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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第7章:咎を問わざりき

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仕返し

 俺がヒメさんとキントキさんに投げている時、気がつかなかったけどどうやら千種と若葉が話をしていたらしい。


 俺の投げる様子を見ていた若葉の横に千種が立っていた。

「どうだった?幸平」

「もう本気で投げられたら怖くて目を瞑っちゃうかな」

「…ごめんなさい」

 えっ、と若葉は千種に向く。

 千種は幸平を見ずまっすぐに若葉を見ていた。

「あなたの思い出をないものみたいに言って」

 若葉は答えなかった。


「噂で聞いたよ、婚約したんだって?」

「…うん、ほんと」

「…親公認かあ」

 あははと笑って若葉は続ける。

「こーくんのお父さんにね、聞いたことあるんだ。あたしがこーくんのお嫁さんになるって」

「あたしはお会いできなかった」

「そしたら、お父さんねあたしにこう言ったんだ」

「…なんて?」

「あと10年したら幸平にきいてみなって」

「…そっか」

「ねえ千羽鶴知ってる?」

「えっ……うん」

「高校野球のトーナメントだとさ、負けた方が勝った方に千羽鶴を託すことがあるの」

「確かニュースで見たことある」

「だからさ」


 そこで区切ると若葉は大きな声で

「代打いくよー」


 愛好会を含めグラウンド内にいる者が一斉に若葉に注目する。

 さあと若葉は千種の背中を押す。

「ピンチヒッター、早名千種ちゃん」


 マジか?


 キントキさんは満足そうに打席からさがり、やがて千種が打席に入る。

 さすが行朝さんの娘だけあって構えが堂にいっている。だからちょっとだけ遠いアウトローへ。


 刹那。

 強いピッチャーライナーが飛んできた。

 一瞬ひやりとしたが、きちんとボールはグラブに収まった。

 たった一球で千種は打席を後にする。


 その後はなぜかハイになった橋本が打席に入ったが当然三球三振に打ち取ってやった。

 うん、なぜか俺が気持ちいい。


 千種と若葉は再び会話する。

「うらやましいよ。打席でも会話できちゃうんだ」

「あいつ真ん中に投げなかったよ」

「悔しいけどやっぱり違うんだね」

「え?」


「仕返し終了」

「…そうだったの?」

「もしもさ…こーくんが無理なこと言ったりしたりしたらさ、あたしに言って」

「…その時は」

「恥ずかしい話いっぱい知ってるからね」

 そう言って折井若葉は笑った。


 もうすぐ夏休みが終わる頃の話だ。

夏休み編はここまでです。

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