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高良フェノミナン/phenomenon〜キイロバナのまわりに咲く  作者: ライターとキャメル
第7章:咎を問わざりき

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非常事態の朝は続く:幕間Ⅲ

 夏の盛り

 千草の花の

 咲き揃う


「幸平くん、詩人だねえ」

 とヒメさんは、緩やかに色紙に筆を滑らす。

 ヘチマとスイカ、ついでに暖色系の数輪の花びらの絵の上の余白に三行の文字が並ぶ。

「最初に破調で意表をついて、流れるようにまとめる。六七五。たくさんの花が千草で、千種もたくさんの種類か。軽くかけて調子を整えてから、咲き揃うってのは解釈を促す部分を作って終わる。うん、30点かなっ」

 絵手紙的な?素朴な味わいの印象。

 ヒメさんはぽんと「山梅」の落款を押した。


 かぐわしく

 手折りてむねの

 ちぐさかな

「ウチならこうかな。あはは。幸平くんと変わりないか。これはウチから千種に」

 そうやってもう一枚色紙を渡した。こちらは流麗な筆致。無季なんだ。


 不意に浮かんだ一句を千種に献上したところ、やにわに千種はヒメさんを招集。

「ヒメは俳画の異端児なの」

 どういう業界ですか、それ?

 墨でなくてカラフルだもんなあ。

 山門妃梅さんは千種邸にいつもの自然体で、わずか滞在20分で帰って行きました。最後に「千種をよろしく」と綺麗な所作を残して。


「なあ、千種。ヒメさんてすごいのか?」

「取り巻き次第じゃないの?芸術の側面にはそんなこともあるみたい」

 芸術方面にはまるで興味がないのかさらっと流して、それでも千種はその後2枚の色紙を、姉のさなようの色紙とともに部屋に飾っている。


 さて、まだ野球部の練習まで何をしようかと、二階の部屋を出て食卓に行くとなぜか北さんが優雅に食事中。

「朝帰りで千紗さんにあったら、ご飯どうって」

 で、そのままご朝食ですか。無職なのに。

 北さんは後から降りてきた千種の歩き方を見て

「早名さん…ちょっと」

 と手招きした。

「え?あたし?」

 珍しい二人で絡むのな。ところで依田さんとはどうなったのだろう。


 ちらっと言うには週刊誌が煩いから途中で別れたんだとか。

 何を話してるんだろうね。そこの二人。


 なんか避妊だとか痛いだとか、不穏な単語が聞こえて来たのでエスケープ。

 俺たち世代のスターの生っぽい話はごめんだ。

 それにしても北さん来年には高高で教師を目指してるのに、教え子になるだろう千種と…。

 うーん…意外と男連中はそんな話しないもんな。


 でもま、二人が新しいステージに上がりそうだと予感させる一コマだった。



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