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43 モルモルちゃんと能力鑑定スキル

「おお勇者よ、こんなところで死んで……」

 またしても聞き覚えのある声がした。


 コメディー王様ヤギにまたしても燃やされてしまった俺だが、今度はシステムボイスがなく、姿が白幼女天使ミカちゃんのものになっていた。


「あれはないわ。ゲームバランス崩壊とか、そう言うレベルじゃない。カオスすぎるだろ。本当にこのケームの製作スタッフどもは何考えてんだ!」

 俺はグチグチと文句を言いながら、立ち上がる。



 目の前には大きな説教台があり、それを迂回して、向こう側で偉そうな説教をしている、聖職者衣装に身を包んだ師匠に対面した。



「やっ、ミカちゃん。元気にしてる?」

「俺、またSP切れで気絶したんですか?」

 ここに来る時はいつもSP切れを起こしたときだ。もう3度目なので、さすがに慣れてきた。


 だが、そんな俺の前で師匠は首を振る。


「残念、今回はHP0での死亡」

「へっ?俺、不死スキル持ちなのになんで?」

「あれは一日に一回しか使えないスキルなのでしたー。残念」


 一日に一回しか使えない。

 まあ、確かに死んでも復活するなんてのは、相手からしたら理不尽すぎるスキルだよな。

 殺しても死なないのなら、どんな敵相手でも絶対に負けることなく戦うことが出来る。

 そうなってしまえば、RPGとしてゲームが成り立たなくなってしまう。


 例外があるとすれば、イベント上での演出が関わる場合くらいだろう。


「しかし師匠、あんた俺の妄想なのに、俺よりゲームに詳しいですよね?」

「アハハ~」

「実は俺の頭に何か埋め込んで、リアルの師匠が怪電波を飛ばして、俺がキャッチしてるなんてことはないですよね?」


 ――ニコニコ。

 師匠は同意するでも、否定するでもなく、笑顔を浮かべている。


 沈黙したままの笑顔が怖いよ。

 この人なら、マジで俺のリアルの頭に何か埋め込んでそう。



「……まっさかー」

 そうして長い沈黙ののち、師匠が笑顔のまま言った。


「師匠、間が長すぎ。拒否するまでの時間が長すぎます。マジで怖いって!」

「ミカちゃん。僕がそんなひどいことするわけないじゃない」

「してるじゃないですか。大体あなたは……」


 ――ニコニコ。

 俺が抗議する前で、師匠は相変わらずの笑みだ。




「モルモルちゃん、カモーン」


 ――ブヒューーーー!!!


 そんな中、師匠がいきなりモンスター召喚しやがった!

 この人のすることだから、これぐらいできて当然だと思う。

 理屈が通じない相手だからな。

 何しろ相手は大魔王より性格の悪い、生粋のサディストだ。



 で、呼び出されたモルモルちゃんだが、それは緑色の丸い頭に裂けた口だけがあるモンスター。目や鼻は付いていない。

 それだけなら問題ないが、頭からは総計七〇〇本にもなる触手が生えている。


 なぜ七〇〇本生えてるのが分かるかだって?

 俺は過去にアーク・アース・オンラインで、このモンスターの巣穴に師匠に突き落とされ、そこで触手全部切り落としたときに数えたことがあるからだ。


 なお、口からは異常状態系の息を吐き出す厄介極まりないモンスターで、アーク・アース・オンラインで、俺は……ミカちゃんは……こいつらの集団に襲われたせいで……


「うっ、うううっ」

「ミカちゃん、大丈夫?」


 脳内にトラウマが蘇り、白羽幼女天使ミカちゃんの俺は、その場に膝を付いて泣くしかできなかった。

 もう、戦うだけの勇気すら出てこない。


 まあ、戦う必要はないんだけど……



 ――ブヒューーーー!!!

 モルモルの声がするが、それは師匠が両手で持った、モルモルの姿を模した人形からの声だ。


 アーク・アース・オンラインでのオリジナルのサイズとは、見るべくもない小ささ。

 しかし、その姿はあまりにも精工過ぎて、俺のトラウマを刺激するには十分だ。

 なお、人形の触手は動き回らないが、ダランと地面へ垂れている。


「ミカちゃーん?」

「師匠、心配するふりして、その人形を俺にわざと近づけるのはやめてください。お願い、やめて、イヤッ、ヒヤアッ!」


 これでミカちゃんの中身が女の子だったら、凄くいい光景だろうね。


 だけど、中身が俺だからさ。アハハー。



「あ、いけない。ミカちゃんの目がここではない、どこかを見てる。おーい、ミカちゃん帰っておいでー」

「たから近づくなー」


 心配するふりして、さらに近づいてくる師匠。


「ありゃっ」

 と、モルモルの長い触手を踏んでしまい、師匠がずっこけた。



 そしてモルモル人形が宙を飛んで、(ミカ)の顔面へ向かって一直線に飛んでくる。


 わ、わざとだ。

 絶対わざとだ。

 俺をいじめるためだけに、わざと転んだだろう!



 ――ボフン

 次の瞬間、モルモル人形が俺の顔面に激突した。


 ――バタンQ~。

 豆腐メンタルの俺は、そのダメージに耐えきることが出来ず、その場で白目を剥いてぶっ倒れた。



「おお、勇者よ。死後の世界で、またしても死んでしまうとは情けない。今回は復活の為に特性モルモルちゃん人形を進呈しようではないか」

「……」


 師匠が何かほざいているが、もはや俺の意識に、そんな言葉など届いていなかった。



『The END』




 ◇ ◇ ◇




 ……気が付くとノートン村の出入り口に俺は立っていた。


 師匠の"自称死後の世界"から、無事にゲームの世界へ帰還できた。

 モルモルは嫌だ。

 触手なんてイヤだ。


 もうあんな奴らに関わりたくない!



「俺、このまま幼稚園児の頃に戻るんだー。それで友達のお母さんのビックバストに抱きついて……うへへ~」


 アリスが精神的に幼児退行してしまったように、ゲームの中に戻ってきた俺も絶賛幼児退行だ。


 いやまあ、欲望丸出しのエロ幼児だけどね。



≪特定の条件を満たしたことにより、炎耐性のスキルを獲得しました≫


 そんな俺の脳内で、いつものようにスキル獲得だ。

 まあ、今回は出鱈目なヤギに丸焼きされて、俺は無残に敗北したが。

 しかし、炎に焼かれて死んだが、そのおかげで炎耐性をゲットか。これは果たしていいのか、悪いのか……。



 ただ、今回はこれで終わらなかった。


≪特定の条件を満たしたことにより、魔眼スキルより、魔眼・炎の魔眼、魔眼・抵抗(レジスト)の魔眼が派生しました≫


 なん……だと?

 ついに俺の魔眼が覚醒するのか!


≪特定の条件を満たしたことにより、能力鑑定スキルがLv3になりました。以後プレーヤーのスキルレベルを確認することが可能になります≫


 Why?

 スキルレベルが確認できるようになっただと?


 しかし、俺は死んだだけなのに、なぜ能力鑑定スキルがレベルアップする?

 もしかして、スキルの所持数に関係しているとか?

 それか所持しているスキルレベルの合計が一定値を超えたら、能力鑑定のレベルが上がるとか?



 まあいい。

 とりあえず落ち着こう。


 俺、なんとかモルモルの衝撃を乗り越えて、精神が現実(ゲーム)に戻ってこれたぞ。



 しかし能力鑑定のことも気になるが、俺って死んだんだよな。

 てことは、デスペナルティーがありそうだ。


 自分の装備品を見てみると、なんとなくだが以前の新品だった輝きがなくなって、少しぼろくなっている気がする。

 相変わらず装備品の耐久値を見ることができないが、確実に劣化しているな。


 アイテムボックス内を確認すると、いくつかのアイテムの所持数が減っていたりする。

 幸い減っているのは使い道のないゴブリン武器や、殺戮しまくったラビットからのドロップ品ばかり。


 レアなアイテムは無事だ。


 他には武器の方だが……少し減っている。

 ただし、現状で最強武器の『ファブリニードの白夜剣』は無事だ。

 あとは量産品の安い武器なので、ロストしたからと言って、手痛い損失でなかった。

 これから戦闘をするにも、支障ないだけの予備武器も残っている。


 資金も、若干減っていたが、まあ問題ないだろう。



 あとは試しに体を適当に動かしてみる。


 少し、動きが鈍っている気がする。


 もしかして、デスペナルティーで基本ステータス値がいくつか下がってるのか?

 スキルのレベルは確認できるようになったが、自分のステータス値は結局分からないままなので、この辺はあくまでも感覚的なものだ。



 しかしそれにしても、

「あのヤギはないは……」

 あと、鬼畜師匠とモルモルもね……


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