第2.5話 ヴェリナ先生の環境講座・①
世界観の説明です。キャラクターの性格も、この設定に準拠していくつもりですので、キャラクターや自分はどれに当てはまるのかを考えてみると面白いかもしれません。
『はあ……それじゃあ最初に、魔術において最も大切な要素、「マナ」について説明するわね。
これは魔術を使う際に消費される、いわば燃料みたいなもの。とはいえただの燃料ではないわ。大まかに分けて五つの属性が存在し、それぞれが世界を構築している要素でもあるの。
細かい解釈はその世界によっても違うけど、
「光、結束を表す白」
「水、知識を表す青」
「闇、陰謀を表す黒」
「炎、破壊を表す赤」
「自然、野生を表す緑」
の五色と定義しているのが一般的ね。』
「……『ウィザード』の設定そっくりですね。」
ヴェリナさんの講義に、潤田はとても驚いた顔をしている。
私も『ウィザード』は多少かじっているけど、
確かにマナという概念はほぼ同じだ。
『見たところあなた達の世界では魔術はもう廃れてしまっているけれど、マナが世界を構築しているという点は、他の世界となんら変わりないわ。娯楽でマナの概念が考えられていたとしてもまったく不思議じゃない。
そして、ウルダが持っている「魔術のセンス」というのは、その『ウィザード』由来の物なの。あなたの『ウィザード』に対する考え方は、魔術師の素養と非常に似通っているわ。……それも、非常に強い力を持った魔術師にね。
ちょっと試してみるわ。ウルダ、今から渡すカードの名前を一つずつ発声してみなさい。そのカードのイメージを思い浮かべながら。』
「え? はい、わかりました。それじゃあ……《炎の一閃》」
ゴオオオオオッ‼
カードを持って潤田が発音すると、火炎放射器みたいな炎がカードから飛び出した。
凄い……本物の魔法だ!本人もびっくりしているけど、熱くはなさそう。
その後も、潤田が呪文を発声する度、そのカードのイラストに近い魔術が飛び出した。
「私も!えっと……《炎の一閃》!」
………………何も出ない。
何回かやってみたけど、うんともすんとも言わなかった。
恥ずかしいだけじゃん……。
その後も潤田は、赤以外の4色の呪文を唱え、その全てでなんらかの効果が現れた。
良いなあ……。
『なるほど。やっぱり見立て通り、センスは目を見張るものがあるわね。なぜそんなことが出来るのか、それも含めて説明するわ。
あなた達を送る世界では、それぞれの色のみを信仰している部族、種族、宗教による争いが絶えないわ。
彼らは一色の魔術・特性しか使えないけれど、ウルダ、あなたには「五色全てのマナを用いた魔術」を使う才能がある。
これはかなり珍しいことなの。例えば私は魔術についての大方の知識はあるけれど、主に黒の魔術を専門としているわ。白や緑の魔術はほとんど使えないわね。
面倒だからやりたくないけど、あなたには五色の魔法を可能な限り学んで、身に着けてもらうわ。 とは言っても、蘇らせる際に、『ウィザード』のカードを通して魔術が発動できるように手を加えたから、必要なのは魔術よりむしろカードの知識になる。
まあ、それは自信があるでしょう? だからこの講義をする必要はないんだけれど……。まあいいわ。ここまでで何か質問は?』
そう言ってけだるげに眼鏡を持ち上げるヴェリナさん。どこから持ってきたんだろう……。
私がそんなどうでもいい事を疑問に思っていると、考え込んでいた潤田が手を挙げた。
「なぜ僕たちは『ウィザード』のカードで魔術を使えるんですか?『ウィザード』のカード自体は魔術ではないはずですが。」
『いい質問ね。『ウィザード』の「呪文」は、実際にある魔術と非常に似通った効果を持つの。何故かは私にもよくわからないけれど、これを利用しない手はないでしょう?カードをフィルターとしてマナを流すことで、魔術として形成できるようにしたわ。
注意しないといけないのは、場所によってマナの濃さや色の偏りが出る点。本来は大気中のマナを使う事になるけれど、場所によっては使い手本人が貯めているマナを使わないといけない時があるわ。体に負担もかかるから気を付けなさい。
例えば水の中で炎の魔術を使うには、周りに青マナしかないから、使い手本人の赤マナを消費してしまうわ。場所の偏りによって呪文を選ぶことね。
「召喚獣」に関しては……あまり見たことがないものも多いけれど、恐らく召喚魔術として使用できるわ。カードからその召喚獣が出てきて戦ってくれるはずよ。』
……そういえばさっき、
「蘇らせる際に手を加えた」って言ってたよね。
もしかして、単純に生き返っただけじゃなくて、色々改造されちゃってるのかなぁ……。
『次に進むわよ。次は送る先の世界の情勢や成り立ちについてだけど――
~今日のカード~
《炎の一閃》
赤の標準的なダメージ呪文。
これを基準にして様々なダメージ呪文がデザインされた。イラストもこれを意識したカードが多い。魔術として使うと火炎放射を撃つ。