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【実話】なんで私はこうなる?  作者: 月白ゆう


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19/19

鍋に鶏はいない。でも、たぶん。

 親戚が集まると、叔母さよく水炊きを作ってくれる。

「今日は水炊きね」

 そう言われて、私はいつも鍋を囲む。

 豆腐。

 出汁昆布。

 白ネギ。

 えのき。

 具材は、だいたいいつもこの四つ。

 あるとき、ふと思った。

 ……鶏、入ってない?

 水炊きといえば、鶏肉が入っているものだと思っていた。

 でも、親戚の家の水炊きには鶏がいない。

 一度も見た記憶がない。

 とはいえ、今さら「鶏入れないの?」とも聞きにくい。

 親戚みんな普通に食べているし、私も普通に食べている。

 美味しい。

 だから、まあいいかと思っていた。

 ところが、ある日。

 水炊きを準備している叔母が、台所で何かを食べているのを見た。

 ちらっと見えた肉。

 ……鶏胸肉っぽい。

 え?

 鶏、いるじゃん。

 鍋にはいないのに。

 それから、妙に気になってしまった。

 もしかして叔母さん、

 鶏肉を自分だけ食べているのでは?

 親戚には豆腐とネギとえのき。

 叔母さんは鶏。

 まさか、そんな。

 私は一度、家に帰ってから調べてみた。

 すると、関西では鶏肉を入れない水炊きもあるらしい。

 なんだ。

 鶏が入っていなくても、水炊きは水炊きなのか。

 それなら、うちの親戚だけがおかしいわけではない。

 長年ひそかに抱えていた「鶏がいない問題」は、あっさり解決した。

 ……と思った。

 でも、やっぱり気になる。

 叔母さんが食べていた、あの鶏肉。

 そこで、ふと思った。

 もしかして、こういうことなのではないだろうか。

 叔母さんは、ちゃんと鶏胸肉を入れている。

 鶏から出汁を取るために。

 でも、鶏胸肉って煮込みすぎるとパサパサになる。

 そんなパサパサの肉を親戚に出すのは、ちょっと申し訳ない。

 だから、

「これは私が食べればいいか」

 と、ひとりでこっそり食べている。

 ……だったりして。

 もしそうなら、私は今まで叔母さんを疑っていたことになる。

「鶏を独り占めしているのでは?」

 なんて。

 とんでもない。

 むしろ叔母さんは、私たちにパサパサの鶏胸肉を食べさせないために、ひとりで引き受けてくれていたのかもしれない。

 もちろん、本人に聞いたわけではない。

 全部、私の想像である。

 本当はただ叔母さんが鶏肉を食べたかっただけかもしれない。

 でも、次に親戚の家で水炊きを食べるときは、見方が変わると思う。

 豆腐を取って、白ネギを取って、えのきを取って。

 そして、鍋の中には見えない鶏の存在を感じながら食べる。

 鍋に鶏はいない。

 でも、たぶん。

 出汁にはいる。

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