第一話 「登校日」
「うわぁ!!!……って夢?」
魔王に首から上を吹き飛ばされ死ぬ予定だった僕は驚きのあまりベットから飛び起きた反動と持ち前の寝相の悪さのせいで無様にも足をベットから滑らせ床へと落ちてしまう。
「いって…せっかく今日から学校だってのに幸先悪いなぁ……」
そう口をこぼすもあいにくこの部屋にはその言葉に反応してくれるような人はおらずしばしの静寂が流れる。
5分くらい経っただろうか。ようやくその静寂を断ち切る鶴の一声が下の部屋から声が聞こえてくる。
「早く降りてきなさいムーア!今日学校なんでしょ!」
その母の一言によりようやく部屋から出た僕は人生で初めての学校へと向かうのであった。
「……ご飯食べたかったなぁ」
そう愚痴をこぼしながら学校への道を歩く。結局朝起きた時間が遅かったのもあり朝ご飯を抜いたまま学校へと向かっているのだ。その上今日は一人での登校である。今まで何度かお母さんと学校の周りを通ったことはあるので道には迷わないが、周りを見るとお母さんと楽しく話しながら向かってくる子が何人もいた。「今日はどうしても外せない仕事があるの……本当にごめんね」と言われ渋々一人で出かけたがやはり僕もまだまだ10歳の子供なのでこう言う時は母と一緒にいきたいものなのだ。仕方ないこととはいえ少し不貞腐れて歩いていると後ろから小走りで駆けてくる音が聞こえる。
「わ!!」
そう言い声をかけて来たのは幼馴染であるクラーク・メリーである。家が横のためよく遊んでいる女の子である。僕なんかとは違い歩き方一つとっても品があり、とてもじゃないが6歳には見えないような佇まいをしている。何が言いたいのかと言うとメリーはご令嬢なのである。この村の村長の娘なのだ。それを知った時そんな子の隣に住んである僕ももしかしてお金持ちの家に住んでるのかなーなんて思ったこともあったけど全くもってそんなことはなくただの一般家庭であった。そんな一般家庭の横になぜ村長が住んでいるのかはすごく疑問だったのだが、メリーが言うには村長である父が「私たちもこの村の一員なのである。村長という肩書はあるがそれは贅沢をして良い理由ではない」と言う言葉かららしい。要するにたまたま村長が僕たちの家の近くに家を建てただけと言うことである。
「おはようムーア!びっくりした?」
「おはようメリー。後ろから走ってくる音がしたから驚きはしなかったかな」
僕がそう言うとメリーは不貞腐れたようにほっぺを膨らませ「ふん!」と聞こえて来そうな様子で顔をそらした。やはりご令嬢で教育が行き届いてるとはいえやはりまだまだ10歳の子供なのでこう言う子供っぽいところは抜けきっていないらしい。僕もだが。
そんなこんなで学校まで歩いていく途中にとある女性に声をかけられた。
「あら今日から学校かしら?」
「うん!そうなんだよ!」
もうすぐ学校と言うところで声をかけて来たのはシルベおばさんだ。シルベおばさんはこの町で占い師をしているおばさんだ。僕やメリーも一昨日、健康に育つかどうかを一度占ってもらっている。僕たちのように健康と言われた人はこれからもずっと健康でいるそうだがそうじゃない人のほとんどはどこかしらで怪我をしたり病気をしていると聞くから驚きの的中率である。とはいえ彼女のお店はここからずいぶん離れた村の端にあるのになぜ朝からこんな場所にいるのだろうか。疑問に思ったことは聞いた方がいいと母に教えられて来た僕はその疑問をそのままおばさんにぶつけた。
「シルベおばさんはなんでこんな場所にいるの?」
「それはね昨日の夜の占いで明日の朝ここに行けって出たからなの。なんでかなって思ってたけど謎が解けたわ。」
そう言ったシルベおばさんは僕の耳へと口を近づける。
「ムーア君今日夢を見たでしょう?」
そう言ったシルベおばさんの声は静かで小さな声であったが、疑うことを知らぬと言わんばかりの声音は僕の心へと突き刺さる。明らかに動揺している僕をメリーは心配そうに覗き込み「大丈夫?」と声をかける。その反応に対して上手く言葉を返せない僕を尻目にシルベおばさんはクスッと笑い僕に視線を合わせる。
「そんなに怖がらなくてもいいわよ。」
「ほんと?」
怖くて聞き返した僕に対してシルベおばさんはまたクスッと笑い僕に話しかける。
「だって、こんなに魔法をすぐに覚えられる子なかなかいないもの。私びっくりしちゃった。」
「……え?この夢って魔法なの?」
「そうよ。私の使ってる魔法の初級。見ただけで使えるようになるなんて、もしかしたらすごい才能を持っているのかもしれないわね。」
「本当に!?」
「えぇ。本当よ。」
そう優しく言ったシルベおばさんは周りに登校をしている他の生徒がいないことに気づき話しすぎちゃったと少し慌てた後に僕たちに学校へ行くように促す。
「学校、楽しんでくるのよ。」
そう言ったシルベおばさんは僕たちと反対方向へと歩いていく。その後ろ姿に僕たちは大きな声で「さよーなら!」と声をかけ遅刻しないように走って学校まで向かう。
遅刻しまいと走っていく僕らを横目に見ながらおばさんは振り向き、見つめる。少し不安な顔をした後に口元を緩めこれから成長し、ゆくゆくは大きく成長するであろう子たちに向けて彼らには聞こえない声量で言葉をかける。
「その夢の内容が本当の史実になりませんように。そして彼らのこれからに多くの幸有らんことを。」




