第367話 春風の「心配事」
今回は、いつもより短めの話になります。
(ふぅ。よ、よかった。クラリッサ姫は無事、と……)
イヴリーヌと同じルーセンティア王国の王女にして彼女の姉であるクラリッサが無事であることを知って、春風がホッと胸を撫で下ろしていると、
「お姉様のことを心配してくださるなんて、お優しいのですね」
と、イヴリーヌが僅かに頬を赤くしながら、春風に向かってニコッと笑顔でそう言ったので、その言葉に春風は「え?」となると、申し訳なさそうに首を左右に振って、
「……いえ、自分はそんなんじゃありません。他に聞きたいことが山ほどあるのですが、この場にクラリッサ姫様ご本人がいないことが気になっただけです」
と、最後に「不謹慎な発言、申し訳ありません」と謝罪すると、イヴリーヌに向かって深々と頭を下げた。
すると、
「あー、そういえば話は聞いたけど、クラりんちゃんの異変に真っ先に気付いたの、春風ちゃんだったわよねぇ? どうやって気付いたのかしら?」
と、それまで黙っていたキャロラインがそう尋ねてきたので、それを聞いた春風は、
(く、クラりんちゃん? クラリッサ姫のことか?)
と疑問に思ったが、すぐに気持ちを切り替えるように首を左右に振ると、
「……勘です」
と、キャロラインに向かってそう答えたが、
「ふーん、勘ねぇ」
と、キャロラインが疑いの目を向けてきたので、
「はい、勘です」
と、春風は真っ直ぐキャロラインを見てそう答えた。
その答えを聞いて、
「えー? 本当にぃ?」
と、キャロラインが「むむむ……」と更に疑いの目を向けていると、
「あ! もしかしてさっき私達に謝罪した理由って……」
と、美羽が何かに気付いたかのようにハッとなったので、
「うん。俺がルーセンティア王国を飛び出した後、みんなに起きた出来事とか聞くのが先か迷っちゃって……」
と、美羽の言葉に春風が申し訳なさそうな表情のままそう答えた。
そんな春風の言葉に、
「ううん、気にしないでフーちゃん……」
と、歩夢が春風に向かって穏やかな笑みを浮かべながらそう言ったが、すぐに「ん?」となって、
「……因みに、何を聞くつもりだったの?」
と、首を傾げながら春風に向かってそう尋ねると、
「勿論、みんながルーセンティア王国の騎士達に虐められたりしてないかとか、五神教会の人達に虐められたりしてないかとか、最悪両方に虐められたりしてないかとか、『ハニートラップ』的なことをされてそのことで脅されたりしてないかとか……」
と、春風は歩夢に向かって指折り数えながらそう答えた。
その答えを聞いて、周囲から「えぇ?」と声があがると、
「……」
何故かそこで春風がピクリともしなくなったので、
「は、春風?」
と、気になったレナが恐る恐る声をかけると、
「……っ」
春風はバッと歩夢らクラスメイト達の方を向いたので、
「は、春風君!?」
と、思わずビクッとなった美羽がそう口を開くと、春風はクラスメイト達に詰め寄って、
「ねぇ、みんな本当に大丈夫だった!? 酷い目に遭わされたりとかなかった!? もしなんかされたら遠慮なく俺に言って! 責任もってぶっ潰すから!」
と、今にも目玉が飛び出るんじゃないかと思われるくらいに目を大きく見開きながらそう言ったので、
「お、落ち着いてフーちゃん! 大丈夫! 私達なら大丈夫だから!」
「そうそう! ウィルフレッド陛下やマーガレット王妃様に凄く良くしてもらったから!」
と、詰め寄られた歩夢と美羽がそう返事をして、彼女達に続くように他のクラスメイト3人も「うんうん!」と何度も力強く頷いた。
そんな彼女達の答えを聞いて、
「ほ、本当に?」
と、春風が恐る恐るそう尋ねると、5人のクラスメイト達は「うんうんうん!」と一斉に頷いたので、それを見た春風は無言で2、3歩下がると、ヘナヘナとその場に膝から崩れ落ちて、その勢いで自身の額を床にコツンとつけた。
そんな春風の様子に、
『あ!』
「ふ、フーちゃん!?」
「春風君!?」
「雪村!?」
「「雪村君!?」」
と、周囲の人達がギョッと目を大きく見開くと、
「よ……」
『ん?』
「よかったぁ〜」
と、春風は額を床につけたまま、震えた声でそう言ったので、その声に歩夢と美羽がハッとなると、
「……そっか、フーちゃんも私達のこと、心配してくれたんだ」
と、歩夢はボソリとそう呟いた。
その後、歩夢と美羽はすぐに春風の傍に近づいて、
「「ごめんね、心配かけちゃって」」
と、春風に向かってそう謝罪すると、ソッと優しく抱き締めた。そして、そんな彼女達の謝罪を聞いて、
「……ううん。2人は悪くない。悪いのは、俺だから」
と、春風が震えた声のままそう返事すると、
「……ごめんなさい」
と、歩夢と美羽、もっと言えば残りの3人を含めたクラスメイト達に向かって改めてそう謝罪した。
するとその時、
「あー、俺からもちょっといいかな雪村君」
と、眼鏡をかけたお調子者風の少年が「はい」と手を上げたので、
「ん? 何、野守君?」
と、春風がそう返事すると、
「えっとぉ、雪村君が俺達のこと心配してくれたのは嬉しかったけど、敢えて聞かせてもらうね」
と、「野守君」と呼ばれた眼鏡をかけた少年が続けてそう言ったので、そんな彼の言葉に春風だけでなく周囲の人達までもが「え?」と、眼鏡をかけた少年に視線を向けると、
「彼女、レナ・ヒューズさんとは何処までいったの?」
と、チラッとレナを見ながらそう尋ねてきたので、
「ん? 私?」
と、レナはそう言いながら自身を指差して、
「「「……あ」」」
と、春風だけでなく歩夢と美羽までもがそう声をもらした。




