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婚約破棄された崖っぷち女騎手、第三王子に拾われ不吉な『黒いユニコーン』と伝説の専属騎手になる  作者: 目白シキ


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僕の愛するリアを道具呼ばわりするな

『ヴェルダンティア記念』の人気投票では、国民が年末のレースを飾るのに相応しいユニコーンを投票し、上位18頭のみが選出される。

その選出ではユニコーンの性別や年齢に制限はない。


私の予想では、今年V1で活躍したブラックヴェッセルは間違いなく入っているだろうと思っている。

そして、ハンナが乗るヴァングロリアもヴィクトリアが乗っていたときからV1に何度も出場していたため、当然入っているだろう。


投票の候補者として挙がっているユニコーンの馬主と騎手、調教師のチームはユニコーン競馬協会の会議室に集められていた。

初めてその会議室に足を踏み入れたが、会議室というにはあまりにも豪奢すぎた。

金のシャンデリアに赤の絨毯、そしてずらりと並ぶ王族貴族の馬主と騎手たち…。


その中にはドレスを纏ってきっちりと髪を上にまとめてしゃんと座っているハンナとシビュラの姿もあった。

ハンナは私と一瞬目があったが、スッと目を逸らし、見なかったことにされてしまった。


「リア、大丈夫?」


フレデリック殿下が膝の上に置いていた私の手を上から優しく包み込むように握る。


「すみません、こういうところは初めてなので、少し落ち着かないのです。」


「僕がついているから大丈夫。」


私の耳元でそっと囁くと、殿下は私に微笑みを向けた。


「…それに、今日のリアは凄くキマッてる。」


悪戯っぽくそんな言葉を添えるので私はつい


「からかわないでください。」


とぴしゃりと言ってしまった。

しかし、殿下が私の緊張を解そうとしてくれる気遣いはとてもありがたかった。


「えー、お集まりの皆様。いよいよ今年の代表となるユニコーンが決まるといっても過言ではありません。『ヴェルダンティア記念』の出走馬を発表します。」


壇上で会長が白いひげを撫でながら順位が書かれた巻物を広げる。

巻物が開くサーっという音が会場内に響き、その場にいる全員が固唾を飲みながら、会長の発表に注目する。


「では、第二十回『ヴェルダンティア記念』の最多得票数を獲得した、最も今年を代表しているユニコーンを発表する!」


私もゴクリと唾を飲む。

私の手を握る殿下の掌が僅かに湿っていくことが分かる。


「第一位『ブラックヴェッセル』!」


思わずチームブラックヴェッセルは立ち上がり、殿下とセドリックとハイタッチした。

周囲の人たちが温かい拍手で包み込む。


すると、街報の記者たちがあっという間に殿下を取り囲み、ペンを片手に質問を始める。


「おめでとうございます!フレデリック殿下、ブラックヴェッセルが一位とは、さすがですね。初めての馬主にも関わらず、このような成果を残せるとは、流石王位継承権をお持ちの王子です。今回の選出に喜びの声…あるいは『ヴェルダンティア記念』に臨む意気込みなどをお聞かせください。」


会場が温かい空気に包まれる中、殿下は堂々と立ち上がり、記者たちとそしてその場にいた馬主たちに視線を向ける。


「僕たちが今年走って来たことが国民に一番に評価されたことは、何より嬉しく思う。そして、今回の『ヴェルダンティア記念』で一着を獲得することが、我々チームブラックヴェッセルの悲願であったV1制覇の達成の最後のピースだ。こんなに早く夢のV1制覇を叶えられたのは、ひとえに我らが騎手であるリア・アストリッドのおかげだと言っても過言ではない。良い機会だろう。ここで宣言する。僕、ヴェルダンティア王国第三王子フレデリック・ヴェルダンティアと、リア・アストリッド騎手は、結婚する!」


先ほどまでの温かい空気、拍手が一気に凍り付いた。

代わりに、ざわざわとした声が会議室の中いっぱいに広がる。


「え?このタイミングで結婚ってどういうこと?」

「『ヴェルダンティア記念』でリア騎手を専属から降ろすということか?」

「そもそも、リア騎手はどこの貴族の出身だ?」


と、ポジティブな反応ではないことは火を見るよりも明らかだ。


「リア騎手は、『ヴェルダンティア記念』に駒を進めるための道具であった、ということでしょうか?一体どの騎手を今回出そうと思っているのでしょう?」


すかさず記者は、周囲が一番気になる要素について的確に突いてくる。


「当然、リア騎手は『ヴェルダンティア記念』でもブラックヴェッセルの騎手として出る!僕の愛するリアを道具呼ばわりするな。」


そんなざわめきを切り裂くように放った殿下の鋭い一言が会場を鎮静化させた。


「…しかし、ユニコーンに騎乗することと、ご結婚されるのは両立できないのでは?一体殿下は何をお考えなのでしょう。」


殿下は記者をきっと睨みつける。


「その答えは、自ずと『ヴェルダンティア記念』を見れば分かることだ。これ以上、僕やリアを侮辱するような質問を重ねるのであれば、こちらも対応を考えよう。」


記者はこれ以上何を言っても無駄だ、ということが分かるとすごすごと引き下がる。

それまでのお祝いの雰囲気が一変して、急に気まずい雰囲気が流れ始めた。


受け入れがたい事実に、少しは会場がざわつくことは予想していたが、思った以上に悪い意味で反響が大きく、堂々としている殿下の態度の横で、私とセドリックは小さくなってしまっていた。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

ぜひページ一番下にある【☆☆☆☆☆】の星を5つ押して、二人の背中を押していただけると本当に嬉しいです!


皆様の熱い応援が、最終決戦へ向かう最大のエネルギーになっています。

冷ややかな視線をはねのけ、リアは最高の結果を出せるのか?

次回の更新は火曜日の予定です

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