天才の交渉 その1
俺が浅木と出会ってから一週間が経った。
・・・何でだろう。
・・・・・・何で俺はこの人とファミレスで、しかも一対一で対面してるんだろう。
浅木の外見が良いからだろう、周りの人からチラチラと見られ、居心地の悪さを感じていると浅木は口を開いた。
「理仁先輩、もう一度言います。私は貴方が欲しいです。私と契約を「断る!」・・・ちなみに理由を聞いてもいいですか?」
「何も聞いてないからだ。」
「???」
「まず、俺が欲しいってどう言う事だ?俺じゃなきゃいけないのか?俺に何かして欲しいのか?何の説明もなくただ『欲しい』言われてOK出す奴いねぇだろ。」
「・・・そう言えば説明してませんでしたね。」
「(出たよ。人生勝ち組あるある、「ちょっと抜けてる」。天才達は多少説明とか省いても伝わると思ってるし、見た目がいい奴らはそういう所も愛嬌とか個性みたいな感じでプラスに見られるけど、俺みたいな奴がやったらただのポンコツ扱いだぞ?嫌だわ〜。)」
俺は注文したアイスコーヒーを飲みながらながら目の前のフルーツ盛り盛りのパフェを食べる女性を見て、少し調べた事を思い出した。
浅木玲奈。大手企業『浅木コーポレーション』の社長の一人娘。いわゆる社長令嬢って奴だ。化粧品から食料品まであらゆる事業に手を出しており、他大手と比べると経済力はそこまで高くないが、あと50年は潰れる事はないと言われるほど安定した企業だ。
だからこそわからない。彼女が俺を求める訳が。
「私には夢があります。」
「うん、そうか。」
「自分の会社を創り、自分の力で生きていくという夢です。」
「うん、すごい夢だな。」
「ですが、やはり私1人では難しく、人の手を借りなくてはいけません。それに、お父さんに私と同等かそれ以上のポテンシャルを持つ人を手に入れることが条件だと言われました。」
「うん、そうなんだな。」
「そこで、理仁先輩に白羽の矢を立てたわけです。」
「うん、・・・うん?何でそうなった?」
「???」
俺は疑問に思った事をそのまま口に出した。それを聞いた玲奈は「何言ってんだこいつ」みたいな顔をして、コテンと首を傾げた。何しても絵になるなこのやろぉ。
「あんたの夢に関しては何も言わねぇ。人それぞれだからな。だが、何で俺なんだ?」
「人柄が良く、交友関係もそこそこ広い、機転が効き、純粋に頭が良い、からですかね。」
「うちの学園の特進科ならそんな奴いくらでもいるだろ。それにイケメンと美女ばっかだ。俺じゃなくていいだろ。」
「理仁先輩も十分イケメンだと思いますが。」
「ハッ!人の視線集めるような美女にそんな事言われてもねぇ。お世辞は嫌いだよ。」
そう自虐風に言いながら彼女を見て少しギョッとした。手には半分ほど減ったパフェ。それだけならまだ良い。だが、その隣には空になったパフェグラスが2つ。
・・・いつのまに頼んだんだ?
俺は財布からお札を一枚取り出し、席を立った。
「悪いがあんたの話には乗らねぇ。俺じゃなきゃいけない理由がわからない。それとバイトなんで先行くわ。」
「私から誘ったのに流石にお金まで出していただく訳には・・・」
「気にすんな、じゃあな。」
俺はそのままファミレスを出た。あわよくば、このまま諦めてくれたら良いんだが、どうかな。
「・・・私は諦めませんよ、先輩。」
浅木がそう呟いたが、俺の耳には届かなかった。




