第347話 帰還前と、現在
それから春風は普段着に着替えながら、レナ達から自身が眠っていた時の話を聞いた。
それは、凛咲によってルークと断罪官の隊員達が倒されて、その後、重体のギデオンと共にその場から飛び去った後のことだった。
「で、これからどうすんの?」
と、尋ねてきた凛咲に、レナ達が「え?」と反応すると、
「フロントラルに戻ります。我々の当初の目的は、春風君とレナさんの捜索と救出ですから」
と、タイラーがそう答えたので、
「そう。それなら、私達も一緒に行くわ」
「ああ。元々私達は、春風を助ける為にここに来たんだから」
と、凛咲とミネルヴァは2人してタイラーに向かってそう言った。
その言葉を聞いて、
「わかりました。では、一緒に来てもらいます」
と、タイラーがコクリと頷きながらそう言うと、
「あーちょっと待ってくれ」
と、ヴァレリーが「はい」と手を上げながらそう口を開いたので、それにタイラーだけでなくレナ達までもが「ん?」と反応すると、
「そのお二人さんも一緒だというのは賛成だけどよぉ。こいつらはどうするんだ?」
と、ヴァレリーは親指でアメリア、ニーナ、ピートを指差しながらそう尋ねてきたので、その質問にレナ達が「あ……」と声をもらし、
「あーそうでしたね。彼女達が断罪官の目的の人物達だという話はもうフロントラル中に広まってると思いますし、ここで連れ帰っても、彼女達の身の安全が保証されるかどうかもわかりませんからね。最悪、フロントラル出禁になるかもしれません」
と、タイラーは「どうしたもんかねぇ」と言わんばかりの困った表情でそう答えた。
そして、タイラーの言葉にアメリア達が「うぅ……」と表情を暗くしていると、
「だったら、この子達の身は私が預かるわ」
と、ヘリアテスがそう声をあげたので、
『え!?』
と、アメリア達だけでなくレナ達までもがギョッと目を大きく見開いた。
ヘリアテスのまさかの提案に、
「お、お母さん、いいの?」
と、レナがヘリアテスに向かって恐る恐るそう尋ねると、
「ええ、このままこの子達を放っておくなんて出来ないし、それに……」
と、ヘリアテスはコクリと頷きながらそう答えて、
「こうして獣人の子にも出会えたからね。ループス、きっと喜ぶと思うし」
と、最後にピートを見て優しそうな笑みを浮かべながらそう付け加えたので、
「め、女神……様……」
と、その言葉にピートはジワッと目に涙を浮かべると、
「よしよし……」
と、ヘリアテスはそう言ってピートの頭を優しく撫でた。
その後、ヘリアテスはアメリア、ニーナ、ピートと共にログハウスへ戻り、残されたレナ達はフロントラルへと戻ろうとすると、
「それじゃあ、春風はまだ眠ってることだし、ここは『師匠』であるこの私がおんぶして……」
と、凛咲が眠っている春風を見てイヤらしく手をワキワキと動かしながらそう言い、
「いやいや、ここはこの私が彼をお姫様抱っこするところだろ……」
と、それを遮るようにミネルヴァが春風を見てじゅるりと涎を垂らしながらそう言うと、
「いえ、お二人には申し訳ありませんが、春風君は僕が背負っていきますので」
と、タイラーにキッパリそう言われてしまい、
「「なんでぇ!?」」
と、凛咲とミネルヴァがそう尋ねると、
「何となくですが、お二人に任せると春風君にとってよろしくないことが起こりそうですから」
と、タイラーはハッキリとそう答えたので、その答えに2人は、
「「そ、そんな!」」
と、2人して「ガーン!」とショックを受けた。
そして時は現在に戻って、中立都市フロントラル。
「……で、それから私達が森の中を進んでいた時にエリックさん達と合流して一緒にフロントラルに戻って、門の前でフレデリック総本部長と他のハンター達と会って、その後みんなと別れてここ『白い風見鶏』に戻って、今に至るという訳」
と、そう話を締め括ったレナ。彼女の話を聞いて、
「そ、そうだったんだ……」
と、春風はそう呟くと、
(ありがとう、タイラーさん)
と、心の中でこの場にいないタイラーに向かって合掌しながらお礼を言った。
確かに、タイラーの言う通り、凛咲におんぶされるかミネルヴァにお姫様抱っこされた状態でフロントラルに戻れば、
(は、恥ずかしくて、暫く外出られないかも……)
と、春風はそう考えて、
(ほんっとうにありがとうタイラーさん!)
と、再び心の中で合掌しながらタイラーに向かってお礼を言った。
ただ、その最中チラッと凛咲とミネルヴァを見ると、
「「むー」」
と、2人とも不満そうに頬を膨らませていたので、
(あはは、すみません師匠にミネルヴァさん)
と、春風は心の中で2人に向かってそう謝罪した。
その後、春風は気持ちを切り替えようとして「コホン」と咳き込むと、
「じゃあ、アメリアさん達は今ヘリアテス様のところにいるの?」
と、レナに向かってそう尋ね、その質問にレナが「うん」と答えると、
「そっか。ヘリアテス様のところなら大丈夫だね」
と、春風はホッと胸を撫で下ろしたが、
「まぁでも、いつ断罪官みたいなのが現れてもおかしくないから、油断は出来ないけどね」
と、レナは「ふぅ」とひと息入れながらそう言ったので、
「うーん。まぁ、そうなんだけどさ……」
と、レナの言葉に春風は少し不安そうな感じでそう返事した。
すると、
「……あれ? そういえばヴァレリーさんとタイラーさん、それにアーデさんは?」
と、春風はキョロキョロと周囲を見回しながらそう尋ねた。
そう、現在部屋の中には、春風をはじめ、レナ、ディック、フィオナ、凛咲、ミネルヴァがいるが、ヴァレリーとタイラー、そしてアデレードの姿はなかった。
春風の質問に対して、
「ああ、大丈夫。3人とも食堂にいるって」
と、レナはグッと親指を立てながらそう答えると、
「そ、そっか。それはよかった」
と、春風はまたホッと胸を撫で下ろすと……。
ーーグウウウウウウウ。
と、また春風のお腹からそんな音がしたので、
「それじゃあ、みんなで食堂に行きますか」
と、春風はレナ達に向かってそう言うと、
『うん!』
『はい!』
と、皆元気よくそう頷きながら返事したので、それを聞いた春風はすぐにレナ達と共に部屋を出て食堂に向かった。




