夏の日の後日談
あの日の後日談が少しある。
まず結納。茶番とは聞いたけど、明らかに千種にとって必要なことで、提案は千紗さんからだと姉に教わった。早名の舞台装置から千種を降ろすために組まれたとのこと。御地でのできごとはまだ数ヶ月前。巫女候補が人々の記憶から消えるためには少しずつ前進することが大切だと姉は言った。だからまだ茶番は続くのかも知れない。
美也子は、9月にこちらになることになりそうだと言う。実家に帰るのだとか。俺も知らなかったけど、そもそも美也子はなぜ実家を離れて暮らしていたんだろう。そして実兄の日向さんが養子に出された理由も不明だ。あまりにプライベートなことだから、誰かに質問することはないけど。
その依田日向さん。DHで出場した試合で二打席連続ホーマー。ヒーローインタビューで結婚を明かした。相手が北玲さんであること、北さんが近く現役復帰することを宣言した。
…まではまあ、他人事だったんだけど。
よりにもよって盟友の遊佐晶さんが結婚済みであることを示唆したものだから、ちょっとした相手探しがマスコミで始まった。本来は今年のシーズンオフに発表する予定が早まったと姉は珍しくこぼした。どこまでオープンにするのやら。さすがに未成年の俺まではないと信じたい。
それで北さん。まさかここに依田日向の相手がいるとは世間も予想できまいと、端から見て無視したくなるほど浮かれてる。でもまあ、ちょっとだけ聞いた、あの人の経た経験を思えば「おしあわせに」と言うしかないだろう。
ついでに泉田先生経由で二学期から臨時講師として採用とのこと。本当に人材不足だったらしい。英語と体育なら実績がありすぎる。ただ大学の専攻は違う教科だと聞いた覚えがある。どうなってんだか、うちの学校。
橋本あたりはインターハイで優勝したにもかかわらず、むしろ増えた練習量にプリプリ怒っていた。内容を問うとアメリカでの最新式練習であったため、感謝はしていたけど。美樹も優勝したがこちらは平常運転。大物なのか?大杉だけに。
そして俺。一夏全部打撃投手だった。お給金なしで。
次はそのお話。