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傘がない
涙は人間の作る最も小さな海です。では、人間の作る最も大きな海は何ですか?
それは羊水です。
偽りなく庇い守ることができるのは誰でしょう?
◇◇◇
「私なら! 母親の私ならそれができます。私はあの子の前世でした。大地が私に教えてくれたのです。萌芽が健やかに育ちますように。
大地と母は、静かに四月の季節のなかで、自分たちの胎のなかに雨となって降りました。
ひとつの成長をめぐって、これを囲んでいる宇宙の静寂──子を孕む者としての同感のおもいは母親にしか分かりません。
◇◇◇
ですから傘がなくても大丈夫です。
帰りなんいざ、田園まさにあれんとす、なんぞ帰らざる。田園に「魂のルフラン」がとおりすぎて、傘ナシなめこが誕生しました。あるいは枯れなめこが傘ナシなめことして復活したのかもしれません。