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第五夜 台風

 四時間目の太刀川(センセイ)の授業が終わると、昼食の時間だ。


 富士坂南中は、実験校として他の中学校に見られない取り組みをいくつかしている。


 そのうちの一つがキャンティーン(生徒食堂)があって、事前に配られるメニューの中から選んで予約しておくとそれが食べられる。


 気の合う仲間同士で集まって食べることができるから、食事の時間が結構楽しい。


 今日は、キャンティーンの奥の窓際の席に、いつもの俺たち六人に、ヒナと柊を加えた八人一緒に食事だ。


 その前に麻里奈、香織、ヒナに柊の紹介をしないと、と晴矢は思った。


「柊、六人の小学校のクラスメートの残りの二人だよ。麻里奈と香織」


「磯辺 柊です。『柊』ってもうみんなに呼ばれてるから二人もそう呼んでくれると嬉しいな」


「うん、私は関 麻里奈。柊、よろしくね」


「私は三谷(みや)。よろしく」


「麻里奈、ミヤ、よろしくね」


「おい、香織、お前、柊が下の名前だと思ってるぞ?」

 と俺が突っ込むと、


「あら、そう?」

 といつもの感じでそっけない香織。


「じゃあ、『カオリ』でいいのかな?」

 と柊が聞くと、


「そうね、あなたの好きにしたらいいわ」

 実は、香織は明らかに緊張している。少なくとも晴矢にはわかる。


(緊張しててもいいけど、その言い方は、どうなんだ?)


「あと、昨日から俺たちのグループに入ったヒナだよ。ヒナ、こちらウチのクラスの転校生の柊。昨日、俺たちのサッカーのチームの見学にきてたんだ」

 

「小山です。よろしく」


 と、消え入るように答えただけだった。


 そのくせ双葉たちがグループで固まってるところに勇敢にも友達になりに来た。


 どっちの姿が本当のヒナなんだろうか。晴矢は少し戸惑った。


 するといきなり柊が晴矢を小突いた。


「晴矢、『俺たちのグループ』って、なんかお前たち裏の番長グループみたいでカッコいいな?」


「そんなこと初めていわれたよ。陰キャの集まりぐらいにしか思われてないんじゃね? 俺たち。」


「いやいやいや、こんなに仲が良いって事は、僕にはちょっと羨ましいよ。前の学校じゃ放課後つるんでるようなクラスメートはほとんど居なかったし」


「アトレチコの練習に毎日通ってたんだろ?それじゃ仕方ないよ」


「まあ、そうだね」


「でも、なんで武蔵山市なんかに引っ越してきたんだ?もったいないじゃん。アトレチコ東京の10番なんてそうなれるものじゃないだろ?」


 と雄二。


「うちの父さんが転勤でね。でもFC富士坂のことは知ってたし、昨日はすっとぼけてたけど、FC富士坂に山田さんがいることは前のコーチに聞いて知ってたんだよ。」


 柊の目が一瞬光った気がした。


「僕は山田さんに指導してもらえるなら、それほど躊躇しなかったさ」


「おまえ、顔に似合わず結構腹黒いのな」


 と双葉が驚いた顔をした。


「すまない。双葉とポジションが被ったことはちょっと残念だけど、トップ下は譲れないよ」


「ああ、俺もだ」


 ちょっとキナ臭い感じになったところで麻里奈が助け舟を出す。


「はいはいはい、サッカーの話はサッカーの時にしてちょうだい。ライバル同士バチバチいくらでもやってくれ」


 時折、麻里奈は男っぽい話し方をする。


 そんな態度も麻里奈の魅力の一つではあるのだが。


 麻里奈のその一言で、二人は大人しくなった。


 食事をしていると、臨時の校内放送が、


「台風二十一号が…接近しているために…本日の午後の授業は…中止とすることが…職員会議で決定されました。全生徒は…速やかに…下校し…本日は…外出をしないように…心掛けしてください」


 少し間延びした放送にちょっとほっこりした。


 放送のことはともかく、台風は勢力を保ったまま高気圧をついに蹴散らして加速したようだ。


 体育館を使う運動部のみならず、文化系の部活も今日は活動停止となった。


 当然、今日はみんなで自習室に行くことはできない。


 見る間に雨が降り始め、風も出てきた。

 

 窓の外から見える景色は、朝とは全然違う様子になっていた。

 

 HRで太刀川(センセイ)は、


「台風が思いのほかでかくて強いからな。気を付けて帰るんだぞ。みんな。それから明日だが、場合によっては休校になるかもな。そん時はおとなしく家で自習してろ」

 と言って何枚か宿題のプリントを渡し始めた。


 クラス中一斉に、


「ゲーっ!」


「やりたくねえなー!」


 という声が上がったが、太刀川(センセイ)はニヤニヤしながら、


「いいから勉強しろ」

 と冷たく突き放した。


 HRが終わり、昇降口で靴を履き替えて外に出てみたが、かなり雨は強くなっていた。


 晴矢たちは仕方なく雨が強くなった中、びしょ濡れになりながら自転車を漕いだ。

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