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プレゼント。

「さて、儂からのプレゼントだがな……」


国王陛下が手を上げると、ホワイトベリル侯爵が二枚の紙をテーブルの上に置く。


しかも羊皮紙で出来た高級なものだ。


この国で羊皮紙を使うのは、大事な話の時と決まっている。


ということはだ……今回の話……それだけ“大事な話”ということになる。


さらに、お父様とフレデリクお兄様も席から立ち上がり、どこかに消えていった。


「先程、ジェラルディーナからも話があったが……五年間、税金を横領していたということは調べがついておる。」


「税金を横領していたということは、通常であれば浮いた金があるはずなんだがな……サミュエルが調べたところ、そこまで浮いた金があるというわけではなかった。」


確かに、スフェレライト領の税金を使っていたら、マラカイト子爵領で集めた税金が残るはずだ。


それどころか、マラカイト子爵領の方が人口も少なく、領地の面積も小さいのだから、プラスで残っていてもおかしくない。


そこまで浮いたお金がないということは、領地経営を全くしてこなかった可能性が高いということだろう。


「ここ数年、この地が大きな災害に見舞われたという形跡もございませんでした。」


「そして、さらに調査を進めたところ、その浮いていたお金が、スフェレライト領の税金総額とマラカイト子爵領の税金総額を差し引いた金額であることが分かっております。」


淡々と話すホワイトベリル侯爵。


いつもは少し茶目っ気があるから気になっていなかったけど、周りから“氷の宰相”と言われているだけあって、とても冷たい雰囲気が出ている。


気温が変わったわけでもないのに、ゾワゾワっと鳥肌が立ってきた。


「さて、これがどういうことかわかるかな? マラカイト子爵。」


マラカイト子爵を見ると、いたるところから大量の汗が流れていて、顔色もかなり悪くなっている。


「え……え……えっと……その……そうです! そこにいる女がマラカイト子爵領の税金を使ったのですよ。」


……


………


…………。


「「「は?」」」


え……っと、また私?


何故そこで私が出てくるのよ……。


苦しい言い訳にもほどがあるわ……このくそ豚め!


「えっと、私がマラカイト子爵領の税金を使ったから、スフェレライト領の税金を盗ったということでしょうか……?」


「そ、そうだ……そういうことだ。」


「「「……」」」


「そうだ……」じゃねぇーーー!


私がなぜマラカイト領の税金を盗って使わなきゃならないのよ。


だったら初めからスフェレライト領の税金を使うっつーの。


このくそ豚はげじじぃ!!


「「「ブフッ」」」


頭の中で一人毒づいていると、周りから笑い声が聞こえた。


マラカイト子爵以外の人たちがこちらを見て笑っている。


「えっと……まさか!?」


「ジェラルディーナ……そのまさかですよ。すべて口から出ています。」


こっそりと耳打ちしてくれるフィリベール……。


耳打ちしなくても、皆の顔を見ていれば何となくそのまま口に出ていたのはわかります……。


「えっと……も、申し訳ございません?」


重い空気をぶち壊してしまったことを謝ると、国王陛下が我慢していたのか大きな声で笑い出した。


「ふははははは! よいよい。まさにジェラルディーナの言った通りだ。」


「そんな苦しい言い訳したところで、お前がやったことは変わらんよ。マラカイト子爵。」


そう言って話をしていると、お父様とフレデリクお兄様が戻ってきて話し出した。


「いやぁ、この屋敷に入った時に、ずっと感じていたことがあったんですよ。」


「あまりに飾り気がなさ過ぎて、不自然にもほどがあったんです。そこで調べさせていただきました。」


フレデリクお兄様は話しながら、いくつかの骨董品や宝石をテーブルに置いていく。


「実はある部屋に、この手には持ちきれないほどの骨董品や宝石があったんですよね。」


「これはほんの一部です。昨日、急遽国王陛下が来ると通達があったから急いで隠したのでしょうが……それが仇となりましたね。マラカイト子爵。」


私の前ではいつも人のよさそうな笑顔で笑っているフレデリクお兄様が、無表情で話している分、余計に恐怖心を煽る。


「私のかわいいかわいい大事な妹に全ての罪を着せようなどと、甚だしいにもほどがある。」


「その無いにも等しい髪の毛を全て毟ってやってもいいくらいだ。いや、それだけでは足りないな……」


毟るって……。


発想がとてもかわいらしいです、お兄様。


そしてその話を聞いて「ブヒッ」っと鳴いたマラカイト子爵。


お前は本当に豚なのかーって言いたくなったが、豚に失礼なので心の中で押さえた。


「ゴホン。それで話が逸れてしまったが、お前が今まで領主としての仕事をしてこなかったのは目に見えて明白である。」


「よって儂からのプレゼントじゃ。」


「トンベリー・マラカイト。子爵位を剥奪。並びに領地を没収。」


「さらに、鉱山奴隷として税金の返済をしてもらおう。」


「あぁ、鉱山奴隷として働くのはホワイトベリル領にある鉱山だからな。逃げられるとは思わないように。」


「そ、それはあまりです。どうかご再考いただけないでしょうか……」


そう言って国王陛下の足に縋りつくトンベリー・マラカイト。


国王陛下は毛虫でも見るような目線をトンベリー・マラカイトに送る。


「再考だと!?」


「いいか? この領地を再建するのがどれだけ大変かわかっておるのか?」


「領民を苦しめ、さらに農地に糞をばら撒き、異様な臭いを漂わせている時点で片腹痛いわ。」


「簡単に死ねると思うなよ。残りの人生全てを使って償ってもらうからな。」


そう言って、足に縋りついたトンベリー・マラカイトのことを振り払う国王陛下。


民のことを一番に考えることができる国王陛下だからこそ、今回の件はとても辛いことだっただろう。


一緒に来ていた騎士団の数名がトンベリー・マラカイトを連れていくと、国王陛下は小さく息を吐いた。


「さて、ジェラルディーナ。君にも話がある。」


「な、なんでしょうか……?」


先程の雰囲気冷めやらぬまま話し出した国王陛下に、思わずごくりと喉が鳴った。


「そんな構えることではない。」


「お前はこの数年で数多くの功績を残してきた。」


「南の領地改革に、蒸気機関車の開通。トンネル工事。その功績はとても大きく、領民たちからの評判がいいことも知っている。」


「そこで、我々はこう判断した。」


「お前を男爵位のままにしておくのは勿体ないとな。」


「よって、男爵から子爵に陞爵し、アクアマリンの名を授けることとする。」


一瞬、何を伝えられたのかわからずボーっとしてしまった。


「えっと……私が男爵から子爵になるということですか? これは夢ですかね?」


自分の頬をつねってみると、きちんと痛みがある……。


「夢……じゃない?」


その行動を見てか、国王陛下が笑った。


「ハッハッハ。確かにその気持ちも分かるが、夢ではない。」


「そして、もう一つ。マラカイト子爵領をお前にやろう。」


爵位だけでなく、領地までもらうって……。


吃驚しすぎて言葉が出ない……。


しかもこの地ってことは……また領地の立て直しからスタート……ということなの!?


「この地には温泉があってな。できれば復興してもらいたいのだ。」


「そして、この地がお前の領地になったということであれば……機関車も開通できるだろう。」


「フローライト領との行き来もしやすくなるのではないかと思うんだがな……どうだろうか。」


温泉という言葉を聞いて、頭の中が温泉とお酒で支配されてしまった私は、二つ返事で「やります」と言ってしまったのであった。

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