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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第7章:咎を問わざりき

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ハードル

 タイミングのいい登場だった。

 …って言うか、着いたら連絡してよ。

「いつ着いたの?」

 千種に声をかける。冤罪はごめんだ。

「幸平の臭いがしたから」

 犬並みの嗅覚か俺が臭いのかどっちなんですかね。

「今日は汗かいたからなあ」

「シャワーかお風呂に入るまでお預け」

 生っぽい話はダメだっつーの。


 はじめまして、と千種は春さんに近づき頭を下げた。あっけにとられていた春さんも慌てて挨拶をする。


「兄貴から聞いたよ。高校生で結納した二人のうちの保護者になったって」

「葉さんの義妹の早名千種です。旦那がセクハラしませんでしたか?」

 なんでそんな確認事項が必要あるのかね、千種さん。

「そんなに猿なの?」

「見た目より」

 うわあ………。


 ちらっと春さんは俺を見て呆れたように

「聞いてた印象と違うのね」

 と宣った。

 帰っていい?


 ・・・

 …さて、墓参りは明日千種と姉と共に行く予定だった。行朝さんから二人で先乗りすべしと指令が出て、どうしても千種が橋本たちの練習に付き合うため時間差での合流となったわけだった。

 早名2名のため各々千種と幸平と呼んでくれとお願いして、春さんからはハードルに付き合ってほしいとリクエストがあった。

「また計時するの退屈だから」

 と珍しく千種が相手を買って出た。

 驚いて千種に聞いてみる。

「陸上好きなの」

 初耳だよ?なんでも走るのだけは負けた記憶がないと言う。

「千種ちゃん経験あるの?」

 春さんも不思議がる。

「100mなら14秒ぐらいだったから最初くらいは並んでられるかも」

 と淡々と千種は言う。

「だってハードルはまた別物だよ」

「中学の体育でやったからとび方は知ってるよ」

 そういう話じゃないと俺は思う。うん。


 春さんが心配するけど千種はすっかりその気になったようで、春さんの教え通りにウォーミングアップをする。

 山国とは言え、盛夏の中汗が千種の額に滲む。

「これくらいでいいかな」

 それじゃと、スタート位置に並ぶ二人。

 よーいどんでいいかなと問うと、子供の遊びみたいでかわいいと笑う春さん。千種もつられて笑っている。屈託たく笑う千種も割りと珍しい。


 位置について…とコールすると、スッと千種の視線が定まる。

(アスリートみたいだな)

 と思う。それなりにレースを見てきた経験から(水泳だし最弱だけど)、集中してるのが分かる。

 春さん?申し訳ないけど千種しか見てなかったから覚えてない。


「どん!」

 千種のスタートは明らかに春さんより早かった。1台を越え、2台、3台目で春さんは追いつき、追い越した。

 ゴール差はわずかだった。春さんが先着。

 息切れは千種が激しく、膝に手をついている。

 かたや春さんは肩を弾ませながらも、驚いたように千種に話しかける。

「ほんとに初心者?」

 俺が保証しますよと言ってみたが、軽くスルーされた。なぜ。


「これでも中学のランキング2位になったこともあるんだけどな」

「凄いじゃないですか」

「ハードルじゃないし、県の地区大会だったからね」

 無邪気に笑う春さん。

「面白くないから県大会は出なかったんだ。中三の一回だけだよ、試合に出たの」

「興味なかったんですか?」

「兄貴の声援が忙しかったし」


 ようやく話せるようになったのか、千種が加わった。

「せっかくだからいろいろしませんか?」

「いろいろ?」

「七種競技とか」

「あなたと?」

「暇そうなんで幸平も入れましょうか」

「女子大生対チーム早名、ね。面白いかも。時間的にあと二つくらいできるかな」

 と、春さんは次は何にしようか考えている。


 同時に俺は千種に尋ねてみる。

「なんで急にやる気になった?」

 千種は意外な答えをした。


「あなたのお父さんの残したものに触れてみたかったの」

 たまに。たまに千種は予想を越える。

 ちなみに二人とも14秒台だった。早い…のか?

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