表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

第11話:「村長は恐怖から利へ」

明かりが消えていく村の中で、寄合に残った者が一人おりました。

村長でございます。


囲炉裏にくすぶる残り火を見つめながら、ぽつりと呟きました。

「昔も、こんな夜があったな。」


それは、村長がまだだいぶ若かったころの話でございます。

その年は日照りが続き、井戸は底を見せ、畑はひび割れておりました。

「このままでは冬は越せんぞ。」

「備蓄を買う金もない。」

「どうにかならないのか」

村は追い詰められておりました。


そんな折、隣の村からひとつの噂が流れてきました。


――山姥を捕らえれば、奉行所から謝礼が出る。


最初は誰も本気にはしませんでした。

しかし、藁にもすがる思いで、村長は隣の村へその噂を確かめに行きました。


「隣村は二人の山姥を見つけ、その謝礼で干ばつを乗り越えたという。どうやら噂は本当らしい。」

若かった村長は、噂について村人たちに伝えました。

村人たちも驚いた顔でしたが、「な…なら、村人皆で山姥を見つければいいんだな。」と聞き返しました。

「まずは、疑わしき者がいれば、相談してくれ。」

「最後は、村長として決定を下す。」

その日から、村人たちは互いを見張るようになりました。


最初は一件だけでした。

「証拠はあるのか」と問う者も中にはおりました。

ですが、「もう時間が無いんだ!」「疑いがあるだけで十分だろ。」村人たちからの言葉が、村長を追い詰めていきます。

最初の一件は、その日のうちに村長から奉行所へ報告がなされました。

やがて村には謝礼が届きました。

干上がりかけていた井戸が直り、飢えかけた家々には米が配られました。

それからというもの、誰も証拠という言葉を口にしなくなりました。


それからは、早うございました。

怪しい者がいると囁かれ、村長のもとへ名前が集まり、奉行所が連れていきました。

「いやー、村長はさすがですよ!山姥も退治して、村も豊かにするなんて!」

「期待していますよ!村長!」

村人たちが、村長を担ぎあげます。

「ははは、そうだな!村のことは任せてくれ!」


囲炉裏の火が、ぱち、と弾けました。


村長は静かに目を開けました。


――あの年、村は救われた。少なくとも、そう思っている。


「今回も……村のためだ。」

村長はそう呟き、立ち上がりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ