第3話 異世界、セロス
第三話投稿です。ようやく異世界で活動開始です!
ヴェリナさんのレクチャーは都度挟んでいく予定です。
レクチャーを終えた私たちは、五つの色同士で争っている世界『セロス』に降り立った。
降り立った先は森へと続く平原で、争いの跡もほとんどなく、草木が伸び伸びと生い茂っていた。
「争いが絶えない世界にしては、思っていたより荒れてないね。」
「ヴェリナさんがそう送ってくれたんじゃないか?均衡状態に入った可能性もあると思うが……。ヴェリナさん、基本的に優しい人だから。」
「確かに、私たちを生き返らせてくれたし、潤田の無茶な頼みも、なんだかんだでちゃんとやってくれたしね。
まあ、死霊術師なせいか、実践はもう思い返したくもないけど……また死にかけた回数もう覚えてないよ。」
あれはもう忘れよう……なんか生き返ってから忘れようとしてばっかりだなあ、私。
深呼吸すると、鼻から吸う空気にとても濃いマナが含まれているのを感じた。
体全体に力がみなぎっていく。レクチャーは大変だったけど、この感覚を体得できたのは嬉しい。
「こんなにマナが濃いっていうのは、やっぱり世界がまだ若いからなのかな? 色々無茶なこと出来そうじゃん、天才魔術師のウルダさん?」
「なんで戦いを煽るみたいな言い方なんだよ……。俺がしたいのは魔術の研究が第一なんだけどなあ。まあ、とりあえずは戦争を止めなきゃだ。その為には色々無茶もしそうだけど……。
さて、とりあえずまずは、緑の一族に協力を仰ぎにいこうか。 種族が同じ人間と協力してからじゃ、エルフの人たちは警戒心を強めちゃうだろうし。
交渉は頼りにしてるぞ、知識のカイラさん?」
「えー、頼りにしてくれるの?それは頑張んないとなー。」
……良かった。頼りにしてくれているんだ。
置いていかれないように必死だったからこそ、レクチャーを乗り越える事が出来た。ありがとう、ヴェリナ先生……!
「じゃあ、いこっか? 一緒に。」
「ああ、そうだな。行こうか。」
私たちは森へと入っていく。
二人同士、しっかりと手を繋ぎながら。
まずはエルフの森へ。
調和と野生を重んじる、誇り高い緑の一族と、この手の輪を広げに行こう。
……この世界で魔術の試し打ちしてないけれど、
まあいっか。
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ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼
ズガン‼バキン‼
「……いやあ、失敗したねえ。どうしよっか、これ?」
「マナが濃いということはつまり、魔法の効き目も強くて当然なのかぁ……。
いや、やばいよなあ……。俺がやらかしちゃったんだし、どうにかしないと……。」
――今から三時間ほど前。
森へと向かった私たちは、モンスターに出会う事もなく、すんなりとエルフ族と接触することが出来た。
ヴェリナさんによると、この世界『セロス』では緑の一族は、人間という種族が少ない上に、森の中は基本的にエルフ族の縄張りなのだという。
最初に遭遇した時は
「この森へ立ち入るな、ニンゲンどもよ!」
という言葉と共に矢を向けられてしまい、かなりピリついてたけど、私たちは緑の魔術が使える旅人だという事を必死に説明したところ、何とか弓を下ろしてもらえた。
「わざわざ我等の領域にくるとは、何の用だ?」
改めてそう訊かれたので、私が答えた。
二人とも『セロス』の言葉は魔術を駆使して理解できるようになっているけど、話術に関しては私の方が得意だ。
「緑の一族の今後に関わる、非常に大事な相談があります。一族の長に会わせては貰えませんか?」
――『セロス』には、五つの色毎にそれぞれの色を司る『長』が存在する。
戦いを治めるためには、その『長』たちと会って交渉するのが最も手っ取り早いのだそう。
「我らの長にだと?素性も定かでないニンゲンのお前たちに、そうやすやすと会わせるわけにはいかない。そうだな……自分たちが本当に緑の一族だと、示せるものはあるか?」
リーダーっぽい金髪のエルフが、じろりと私たちを見ながら聞いてくる。
「示せるもの、かぁ……魔術を見せれば信じてくれますか?」
「ふむ、それで構わない。緑の一族だと分かれば、我々は歓迎しよう。」
ここまでくれば、後は何とかなる。
ヴェリナさんのレクチャーを通して、潤田は五つの色の魔術を相当数使いこなせるようになっている。ちょっとした魔術なんて、もうカードを通さなくても発動できるくらいだ。あとは潤田に任せて、私はフォローに回ろう。
「それでは、そうですね……あそこにいる《大牙》に《成長》をかけます。」
そういって、潤田は近くにいた《大牙》というモンスターに手を向けて、緑の呪文では代表的な《成長》を唱えた。名前の通り、生きものを大きく成長させる魔術。
だけど、これがいけなかった。
というよりは、やりすぎた。
――ヴェリナさんといた『次元の果て』は永い間、世界同士の中継地点として存在していた。
だから、マナの量は安定こそしていたけど、そこまで豊富なわけじゃなかった。
その状況で、私たちは魔術を使えるように練習していた。
燃料であるマナを、魔術へと変換できるように。
これは所謂「高地トレーニング」みたいなものになっていたんだと思う。
薄い酸素でもちゃんとスポーツできるように体を慣らしたら、より濃い酸素の低地でもっと良いパフォーマンスが出来るというトレーニングみたいに。
――結果。
大牙はちょっと大きくなるどころか、
森の木を小枝のようにへし折るくらい巨大になってしまった!
マナが薄い世界と同じ力加減を、マナが濃い『セロス』という世界で使ってしまったから。
あっという間に、森の中は戦場と化した。
木を何本もまとめたかのような大牙の腕が振り下ろされ、大地が割れる。
パニックに陥った森の中で、私たちは顔を見合わせた。
「……いやあ、失敗したねえ。どうしよっか、これ?」
~今日のカード~
《大牙》
「バニラ」と呼ばれる、特に能力を持っていない緑のモンスター。牙が長い熊。古代の生物という印象を迫力満点に描いたカードで、バニラにも関わらず非常に人気がある。
《成長》
緑の基本的な強化呪文。
生き物を成長させ、大きくできる。イラストは上記の《大牙》が巨大化した姿が描かれている。
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