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不確かな正義

─魔力。

 火力、電力、原子力にとって代わるとされた未知のエネルギー。その全貌は発見されて、十五年と経つが未だ解明には至っていない。世界が大きく変わる、そんな予感を誰もが抱いていた。もちろん、この俺も。

──────────────────────

 もう秋だというのに湿気は晴れる気がしない。この頃異常気象のせいだ。

そんなことを考えながら、アルム・パッカーは事務室で力果てていた。パッカーは、今日の気候を感じて、溜まりに溜まった書類をサウナにいれている気分になる。明後日のことを考えながら、「魔力」について、旧時代の問題に焦点を当てることだけを考えている。最近は州知事の不倫問題や裏金問題にしかすっかり興味をなくしていたパッカーだったが、とあるニュースを見て、「自分も行動しなければなぁ。」、と思いつつあった。

 それはテロリストによる、魔力攻撃による株式会社ケミカライト襲撃事件。

政府と提携しているその小会社を死者、行方不明者数百人とのぼったそのテロは世間を震撼させた。実質の政府への挑戦でもあったし、それを起こした実行犯が一人だけというのだから、もちろんのこと、パッカーを驚かせた。永遠に続くと思われていた政府による魔力の独占を正面から、堂々と切り開いたのはいうまでもない。テロリストは時代を大きく動かしたのだ。


 人々が人口増加や地球温暖化による海面上昇など、たまりに貯まったストレスを吐き出させるかのようにやってのけたので、当然のことながら世間からも支持される。

 テロリストは『世界は常に腐っている、魔力の独占はこれから生きる時代の人々にとって大変苦しく、重い枷となる。それを私は許せない。よって今回の攻撃は正当化されるべきである。犠牲になった者は未来のことを考えず、自己利益のため保身に走った悪である。』、と。声明を出したが、インターネットが発展した今、共和国が即座に動くのは当然なことだ。「魔力」が発見され、はや十年以上は経つ、それに従って今日、共和国魔法隊がテロリスト駆除に動くらしい。

 無論、パッカーは退屈な世の中に一つの風を送り込んでくれないかと密かに期待はしていた。そんな時、明らかな轟音はパッカーを襲った。事務室の壁は溶け落ち、黒く焦げていた。かろうじて、外へと這い出たがそこは地獄そのものだった。

 地上には共和国の例の部隊が魔法?の様なものを空に向かって発射している。それを空は鏡があるように反射して、地上に打ち返した。薄い黄色の線が地面に当たって、人を二人巻き込んで消え去った。断末魔がかすかに聞こえ、ボトっとパッカーの隣に何かが落ちた。


「何と戦っているんだ…?」

思い当たる節はある。だが、それとは別に今はそんな気がしない。あるのは恐怖と好奇心だけだ。

数回の光が見えて、数秒が経った。

 地上には一人もいなく、上空にはただ一人が立っていた。

リチャード・コルクマン、テロリストである。もちろん、本当のはあるのだろうが、そんなことにパッカーは気づくはずも無い。

ゆっくりとエレベーターで降りるように、パッカーの目の前に着地した。


「アンタは、アンタがテロリストなのか…」

まだ青年といえる姿をしていた。思ったよりボロい服装に身を包み前髪が目にかかっている。

こちらを鋭い目で見つめ、鋭利な心境を感じさせる。

「どうしたい?一種の質問だ。残念なことに時間はない、俺はテロリストであるし、顔も分かっていない。この状況だ、悔いのない方を選べ。」

 パッカーは迷わなかった。どんなに辛い道があってもついていくと決めた。それはその場での興奮気味であったことも起因するが、結局のところパッカー自身が決めたことであって、運命とは違うものでもあった。学生時代の時の様に生き生きしたその雰囲気はパッカーを大きく奮い立たせた。



数話で終わるかもしれませんがよろしくお願いします。



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