第377話 再会、春風と「王国騎士エヴァン」
「春風、奴と知り合いかい?」
「ええ。彼は最初に俺に斬りかかってきた、ルーセンティア王国の騎士です」
と、ミネルヴァの質問にそう答えた春風。
そんな春風の目の前に現れたのは、「勇者召喚」が行われ、春風がエルードに送り込まれたその日、最初に春風に斬りかかってきて返り討ちにされた、ルーセンティア王国の青年騎士だった。
春風の答えを聞いて、
「……ほう」
「へぇ……」
と、ミネルヴァだけでなく凛咲までもが低い声をもらしながら、目の前にいる青年騎士を睨み付けると、
「アンタ、何でここにいるのよ!?」
と、レナが春風を庇うように前に立ちながら、目の前の青年騎士に向かってキッと睨みながらそう尋ね、そんなレナに続くように、歩夢、美羽、暁、野守、夕下も春風の傍に寄ると、レナと同じように青年騎士を睨み付けた。
ミネルヴァ達に睨まれて、青年騎士は「う……」と一瞬たじろいだが、彼はそれでも逃げ出そうとせずにその場に留まってジッと春風に視線を向けてきたので、
(えっとぉ、彼なんて名前だったかなぁ?)
と、その視線を春風が彼の名前を思い出そうとしていると、
「エヴァン! どうしてあなたがここにいるの!?」
と、ヘクターの隣に立つルイーズが、青年騎士に向かって名前を呼びながらそう尋ねた。
その質問を聞いて、
(ああ、そうだ。確かそんな名前だったな……)
と、春風は今思い出したかのようにポンと相槌を打ちながら、心の中でそう呟くと、
「も、申し訳ありません、姉上」
と、ルイーズに「エヴァン」と呼ばれた青年騎士が、彼女に向かってそう謝罪したので、
『あ、姉上ぇ!?』
と、歩夢達はそう驚きの声をあげ、
(え、何? どういうこと?)
と、春風は目をパチクリとさせた。
その後、
「あのぉ、すみませんがヘクターさん。あの人とルイーズさんってどういう関係なのですか?」
と、春風がヘクターに向かってそう尋ねると、その質問が聞こえたのか、
「雪村! 今はそんな質問してる場合じゃねぇだろ!」
と、暁がそう怒鳴ってきたが、春風の質問を受けたヘクターは「え?」と首を傾げると、
「あ、ああ」
と、すぐにハッと我に返って、
「彼の名はエヴァン・クルーニー。私とルイーズと同じルーセンティア王国の騎士で、ルイーズの弟なんだ」
と、チラッと青年騎士とルイーズを見ながらそう答えた。
その答えを聞いて、
「へぇ、弟さんだったんだ……」
と、春風は思わずそう口に出すと、
(ヤベェ! てことは俺、ルイーズさんの弟さんに酷いことしたってことなのかぁ!?)
と、ショックで顔を真っ青にしながら心の中でそう叫び、
「すみませんでしたルイーズさん! 知らなかったとはいえ、あなたの弟さんに俺は何ということを!」
と、ルイーズに向かって深々と頭を下げながらそう謝罪した。
そんな春風の謝罪に対して、
「春風君! 謝ってる場合じゃないでしょ!」
と、美羽がそう怒鳴っていると、
「騎士エヴァン・クルーニー……」
と、それまで黙っていたイヴリーヌが1歩前に出て、
「何故あなたがここにいるのです? あなたはあの日暴れた他の騎士達と共に、ルーセンティア王国を守るようにとウィルフレッド陛下から命令された筈ではないのですか?」
と、青年騎士ーーエヴァン・クルーニー……以下、エヴァンに向かって毅然とした態度でそう尋ねた。
そんなイヴリーヌの姿を見て、
(おお。流石王女様、かっこいいかも)
と、春風がそう感心していると、肝心のエヴァンは、
「……申し訳ありません、イヴリーヌ姫様」
と、本当に申し訳なさそうな表情でそう謝罪すると、
「イヴリーヌ姫様がヘクター隊長と姉上、そして『勇者』殿達とフロントラルに行くことになったと聞いて、何か嫌な予感がした私は、同行する騎士の1人に無理を言って代わってもらったのです」
と、自身がここまで来た理由を説明し、
「まさか、目的が彼(?)に会う為だったとは……」
と、最後に春風に視線を向けながらそう付け加えたので、
(あれ? 今、なんか『?』つけてなかった?)
と、エヴァンの言葉に春風がピキッと青筋を立てると、
「何よ、やろうっての!?」
「フーちゃんに酷いことしないで」
「そうよ。あの日は何も出来なかったけど、今度は私達が春風君を守るわ」
と、レナ、歩夢、美羽は更にキッとエヴァンを睨み付けながらそう言い、それに続くように
「おうよ!」
「そうそう!」
「フンス!」
と、暁、野守、夕下も、レナ達と同じようにエヴァンを睨み付けながらそう言った。
更に、
「ええ、そうね。ハニーに手を出すなんて、そんなこと絶対に許さないわ」
「ああ、その通りだ」
と、凛咲とミネルヴァはそう言って春風の両隣に立ち、彼女達に続くように、ヴァレリーやタイラーといった春風がフロントラルに来て出会った人達も、皆、春風の傍に立ってエヴァンを睨み付けた。
彼女達の視線を受けて、
「う、うぅ……」
と、エヴァンはどうにかその場に踏ん張りながらも狼狽えていると、
「ちょっとごめんね」
と、春風はそう言ってレナや歩夢達を軽く押し除けて、エヴァンの前に立った。
そして、
「えーっと、エヴァン・クルーニー……さんでしたよね?」
と、春風がエヴァンに向かって恐る恐るそう尋ね、
「ああ。私はルーセンティア王国騎士の、エヴァン・クルーニーだ」
と、それにエヴァンがそう答えるように自己紹介すると、
「はじめまして、俺は雪村春風。今はちょっとユニークな『ハンター』をしている身だ」
と、春風も負けじとエヴァンに向かって胸を張りながらそう自己紹介した。
その自己紹介を聞いて、
「ちょっと春風、そんな奴に名乗る必要ないって……!」
と、レナがそう怒鳴ってきたが、春風はスッと右手を上げてレナに「待った」をかけると、
「さてと、ではエヴァンさんとやら」
と、エヴァンに向かってそう口を開いたので、それにエヴァンが、
「な、何だ?」
と、春風を警戒しながらそう返事すると、
「もしもだけど、あなたがあの日俺にぶっ飛ばされたこと、覚えてますか?」
春風はエヴァンに向かって丁寧な口調でそう尋ねた。
その質問を聞いて、
「……ああ、覚えているとも。あの日のこと、忘れたことなどない」
と、エヴァンがキッと春風を睨みながらそう答えると、春風は「そっか……」と呟いて、
「だったら、あの日のことでリベンジする気はないですか?」
と、エヴァンに向かって真剣な表情でそう尋ねた。




