表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜥蜴人間と彼女  作者: あおかえる
PR
31/49

31 直前訓練(1)

 ブリーフィングが終了した。作戦計画の概要は、零小隊を二個分隊に分けて、同日同時刻に小矢部邸と倉庫を同時に急襲する。というものだった。小矢部邸には、城端二尉、新湊、有磯と陸自隊員一名の合計四名。

 倉庫担当チームは更に二班に分けて、倉庫の北側から侵入する、氷見、神通と陸自隊員二名の合計四名の班と、南側から侵入する雄山、石動、陸自隊員一名……そして、俺。の四名の班に分けられた。高岡隊長は統合作戦本部に詰めて、全体の作戦の指揮を執る事となった。陸自隊員は、説明があった例のゴーグルセンサーを着用する予定だ。

 

 倉庫の北側にはトラックホームがあり、城端班は、その横にある従業員用出入り口を破って侵入し、倉庫区画を制圧する。南側には正面出入り口があり、雄山班はそこから侵入し、隣接する事務所や従業員の居住施設を捜索して、制圧確保するのが任務だった。建物の構造上、北側の班と南側の班の同士撃ちの危険性が少ないため、原始的ながら効果の高い『挟み撃ち』という作戦を採用する事にしたらしい。

 

 俺には戦闘に関する知識など皆無だ。戦闘のスペシャリスト達が計画立案した作戦に、異を唱える知識など持ち合わせていない。知っているのはコロッケの揚げかたや、廃油の処理とか寿司マシーンの操作方法ぐらいだ。だからその行動計画を聞いた時も、任務を果たす事だけに気持ちを集中させた。

 

 「よし、では作戦決行予定の分隊に分ける。隊を分けても気持ちは一つだ。成し遂げよう」ブリーフィングの後、個別会議で城端二尉が隊員に声を掛ける。

 

 応援してくれる陸自隊員も参加していた。五名が五名、全員、眼つきが鷹のように鋭かった。いわゆる『ゴリマッチョ』ではないが、引き締まった筋肉質な体型は精悍で、恐ろしく敏捷そうだった。

 

 「空挺だ」

 

 俺が陸自隊員に視線を向けているのに気が付いた有磯が、そっと囁いた。俺は有磯の方を見る。彼は陸自隊員の胸に視線を向けた。俺は視線を追った。パラシュートに翼を象った、見慣れない略章が胸に付けられている。

 

 「精鋭だぞ」再び有磯が囁く。

 

 城端二尉が挨拶を終えると、応援の空挺隊員と零小隊の各員は挨拶を交わした。俺が所属する雄山班には、上市かみいちと言う名前の三曹が参加してくれる事になった。

 自己紹介や挨拶もそこそこに、個別会議が直ぐに開始された。『作戦分隊』『支援分隊』と隊を分けたのに、すぐに急襲作戦が立案されたので、小隊を混成した上での班分けが行われた。まぁ、作戦分隊は素人同然なので、文字通り支援分隊が、『実戦での作戦分隊の支援を行う』と考えればおかしい事でもなかったが。

 

 小矢部突入班と倉庫突入班に分かれて、打ち合わせが開始された。気が付くと突入班の周りに人が集まっている。通信、医療や、区画封鎖のための警察、陸自関係者。そして、倉庫の四隅を建物の外から警戒する狙撃分隊。

 

 城端二尉が、一度顔を上げると皆に言った。「ゴーグルセンサーが一個余るが、狙撃分隊長に装着してもらう予定だ。外部からの警戒用だ」彼は一旦、言葉を切ってから再び話を続けた。

 「一度作戦が開始されたら、命令以外で倉庫外に出る事は無い。万が一、緊急事態で倉庫外に出る場合は無線連絡を必ず行え。事前に複数パターンの合言葉を伝える。必ず全パターンを暗記しろ。敵味方が識別できない場合、例え外見が俺達であっても、狙撃手はこちらを射撃する事になっている。充分気を付けろ」

 

 (『敵を敵と認識すること……』)俺は射水の言葉を思い出した。任意の姿に偽装できる蜥蜴人間というのは、ここまでやっかいなのか。偽装の方法が良く分かっていない以上、彼らは、俺達小隊員の姿に即座に偽装できるのかもしれない。そうなれば、判断が付かない味方から誤射される危険が発生する……考えると身体に緊張が走った。不安と緊張から顔が下に向く。

 

 「掌握しました」

 

 その時、良く通る返事が聞えた。慌てて声のする方を見る。返事をしたのは上市三曹だった。落ち着いた表情。気負いも過剰な緊張感も無い。彼の返答と立ち居振る舞いを見て、俺は落ち着きを取り戻す事が出来た。

 (俺達みたいに『見える能力』が無いのに、あれだけ落ち着いていて、そして任務を果たそうとしている。……作戦はもう始まっているんだ。びびるな。任務に集中しよう)

 

 「では、突入の手順を説明する……」城端二尉の話は続く。

 

 俺は顔を上げ、城端二尉の眼を見ながら、一言も聞き漏らすまい。と二尉の言葉に耳を傾けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ