廊下
古めかしい扉をあけると、錆びた扉の金具が耳障りな音を立てる。扉の影に隠れながら扉の奥を見渡す。
薄らとした奥の廊下には水の流れる音、そして、何かの低い唸り声が聞こえた。
「ど、どなたかいらっしゃいませんか〜…?」
「バウッ!!!」
「わっ!?…い、犬?」
突然の犬の鳴き声にどきっと心臓が跳ねた。
恐る恐る手に持っている碧い炎のランタンを正面に向けて扉をくぐる。
ガチャン
「…え?」
扉が音を立てて閉まった。
急いで扉の把手を握り、回そうとするが、まるで何かに阻まれているように回らない。体重をかけて押したり、叩いたりするが、手が痛くなるばかりで扉は傷がつく事もない。
「どうすれば…」
開かない扉を前に先程まで落ち着いて居た不安や恐怖が心の底から湧き上がってくる。
「ガルルルゥ"」
低い唸り声が先程よりもハッキリと近くで聞こえた。
ゆっくりと振り返る唸り声の方向に向けてランタンを向けると其処には牙を剥き出しにし、鋭く此方を睨みつけている柴犬がいた。
まるで、少しでも動いたら首を噛みちぎらんとするような出立ちの柴犬に後ろ足を引こうとするが、行き止まりの扉に当たってしまう。
「ガウッッ!!」
「っ!?」
暫く睨み合いをしていると突然顔をめがけて飛びかかってきた。
突然の事に声も出せず恐怖で身体が固まってしまう。
胸辺りに強い衝撃を感じ、体当たりをされた事がわかった。そのままバランスを崩し、扉の方へと倒れ、受け身を取れず、尻餅をついてしまう。手に持って居たランタンは弧を描いて飛んでゆき、ゴンッと大きな音がする。
「い"っ!!」
柴犬はそうとう腹が空いているのか、牙を剥き出しにし段々と顔へと近づいてくる。
ギュッと目を瞑る。
だが、一向に痛みが襲ってくる事は無く、ゆっくりと恐る恐る目を少し開くと、ペロペロと顔を舐められる。
「わっ!?ちょっ、ふっ、ふふっくすぐったい」
「わんっ!」
柴犬は先程までが信じられない程、可愛らしくわんわんと鳴き、巻かれた尻尾を大きく振っている。
前脚の下に手を通して持ち上げ、改めて柴犬の姿を観察する。
お腹や後ろ脚の片方を何かで怪我をしていた。傷は浅く、治りかけているのか、血は固まっていた。
「君、ボロボロだね…大丈夫?」そう問いかけると「わんっ!」と返事が返ってきた。
「そっか」
柴犬を一旦下ろして、ランタンを取りに行く。柴犬は其の間も後ろを着いて来ており、愉快に近くを走り回っていた。
ランタンを拾い上げると、柴犬がまるでこっちに着いて来いと言うかのように「わんわんっ」と鳴き、真っ暗な中を進んで行く。その後に急いで着いて行くと、前脚を何かのものの上に乗せ、此方を見ているた。
近づいて見てみると、其処に在ったのは白骨化した死体だった。




