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吸血鬼に質問です。

その思いがこんなにも抑えきれないものだなんて思わなかった。

「ねえエリュ。」

「ん~?」

ひなた、エリュ、薫、優香の4人で夕飯を突っついている。

そんな時ふいに薫が口にした。

「アンタさぁ、大丈夫なワケ?」

「大丈夫って、何が?」

いまいち話が掴めないエリュが首を傾げる。

「だって行くとこ無いって言っても女の家で暮らしてるわけでしょ?」

「そうだね。ひなたって本当に優しいと思うよ」

「そうじゃなくて、マズイんじゃないの?」

「何が?」

ひなたにとってならまだしも自分にとって何か不都合な事でもあるのだろうか。

「彼女どうすんのよ、待ってるんじゃないの?」

その言葉にひなたは箸を取り落しそうになる。

それは自分が一番気になっていたことだ。

箸を止めてエリュの答えを待つ。

「え?居ないよ?」

あっさり否定。

何故かその場の空気が止まる。

「え、なんで?彼女いないとダメ?」

「そうじゃなくて、意外だと思ったのよ。」

「意外?」

むぅぅ、と考え込むエリュ。

―そっか、エリュ彼女いないんだ。

喜びが顔に出そうになるのを必死に抑えつつ、ひなたは彼の表情をうかがう。

「ほら、エリュくんかっこいいからモテそうだねって。」

「俺が!?」

悩んでるところを優香に言われてさらに考え込んでしまう。

かっこいい…のか…?と困り顔で首をひねっている。

「ねえ、ひなたはないわけ?こいつに聞きたいこと。」

「へっ!?私…?」

「ひなたちゃんさっきからエリュくんの方ばっかり見てるから何かあるのかなぁって」

一人考え込むエリュを放っておいて女3人話し込んでいる。


「…分かんない…。」

ようやく思考から復帰したエリュ。

どうやら結論はでそうになかったようなのであきらめたらしい。

諦めて一人もくもくと食事再開。

おいしい。

しばらく味わったところで。素朴な疑問をぶつけてみる。


「ねー。じゃあ逆に聞くけど3人は彼氏いるの?」

聞かれたから聞き返した。という理由もあったのだが、ひなたの彼氏の有無が若干気になる。

「え?私ら全員フリーだけど?」

こちらもあっさり否定。

全員、という事はひなたにも彼氏が居ないという事になる。

―まぁ、彼氏が居たら俺を居候させてくれたりしないか…。

少しほっとしながらエリュはちらりとひなたの横顔を見てみた。


ひなたは少しだけ不安そうな顔をしていた。

その顔をよく見ようと少しだけ近づいたところでふと、ひなたが顔を上げる

「えっ、エリュ!?な、何っ??」

「ちょっとアンタ何やってんのよ。近いわよ!」

「え、あ、ごめん…。」

薫に怒られ、エリュは姿勢を正す。

ひなたと過ごす日々の中で気づいた事が一つある。

彼女がこんな反応をした時は、落ち込んでいる時だ。

薫たちが帰った後、自分はどんな行動をとればいいのか。

そんなことをうっすらと考えてた時だった。


「え、エリュ…」

「んえ?」

ひなたにいきなり名前を呼ばれたので変な声で返事をしてしまった。

彼女はエリュの顔を見たり視線を外して下を見たり。

これもなんとなくわかる。

「どうしたの?ひなた。」

こういう時の彼女は言いたいことを言おうか言うまいか迷っている。

どうしたの?と問いかけて彼女が話してくれるのを待つ。

とりあえずそれが彼の考える最善の行動。

「あ、あのね…エリュって香水付けてたりする…?」

「香水?」

ひなたに指摘され、エリュは慌てて自分の服の匂いを嗅いでみる。

自分は何とも思っていないのだが…

「何か…ラベンダーの匂いがする…。」

「ラベンダー?」

ひなたのその言葉に優香は首を傾げて考える。

するとエリュの肩口まで顔を寄せた。

「えっ、優香!?」

「ちょ!ちょっと何してんの!」

驚いて動けないエリュ、慌てて優香を引き戻そうとする薫。

ひなたの顔からは血の気が引いていた。

言葉も発せず、ただ茫然とその騒ぎを見て。

少しだけ、ほんの少しだけ。

胸の奥にわだかまるものを感じた。


「本当だー、ラベンダーの匂いだねー」

優香は周りのリアクションなど気にも留めずにのほほんと微笑む。

「ふーん、エリュってラベンダー臭がするのね」

「なんか臭いみたいに言うなよー。でもそんなに気になる?」

改めて自分の匂いを嗅いでみる。

自分の匂いと言うのは案外気が付かないものだ。

「ねーひなたぁ、やっぱ気になるー?」

困り顔でひなたの方を向く

「ご、ごめん…」

「うあぁ、やっぱり気になってたんだ…早く教えてよー」

「私…飲み物買ってくるね」

不自然にならないように立ち上がり、バッグを持って出かける準備をする

「ちょっ…と待ってよひなた!もう外暗いから俺が…っ…」

ひなたを追いかけようと慌てて立ち上がったエリュだったが

長時間正座していたせいでうまく動けない

彼がようやく上着を羽織った時には彼女はもうドアを開けて外へ出て行ってしまった。

「二人は待ってて、ひなた帰ってくるかもしれないし夜は危ないから!」

早口でそう言うと、エリュは急いでひなたの後を追った。

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