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試飲会とアクアマリン領一周年パーティー。

エリーからまさかの告白をされた翌日。


私は早く目が覚めて、試飲会の準備をしていた。


今日は朝からお酒などが運び込まれており、邸の中は騒がしく皆が動いていた。


「おはようございます。ジェラルディーナ。」


「おはよう、フィリベール。それにフレデリクお兄様と、ベルリック様も……」


今日は大体この四人で色々と指示を出していく。


勿論お父様たちも参加はしてくれるが、お客様方の相手をしてもらう予定だ。


子供を連れて来てもゆっくり楽しんでもらえるように、今日一日は子供部屋を開いている。


エルダ達侍女が子供たちの面倒を見てくれることに根回し済みだ。


「取りあえず三人にはお酒の準備をお願いしてもよいですか。」


今回は小さな瓶にいれて持ち帰れるようにしている。


勿論ここで試飲するお酒は全て樽に入っている感じだが……瓶も大量生産ができるわけではないので、こればかりは仕方がない。


三人に指示を出すと、てきぱきと動き出した。


私は私で、調理場に行きお酒のつまみを確認していく。


「料理長! 任せっぱなしでごめんなさい。料理の方はどうかしら!」


「ジェラルディーナ様じゃないですか。こちらは任せてもらって全然かまいませんよ。料理は今のところ順調ですね。ジェラルディーナ様に教わった方法で作っているので、味に間違いはないかと思っています。それと……」


小さい声で、


「チーズもいい具合に完成しましたよ。」


と、こっそり教えてくれる料理長。


チーズに関しては料理長と二人で、フィリベールにもばれない様に作っていたのだ。


米のとぎ汁と塩、にがりを合わせて乳酸菌を作り、牛乳と混ぜる。


それに酵素を加えて、ゆっくりと熟成させていく。


「本当!? 間に合ってよかったわ。一口味見したいんだけどできる?」


そう言うと、一口大に切ってくれたチーズを持ってきてくれた。


一口でパクリと食べると、程よい塩加減のチーズが口の中に広がる。


少し癖のある匂いがまたたまらなくいい。


「ん~! これは……完璧だわ! 料理長また腕を上げたわね! 今日はこのチーズも出しましょう。皆ビックリするはずよ!!」


これならお酒にもあいそうだ。


ビスケットの上に生ハムとアボガド……それにチーズとトマトを乗せたら絶対美味しいだろう。


まだ加工品を作るまで進んでないからハムが無いのは仕方がないけど。


加工品もこれから作っていきたいわね。


やりたい事ばかり考えてしまって、なかなか進まない。


「わかりました。それと……これも気になっていたんですが。これは一体なんですか?」


料理長が、私が昨日漬けたいくらを手元に持ってくる……。


まさか、一番初めに見つかったのが料理長だとは……。


まぁここを取り仕切っているのは料理長だし……仕方がないんだけど。


「こ、これは……そう……黄金の卵よ!」


あながち間違ってはいないはずだ……。


昨晩漬けたいくらは醤油を吸いこんで輝きも増している。


できればもう少し漬け込みたいところだけど……あまりの輝かしさに喉がごくりとなった。


「料理長……これは二人だけの秘密よ。ご飯を少しだけ持ってきてくれないかしら。」


料理長も言いたいことが分かったのか、小さく頷いてからご飯をお皿に少し持ってきてくれた。


しかもきっちり自分の分も持っている。


要するに口止め料ということだろう。


スプーンに山盛りいくらをいれると、ご飯にかける。


プチプチのいくらがはち切れんばかりに膨らんでいて、とてもおいしそうだ。


大きく口を開いてスプーンを口元にもっていこうとした瞬間――


「もぐ……うん。これはうまいな……」


まさかの……エリーにスプーンを取られたのだった……。


私は手に持っているいくらが消えているのを見て、呆然と立ち尽くす。


うぅ……この日をずっと楽しみにしていたというのに……。


まさかの、よりにもよってエリーに食べられるなんて……。


「エリオット……。」


「なんだ……? そんなに食べちゃまずかったのか?」


昨日必死に筋からとって下処理を頑張ったというのに……。


しかもおいしかったのか、私のお皿をひょいと持ち上げてもう一口いくらご飯を口に入れた。


「あなたねぇ~……私が丹精込めて作って楽しみにしていたものを……先に食べるなんて……。」


「でもいいわ。おいしいということは分かったから……でも、次は許さないんだから!」


料理長からご飯をもらうと、私はいくらをのせてから一口食べた。


いくら怒っていてもいくらのおいしさは変わらず……ほっぺたが落ちるほどおいしかった。


そしてつまみ食いもそこそこに、料理を色々作っていく。


今回は活きのいいタコが手に入ったということで、タコのから揚げも作ってもらった。


勿論唐揚げもだ。


焼き鳥は会場で焼き立てを食べてもらえるようにしたし、野菜の天ぷらも揚げてもらう。


野菜のたっぷり入った餃子を作って、それにチーズと漬物。


あとは定番のおにぎりに、サンドイッチ。


デザートコーナーも少しばかり用意をして、クッキーや一口サイズのケーキなんかも用意した。


「料理はこんなもんかしらね……。」


準備を終えると丁度いい時間になってきたので、あとは料理長に全てを任せて浴衣に着替えた。


お母様や子供たちも浴衣をきて、いつものドレスよりも楽だと喜んでいる。


ドレスはコルセットをしなきゃいけない分、なかなかご飯が食べられないから、そういった意味では浴衣はとてもいいのかもしれない。


お父様たちも浴衣に着替えていて、なんだかこれからお祭りにでも行くような気分だ。


それから私たちは会場に入り、貴族の方々に挨拶をしていく。


ある程度人数が揃ったところで、私とフレデリクお兄様、ベルリック様が壇上にあがった。


「本日は遠路はるばるアクアマリン領までお越しいただきありがとうございます。」


「アクアマリン領の復興をめざして一年。復興に目処がたちましたのも皆様のご支援があったからこそだと思います。」


「本日はその感謝の意味を込めまして、お酒を用意させていただきました。」


お酒とは何かをかいつまんで説明していく。


ワインと似たようなものであること。


種類は地酒と芋焼酎、麦焼酎、米焼酎にビール、梅酒、蜂蜜酒があることを伝えていく。


「今回はスフェレライト領で採れた麦とさつまいも、蜂蜜。ホワイトベリル領とフローライト領で採れた麦やお米、それと我がアクアマリン領で取れた梅の実を使用しております。」


「もし何か聞きたいことなどございましたら、こちらの浴衣を着ている者にお声がけ下さい。」


今回はお父様やお母様にも協力してもらって、お酒の知識を頭に叩き込んでもらった。


「それとお酒を飲む際ですが……」


いくつか注意点を伝えると、皆、お酒の種類によっては合う合わない可能性があること。


飲み過ぎに注意して欲しいこと。


それと空きっ腹は良くないので、何かつまみながら食べて欲しいことを伝える。


「何事も節度が大事ですので、くれぐれもお気をつけください。」


「酔ってしまわれた場合は、椅子に腰掛けてください。水も用意しておりますので、水を飲みながら楽しんでくださいね。」


「もちろんお酒が苦手な方向けに、コーヒーや紅茶、梅ジュースなども準備しております。」


手始めにビールを小さなコップに入れて渡していく。


行き渡ったのを確認してから――


「カンパーイ!!」


貰ったコップを前に出しながら、皆に聞こえるくらいの声の大きさで音頭を取った。


そして待ちに待った一口目のビール……。


ゴクリと飲んだ瞬間――


脳の中が弾けた!!


「ぷはぁぁぁぁ!! やっぱ仕事のあとのビールは!! さいっっこぉぉぉ!!!」

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