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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第7章:咎を問わざりき

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墓前にて

「戦いは死を伴う。あの方も戦った」

「亡くなったの?」

「この娘に間借りさせてもらってから見つめ直して理解した…と言うのが正確かもしれぬ。見た目も品格もあの方には及びもしないが」

 長台詞でよくもまあ…千種からの言葉じゃなきゃ泣くぞ。


 姉は晴さんに向かい事態の収束をはかり始めた。

「見たまんまの今だけど…秘密にしてもらえないかな」

「誰に言っても信じないと思いますよ、義姉さん」

「…だよね…」

「ときどきでいいんで……えーとミコさん?いろいろ教えてもらえないですか?私、広く文系の()勉強したいんですよね」

「なんじゃそれは」

「日本人とか日本語とか」

「先に北から来て後から南じゃ。言葉ならクレオール?とかそんなものかや」

「ああ、骨は北、肉は南ですか」

 訳の分からない会話をミコさんと晴さんは短くした後、

「こんな感じでミコさんに話を聞けたらそれでもう」


 姉は了解したようだ。

「これで千種ちゃんがおかしな噂に巻き込まれることはないし…」

「とりあえずの落とし所も聞いたかな」

 姉ちゃん、俺の意見は?


「古代のヒロインが恋人ってどういう気分?」

 晴さんが答えに困る質問をしてきた。

「千種は…千種だしなあ」

「あなたの意見はあなたが出した…よね?」

 そう言うことになるのか。未来はヒロイン様もご存知ではないだろうね。


 暑い中での時を越えた女子会は終わりを迎えようとしてる。

「伝えておくが…この娘が許さなければ我は現れぬ。この娘との約束をした」

()()()に会いたいんでしょ?」

「心も、肉体を通した温もりもこの娘が感じなければ我はなす術を持たぬ」

「因果な恋ね」

「一途を笑うか」

 姉は真摯に答える。

「…いいえ。共感してしまうから。…今も両親のことを許せはしないけど」

「…そうか」


 御地でのあの時のように、ミコさんはふっと言葉を残さず消えたように感じた。


 千種はしばらく目を閉じたまま動かなかったが、やがて長く息を吐くと

「話長かったね。寂しかったのかな」

 と姉に話しかけた。

「体や気持ちに気持ち悪いところはない?」

 姉は優しく千種に問いかける。

「うーん。大丈夫かなあ…。あんまり負担にならないようにコントロールしてたみたい」

 そう言って千種はゆっくりと立ち上がった。その表情はいつもと変わらず深い湖のように神秘的にさえ感じられた。


 気遣う二人と俺は千種の足取りに合わせて、まずは遊佐家に参り、その後羽田家へ参った。

 その墓前で千種はずいぶん長いこと動かなかった。俺たちもまた見守ることをせず、空を眺めたり考えごとをしたりだった。


 俺は両親に向けて、ただ千種と一緒にいたい、と報告しただけになった。それで理解してくれたなら、十分だった。他の言葉はどうやったって間違えてしまいそうだからだ。

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