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お味噌汁と焼きおにぎり。

「エリー!? な、なぜここにいるのよ!」


料理長と二人。


お味噌汁と焼きおにぎりを試食しようと、両手でおにぎりを持ち口へと運ぼうとしていたところ、調理場の中へすごい勢いで入ってきたのはエリオットだった。


「ずるいじゃないか! 俺を差し置いて試食とは! 俺だってディーナの作った料理が食べたいのに……俺も仲間に入れてくれ!」


…………。


「えっ!? そんなにお味噌楽しみにしていたの? だったら早く言ってよ! 今から準備するから待っていて」


わ、私の作った料理が食べたいって、まるでプロポーズみたいじゃない。


なるべく平静を装って返事したつもりだったけど、バレていないか少し心配だ。


まぁ、お父様達に似てそこまで顔に出ることは無いから大丈夫だとは思うけど、心配だった私はエリーに背を向けておにぎりを作り始めた。


これから食べるおにぎりは、シンプルな焼きおにぎりだ。


お味噌の焼きおにぎりで、少し甘めの味付けにした。


それとお味噌汁。


海で捨てられていた海藻類。


この世界では海藻を食べる習慣がない。


その為、海には沢山捨てられていた。


せっかく美味しいのに勿体無いと思った私は、使わない海藻類を再利用することにしたのだ。


今回は、その海藻からだしを取ったお味噌汁になっている。


具材は一年かけて作り上げた絶品のお豆腐と長ネギだ。


シンプルだけど、やっぱり豆腐と長ネギのお味噌汁が一番好きだ。


「お待たせ。焼きおにぎりとお豆腐のお味噌汁よ」


エリーの前にお皿を置くと、目をキラキラとさせながらおにぎりを見ている。


そんなにお腹がすいていたなんて気づかなかった。


やっぱりさっきの言葉は、お腹がすいていたから出た言葉で、エリーにとっては深い意味はなかったという事だろう。


改めて三人で焼きおにぎりを食べ始める。


ふわりと香るお味噌のにおいに懐かしさを感じる。


昔、ご飯とお味噌しか無かった時、よく母親が作ってくれた味だ。


「ふふ……味は覚えているものなのね。幸せ」


今回作ったお味噌は白味噌に近いだろうか。


豆の種類や、麹の作り方などでも味は変わってくるだろうから、その辺はこれから改善していく必要がある。


ただ、一先ずは味噌は完成と思っていいだろう。


エリオットや料理長の顔を見ると、何故か二人とも涙を流していた。


「ちょ……ちょっと二人とも……どうしたの!? 涙流すほど美味しかった……ってことでいいのかしら……?」


自分たちが涙を流していることに気づかなかったようで、二人とも目尻の涙を指で拭っている。


「あぁ、すまない。美味しかった。食べるまでは、美味しそうに感じなかったんだがな。ほら……見た目の色とかよ。それにどこか懐かしさを感じた」


懐かしさ……というのは、時間をかけて作っているから思いが籠っているみたいな感じなのかしらね。


温かみがある……みたいな。


美味しそうに感じなかったのは色味かもしれない。


お味噌を初めて見た人は奇怪な顔をする人が多い。


日本人は見慣れているけど、他の国の人は見慣れていないからだろう。


きっとそんな感じだと思う。


「そうだな。料理長の言う通りだ。とても美味しくて、どこか懐かしさを感じたよ。それに……この味。今まで食べたことの無い味で、なんだろう。感動してしまった。新しい味に出逢えたことと、その瞬間に出会えたことに……」


「新しい味なんて……大袈裟すぎる気もするけど、でも嬉しいわ! ありがとう。料理長。これをお昼に全員に出してくれる? そして感想を聞いてちょうだい。作るのに時間がかかるものだから、生産量を増やすためにも皆からの意見がほしいの。お願いね!」


それだけ伝えると、お味噌汁と焼きおにぎりを食べ切り、急いで執務室に戻った。


***


「ぱー」


「違うぞ。パパだ。もう一回言ってみな」


「ぱー!」


カイもアルも俺を“父”と認識はしてくれているようだが、まだ“パパ”とは言えないようで、いつも俺を見掛けると「ぱー」と言って寄ってくる。


一年前は乳飲み子で、寝てばかりいた二人もいつの間にか歩くようになっていた。


この一年、オディロンが帰って来ることもなく、ただただ平和な時間だけが過ぎている。


何度か父上から「帰ってこい」「現状報告しろ」と連絡が来ているが、居心地が良すぎるのとディーナのことが心配で、スフェレライト公爵家から出られないでいる。


と、言ってもそろそろ一度戻らないと、母上の雷が落ちそうだが……。


それに、一応ジェラルディーナは結婚しているのだ。


相手は家にいないが……。


俺がずっとここにいることで、ジェラルディーナの心証が悪くなる可能性だって出てくる。


「そろそろ一度戻らなくてはな」


「「ぱー!」」


コテンと首を傾げながらこちらを見てくるカイとアル。


キラキラした純粋な目でこちらを見られるだけで、心が浄化されるようだ。


自分の子では無いが、今後養子にとってもいいと思っている。


勿論、ジェラルディーナと結婚できることになってからだが……。


その為にも一度父上たちと話そうと、近いうちに王都へ帰ることに決め、執務室に向かった。


「ディーナは?」


「ジェラルディーナお嬢様でしたら、恐らく調理場にいるかと……。お味噌とお醤油がそろそろ出来るとか仰っていましたので……」


昔からディーナが作る料理はおいしい。


特におにぎり。


他の人が同じように握っても、あのふわっと加減は出ないし、幸せな気持ちになるのだ。


俺はディーナの作る料理を食べたい一心で、調理場へ向かった。

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