第11話:「村長は恐怖から利へ」
明かりが消えていく村の中で、寄合に残った者が一人おりました。
村長でございます。
囲炉裏にくすぶる残り火を見つめながら、ぽつりと呟きました。
「昔も、こんな夜があったな。」
それは、村長がまだだいぶ若かったころの話でございます。
その年は日照りが続き、井戸は底を見せ、畑はひび割れておりました。
「このままでは冬は越せんぞ。」
「備蓄を買う金もない。」
「どうにかならないのか」
村は追い詰められておりました。
そんな折、隣の村からひとつの噂が流れてきました。
――山姥を捕らえれば、奉行所から謝礼が出る。
最初は誰も本気にはしませんでした。
しかし、藁にもすがる思いで、村長は隣の村へその噂を確かめに行きました。
「隣村は二人の山姥を見つけ、その謝礼で干ばつを乗り越えたという。どうやら噂は本当らしい。」
若かった村長は、噂について村人たちに伝えました。
村人たちも驚いた顔でしたが、「な…なら、村人皆で山姥を見つければいいんだな。」と聞き返しました。
「まずは、疑わしき者がいれば、相談してくれ。」
「最後は、村長として決定を下す。」
その日から、村人たちは互いを見張るようになりました。
最初は一件だけでした。
「証拠はあるのか」と問う者も中にはおりました。
ですが、「もう時間が無いんだ!」「疑いがあるだけで十分だろ。」村人たちからの言葉が、村長を追い詰めていきます。
最初の一件は、その日のうちに村長から奉行所へ報告がなされました。
やがて村には謝礼が届きました。
干上がりかけていた井戸が直り、飢えかけた家々には米が配られました。
それからというもの、誰も証拠という言葉を口にしなくなりました。
それからは、早うございました。
怪しい者がいると囁かれ、村長のもとへ名前が集まり、奉行所が連れていきました。
「いやー、村長はさすがですよ!山姥も退治して、村も豊かにするなんて!」
「期待していますよ!村長!」
村人たちが、村長を担ぎあげます。
「ははは、そうだな!村のことは任せてくれ!」
囲炉裏の火が、ぱち、と弾けました。
村長は静かに目を開けました。
――あの年、村は救われた。少なくとも、そう思っている。
「今回も……村のためだ。」
村長はそう呟き、立ち上がりました。




