第549話 それぞれの「帰還」
突然すみません、今章最終話です。
そして、いつもより短めの話になります。
中立都市フロントラル。
それは、ウィルフレッドを国王とする「ルーセンティア王国」と、ヴィンセントを皇帝とする「ストロザイア帝国」の、丁度中間に位置する都市の名で、そこでは数多くのハンター達が誕生し、仕事を請け負う「ハンターギルド総本部」がある。それ故に、都市には一般市民の他に多くのハンターが暮らしていて、彼らによってフロントラルの平和は保たれているのだ。
ただこの日、その中立都市フロントラルは今、大変な事態に陥っていた。
そのきっかけは昼間……そう、春風達がヘリアテスやアメリア達と会い、その後フランクら「断罪官」と戦っていた時のことだ。
その頃、都市の内部で凛咲とミネルヴァが、春風に頼まれて、都市内部に潜入していた断罪官の隊員達を次々と相手にしていた。そして、2人は隊員達を全員倒すと、その装備をひっぺがして拘束し、都市の外に放り出した後、彼らの見張りをルーセンティア王国の騎士達と、ヴァレリー率いるレギオン「紅蓮の猛牛」のハンター達に任せて、イヴリーヌとキャロラインと共に春風のもとへと向かい、その後、ルーセンティア王国の騎士ヘクターと、彼の部下である騎士数人が、凛咲達の後を追った。
それから暫くの間、残された者達が拘束した隊員達を見張っていた、まさにその時……彼らは襲撃を受けた。
現れたのは、背中に白い翼を生やした、白銀の鎧を纏った数人の騎士達で、彼らは「紅蓮の猛牛」のハンター達や残った騎士達を次々と倒すと、拘束した隊員達を連れてその場から去った。
そして、時は現在。
謎の騎士達にやられたハンター達は、都市の住人達による迅速な治療によって、皆一命を取り留めていた。
しかし、いきなり現れた者達になすすべもなくやられただけでなく捉えていた隊員達を奪われたという事実は、ハンター達やルーセンティア王国の騎士達の「自信」や「プライド」などを粉々に打ち砕き、その為に、皆、助かったとはいえズーンと表情を暗くし、そんな彼らを見て、
「まさか、ここまで妙なことになってるとはなぁ……」
と、「紅蓮の猛牛」のリーダーであるヴァレリーはそう呟くと、最後に「はぁあ……」と深い溜め息を吐いた。
さて、そんな暗い雰囲気漂う状況の中、フロントラルの都市出入り口の前では、「紅蓮の猛牛」所属ハンターのディックとフィオナの兄妹が、まるで誰かが来るのを待ってるかのようにその場に座り込んでいた。と言っても、その誰かは決まってるが。
まぁとにかく、2人が出入り口の近くの地面に座り込んでジッとしていると、
「春風さん達、大丈夫かなぁ」
と、フィオナが不安そうな表情でそう呟いたので、
「大丈夫だよフィオナ。アニキ達なら、きっと元気な姿で戻ってくるさ」
そんな妹の呟きに、兄であるディックは笑顔でそう返事した。
ただよく見ると、
(あ……)
その時のディックの握り拳が小さく震えていたので、
(お兄ちゃんも不安なんだなぁ)
と、それを見たフィオナはそう感じた。
その後、再びディックとフィオナが遠くを見つめていると、
「「……あ」」
と、とある方向を見ながら、2人は同時声をあげた。
そして、それから間もなくすると、ディックとフィオナの視線の先に、見覚えのある複数の人影が現れたので、
「兄貴!」
「それに皆さんも!」
と、その姿を確認した2人は、驚きの声をあげながらバッと立ち上がった。
やがて、
『おーい!』
と、現れた複数の人影……春風達が腕を大きく振りながら叫んだので、
「行こう!」
「うん!」
ディックとフィオナはすぐに彼らのもとへと駆け出すと、
「「おかえりなさい!」」
と、笑顔でそう言い、そんな2人に対して、
『ただいま!』
と、春風達も笑顔でそう挨拶を返した。
さて、時は少し前まで遡る。
そこは、「エルード」という世界の中なのは間違いないが、明らかに異質な雰囲気を漂わせている何処か。
そこには、1人の男性……断罪官大隊長のギデオン・シンクレアが、静かな表情を浮かべて仁王立ちしていた。
「……」
まるで、何かが来るのを待っているかのように、ギデオンはその場でジッとしていると、
「……来たか」
と、何かの気配を感じて、ボソリと呟いた。
そして、その後すぐに、男性の目の前が眩く輝き出し、それから少しずつ弱くなっていったので、ギデオンは目を細くしながら、ジィッと視線の先を見つめた。
やがて光が完全に消えて、その中から現れたのは、背中に白い翼を生やした、白銀の鎧を纏った1人の若い騎士と、その騎士の両脇に抱えられた2人の男性だった。
若い騎士は抱えていた2人の男性を地面に優しく置くと、
「父上。ルーク・シンクレア、ただいま戻りました」
と、騎士……ルークは目の前のギデオンに向かって報告した。
そして、ルークからの報告を受けて、
「ご苦労だったルーク。ゆっくり休んでくれ」
と、ギデオンがそう返事すると、
「わかりました。失礼します」
とルークはそう言ってその場をスッと離れた。
そして、残されたギデオンとルークに運ばれた2人の男性はというと、
「……ふむ」
と、ギデオンは気を失ってる男性2人を見て声をもらし、
「随分と、派手にやられたようだな」
最後は「やれやれ」と言わんばかりに「はぁ」と溜め息を吐きながら言った。
次回、登場人物の紹介で今章は完全に終了です。




