学級委員は千種に決まった。そしてまた、芋づる式に俺もみんなの前に立たされたと言う案配だった。


 比較的中学の頃はスイミングが忙しいとかの理由で逃げられたんだけどなあ。基本俺が時間に融通の効く人間であることはバレている。むしろ正式に近い水泳部のマネである千種の方が忙しいんじゃないか?

 って言うかそもそも千種はなぜ水泳に関わったかと思い出せばプールの監視員でなかっただろうか?どんどん出世して終いには生徒会長にでもなるんじゃなかろうかと、出世魚の呼び名に現実逃避を始めると…。


「幸平、立って寝るの?」

 また人を居眠り姫に扱いやがって…。

 あ、……。


 みんなの視線が集まっていた。

 慌てて千種を見る。挨拶しなさいと促されていたので反射的に絞り出す。

「あまり…千種を困らせないでくれよな。とばっちりは俺が負うけど。なんとかお願いします」

 なんとも締まらない挨拶になってしまった。今さら格好つけても仕方ない。

 生温かい拍手で終わった。


 その後は各委員の選出だけど、一学期より一クラスの人数が減った関係でほとんどの人が何かしらの委員に就かねばならず、せいぜいが希望の委員になれるか程度だったので、スムーズに決まっていった。

 感想としては、みんな大人だな、だった。


 さて、2限目からは通常の時間割なんだが早くに用事が終わったため

「騒がなければそのまま待機で」

 と、暗に自由時間と依田先生はしてくれた。

「早名さんはこっちに」

 と千種を前へ呼び、打ち合わせを始めた。

 俺は呼ばれてないので愛好会の方に行こうかと席を立ちかけたところ、橋本に

「ちぐさちゃんいないとお友達に困るんでしょ」

 と冷やかされた。


「そんなわけないだろ…。」

 反論を試みたものの

「私もそんな気がする」

 と大杉まで言う。

 それならせめて次の時間まではここでおとなしくしていましょうか。

「優勝おめでとう」

 と二人に向かって言う。

「あら、ありがとう」

「ありがとうね、早名くん」

 橋本は心底嬉しそうに、大杉はやや照れながら返してくれた。


「練習どうだ?」

 もはや日本でもトップクラスの二人の練習は俺にはついていけないことだろう。

「とんでもないわよ」

 やっぱりか。

「美樹は?」

「ときどき先生のお尻を叩きたくなる」

 歴代1位と2位には感情の齟齬が発生しているらしい。

「みきは特にそうかも。玲ちゃんって…」

 すかさず大杉が橋本に注意する。

「依田先生」

 うかつな橋本と真面目な大杉の違いがこんなところにも現れている。

「あんなに厳しい人だって知らなかったよ。自分に妥協しないし」

「うん、一番きつい練習してるのは先生かな」

 まあだからこそ俺たちの世代のスターなのであって…それでも、また空に意図的に登っていくのは心のエネルギーがどれほど必要だろうか。

 改めて依田さんと再会できたのは水泳界にとって幸運なのだろう。


「ところで幸平くん、ちぐさちゃんとしたでしょ?」

 またぶっ込んできたな、橋本よ。

 さあ、はぐらかせばいいのか、きちんと答えねばならないのか、どうしたものか。


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