墓参り
わが高高…どうやらクラブの掛け持ちが推奨されてたりする。主に運動系と文化系とに。
とは言え運動系2か所に所属する者も少数ながらいる。その場合はやや複雑なルールがあるらしいのだが、今回は割愛。
野球同好会は正部員の5人に時たま参加する山形に、毎日参加するバッティングピッチャーの俺。それとマネの折井若葉に、なぜかヒメさんとキントキさんが外野で守っている。部員たちは自分の打撃以外は内野手を好き勝手に守ると言うフリーダムさだった。青田刈りの3人が来た場合は全員が外野に行くんだけども。とにかく打撃特化型の練習だった。
山国の県からインターハイ優勝者が2名出た…のはちょっとしたトピックになった。高校1年生で選手権保持者の大杉美樹と3位の橋本結菜がそれぞれ3冠である。それが何かの縁なのか、水泳の各コース希望者が殺到していると言う。一生できるスポーツとして末永く…と俺は思う。そして現在有頂天の北さんも人目を気にせずコーチを始めたものだから、いずれ世間に見つかることは確実だろう。千種は結納の日以来、寝場所を俺の部屋と定めたらしく夜は一緒だけれども、昼は水泳の橋本コースにずっと出ていた。結局北さんだって練習が必要で、必然的に千種が全般的に関わることになったのだった。マロさんまで半分マネ兼務だしね。暇になったヒメさんがたまたま見に来た野球同好会に遊び半分で球拾いに参加して、ついでにキントキさんを付き合わせてるのだった。
そして日本中が盆を迎えるころ、俺は一人父母の眠る近県の墓地にいた。それなりにいろいろあった半年を報告するためだ。父の出身の寂しい山あいの地は昔はそこそこ人口もあったらしいけど、今や昼もほとんど人影もない。姉は明日来るらしく、先に俺が墓掃除するためにこの地に来たのだった。父の実家に人はなく、宿は最寄りの駅近くにした。
まだまだ真夏の盛りの蝉時雨、俺は雑草を払い墓を洗い流し手向けた線香を水に落として駅へと向かう。
そして通りかかった人影のない小振りの校舎とグラウンド。
(廃校だろうか?)
ふと気になりグラウンドに立ち入ると綺麗に並べられたハードル。今日使用されるためだと分かるくらいに整然としている。
見ると『贈 一太』の記載。
どうやら父の寄贈した物らしい。この辺りは陸上が盛んだったと姉に聞いたことがあるのを思い出した。
その文字を眺め思いに耽っていると、不意に背後から声をかけられる。
「暇なら遊んで行かない?」
ジャージ姿の女性だった。