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投手のあり方

オールスター後のこと。試合の活躍、結婚を明かした数日後、依田日向は突如二軍落ちした。盟友遊佐晶は沈黙し、それがさらに疑念を呼んだ。

曰く世間を騒がせたペナルティではないかと。

事実は北玲と再会した日に明かされていた。


「俺一人食いっぱぐれない蓄えはした。再会した日にわりいけど、玲ともし将来を話せる日が来たら、やりたいことをしたかった」

速球のこだわり、と依田は北に告げる。

俺はここにいると玲に示し続けるために、依田は勝ち続けたのだった。若くして軟投派と呼ばれることも苦にならなかった。また会う時までは、と刻んで。

しかしどうしても同一リーグに知り合いが増え、インコースに投げにくくなるのは道理。年ごとに悪くなる防御率を憂えた監督が、違うリーグならといわゆる世紀の一対一のトレードを決めたのだった。幾年も登板過多を強いていた事実もあった。


チームが代わり今年も最多勝を争ってるにも関わらず、シーズン途中で依田は先発から中継ぎに配置転換を希望した。遊佐と依田のチームの弱い部分でもあり、新しいチームの監督が自身かつてはエースだったこともあり、ひとまず今シーズンは希望通りで様子をみることでまとまり、コンディション再調整が真相だった。監督には精密なコントロールと緻密な読みが手形にもなっていたが。


一月近く再調整した依田さんが一軍にと報じられた日に、俺は若折井葉から驚きの指名をされる。

夏休みに練習したお礼を沢村に尋ねられ、ヒメさん、キントキさんと相談の結果示されたのが、

「俺の球を打ちたい」

だった。


硬球だし、いくらバッピでも危なっかしいと反論を試みたものの、 

「こーくん、一度もあたしに当てたことなかったでしょ」

と昔を持ち出された。確かに若葉は運動神経も良かったし、父との遊びにも付き合ってよく俺の球を打ってたっけ。


「なになに?なにするの?」

あ、橋本。

タイミングの悪いことに練習を終えた水泳教室の面々がグラウンドを通りかかる。インターハイ優勝の2名を含め、美形揃いと評されるメンバーがいるとテンションを上げる野球愛好会のやつら。

「早名くんってハーレム築いてるって噂だよね」

川上さあ。悪評だろ、それ。本人に言うか?

悪いやつでないから憎めないけど。


ガードをつけ、ヘルメットを被った若葉が打席に入る。仕方なくスピードを3割落として真ん中へ。

キン…と乾いた音を残して球は外野へ。

オーバーとはいかなかったものの見事なスイング、飛距離だった。


結局10球すべてセンターフライ。

「手加減したでしょ」

当たり前だ。全力で投げられるわけない。

その後ヒメさんには見事なコースヒット、キントキさんには若葉より遠くへ打たれた。

我ながら見事なバッピ。

いいのか?

…まあいいんだろ。



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