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初夜をすっぽかされたと思ったら、崩壊寸前の公爵家と夫の隠し子を押し付けられました 〜旦那様は公爵家がいらないようなので、私がいただいても構いませんよね?〜  作者: ゆずこしょう
ジェラルディーナ・アクアマリン・スフェレライト。

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特産物を作ろう!

「ん~……この匂い。海に来たって感じがするわ~!」


馬車を降りて少し伸びをすると、潮風の独特の香りが漂っている。


町長さんへの挨拶もそこそこに、私たちは町の中を歩くことにした。


町の中を歩いていると、色々な人が声をかけてくれる。


どうやらこの町の人たちは、そこまで領主に対して嫌な気持ちを抱いていないようだ。


見たところ、農家で生計を立てている人が少ないからかもしれない。


「この地域は色々あるし、町にそれぞれ名前を付けたほうがわかりやすいわね……ありきたりだけど、この町の名前は海の町にしましょうか。」


「温泉街は温泉の町。山間にある町は山の町……どう?」


フィリベールとミナリーの顔を見ただけで……何となくすべてを察した……。


「っていうのは冗談よ! ハハハ……ちゃんと名前を考えるから安心して頂戴。」


名前……って考えるのが結構大変だったりするのだ。


でもこれからのことを考えれば、きちんとした町名を考えたほうがいいだろう。


もしかしたら、スフェレライト領の方も町の名前を考えたほうがいいのかもしれない。


町の名前については後で考えるとして、私たちは海に向かうことにした。


海に向かうと、たくさんの帆船が置いてあり、丁度漁師さんたちが漁から戻ってきているところだった。


漁師さんたちの動きを見ていると、一人すごく偉そうなおじいさんが陣取っている。


「フィリベール。きっとあのおじいさんが、ここの首領だと思うわ……。」


「挨拶に行ってくるから待っていて頂戴。」


「え……行くなら一緒に行きますが。一人で行かれるんですか?」


「えぇ。こういう時は一人で行った方が仲良くなれると思うのよ! だから待ってて頂戴。」


見た目は怖いおじいさんだが、そういう人に限ってすごい優しかったりするし、一対一の方が色々話をしてくれる可能性が高い。


フィリベールは少し不安そうな顔をしていたが、それを振り切って、一人でおじいさんのところに向かった。


「こんにちわー!!」


大きな声で挨拶をすると、皆がこちらを見て変な顔をする。


見るからに男しかいないようなところに、貴族の女が現れたのだ。


「誰だこいつ……」って思うのと同時に、「変な奴来た……」と思うだろう。


「私、新しくここの領主になりました、ジェラルディーナ・アクアマリン・スフェレライトと申します。」


「お話を伺いたくてまいりましたぁ!」


領主の名前を出すと少し顔色が変わったが、やっぱりこの辺りの人は領主に対して嫌悪感は強くないようだ。


私が名乗ると、おじいさんが立ち上がり私に向かって歩いてくる。


「ここの漁長をしておるギョルマーじゃ。」


「それでお前さんが新しい領主というのは本当かい? 見るからにまだ若い娘にしか見えないんだがな。」


「はい、新しく領主になりました。」


「そしてここの領地の名前も新たに変わりまして、アクアマリン領に変更となっております。」


「以前の領主であるトンベリー・マラカイトは色々ありまして、現在ここにはもうおりません。」


トンベリーの名前を出すと、皆の顔色が少し変わった。


ルネが言っていた若い娘を連れていく……というのは、ここでも起きていたということだろうか。


「あいつがいなくなった……だと!? あいつは処刑でもされたのか!?」


ギョルマーさん以外の漁師が、私の話を聞いて口を出してくる。


「いえいえ。処刑なんて生ぬるいことしておりません。」


「だって死んだら全部終わりじゃないですかぁ。」


「今まで皆さんがされてきたことを考えれば、生ぬるすぎます。」


「と、言うことで一番つらい鉱山奴隷となって、今頃ひぃひぃブヒブヒ言いながら鉱山で働いているころだと思いますわ。」


私の言い方が面白かったのか、誰かが「ブフッ」と吹いて笑い出した。


少し雰囲気が和やかになったようで安心だ。


「そ、それは本当なのか……じゃぁあいつが連れて行った妹は……」


あぁ、この人は妹を連れていかれてしまったのか……。


あいつが連れて行ったとされる女性たちを探し出すのは少し大変だろうけど……この国にいるとなれば、探し出せないこともないだろう……。


私の予想だと、トンベリー・マラカイトとつるんでいた奴らが怪しいと思っている。


その辺りは、ラルフお兄様に連絡して探ってもらうのもありかもしれない。


「そうですね……恐らくこの領地にはいないと思いますが、できる限り連れていかれた女性たちは探し出しましょう。」


私がそう言うと、膝をついて「ありがとう。」と言ってきた。


もしかしたら探せない可能性もあるかもしれないけど、それでもこの人にとって希望が見いだせたのならよかった。


「ゴホン。して、その領主さまが一体こんな男所帯のところに供も付けずに何をしに来たんだ?」


話を変えるよう咳払いをしたギョルマーさんに、私はここで獲れる魚などを確認することにした。


「ここで獲れる魚の種類を教えてほしいんです。」


「あと魚の食べ方とか教えてもらえると嬉しいのですが……」


魚の食べ方次第では、新しい食べ方を伝えて新たな特産物にすることだってできるかもしれない。


それに何の魚が獲れるのかはとても重要だと思う。


「時期にもよりますが……色々なものが釣れますよ。」


ギョルマーさんの話を聞いていくと、色々と知っている魚の名前が出てくる。


春先はアジ、サクラマス、マダイ、サヨリ、スルメイカにワカメに昆布。


夏になればクロマグロに、メバル、シロギス、岩ガキ、黒アワビ。


秋はサザエ、ノドグロ、カレイにサバ。


冬の少し気温が低い時期は、ブリにサケ、ズワイガニが獲れるそうだ。


「そんなに色々なものが釣れるんですね!」


「一年通して毎日幸せじゃないですか!!」


「ち、ち、ちなみに食べ方はどんな食べ方を!?!?」


色々な魚が獲れることに思わず興奮してしまい、鼻の穴を広げて鼻息荒くギョルマーさんの方に寄っていくと、ギョルマーさんが急に笑い出した!


「ふ……ふはははは!」


「嬢ちゃん変わってるなぁ! そんなに魚が好きなのか。」


「この国ではあまり魚を食べる習慣がないから売れなくて困っていたんだが……それだけ魚が好きと聞けると嬉しいのぉ。」


「ハハハ……食べ方だったな。食べ方は焼いて食べるくらいだな。」


そうか……海がここにしかないがために、そんな弊害があるのか……。


食べたことがないから食べる人が少ないということなのだろう。


それに……焼き魚くらいしか食べ方がないなんて……。


「くぅぅぅぅ~! それは勿体なさ過ぎます!」


「私からいろいろ提案させていただくので、もしよければ特産物を作ってみませんか!?」


「もちろん初期費用は私が持ちます!! どうでしょうか!!!!!」


魚だったらまず一つは干物でしょ。


温泉街くらいだったら刺身にして食べることも可能かもしれない。


それにお鍋に……ムニエルに、煮つけに……唐揚げに天ぷら……。


食べ方を考えるだけで、口の中によだれがたまっていく。


「ふ、ふむ。嬢ちゃんが初期費用を持ってくれるというなら構わんが。」


「今より収入が増えるというなら越したこともないしのぉ。皆はどうだ。」


ギョルマーさんが皆に声をかけると、「いいぞぉ!! やってみっかぁ!」と声が返って来る。


こうして、アクアマリン領復興計画一つ目の魚特産物計画が幕を開けたのだった。

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