11、奉行就任
那古野城評定の間。佐久間大学盛経はいつものように重臣たちの間に足を踏み入れる。家老や奉行衆が揃い、内政についての話が行われる。ただ国人衆も参加できるので、話は一方的ではない。それが佐久間大学にとっては心地よかった。
「……誰じゃ」
大学は思わず口に出していた。童子だ。見かけぬ童子が座っていた。
「何じゃ、知らぬのか。大学よ。これは木下小一郎よ。此度奉行衆に加わることとなった」
信秀が笑いながら言う。大学は童子の顔をまじまじと見た。知ってはいた。木下小一郎という変わった童子がいると。だがそれが織田家の内政に関わるなど……。
大学は重臣、奉行、国人衆の者たちを見る。不満そうな者は誰もいない。
大学は怯んだ。ここで不満を口にすれば、信秀は大学を斬るだろう。そこまで小一郎の威勢は強くなっているのだ。
受け入れるしかない……。大学は大人しく用意された座に座る。
「さて、小一郎より兵を鍛えるように申し出があってな。いつ戦になるとも限らん。土佐守と大学で兵を鍛えよ。冬の間は怠ってはいかん。それと津島との商いのことだが、那古野に屋敷を作る。これは小一郎の策じゃ。商人たちを囲い込む。織田をもっと豊かにするのじゃ」
重臣たちから異論は出ない。こうして織田家の内政は小一郎の改革により着々と進んでいくのだった。
徴兵、職人誘致、街道の整備、武家屋敷増築、寺社への貢物、国人衆への貢物、商人への貢物……年を越えても小一郎主導の改革は進んだ。平手政秀、柴田土佐守といった重臣が後ろ盾になっている。皆、不満に思っていても口には出さない。
織田家の大改革と中村の領地開発は連動して続けられた。
三月には野武士の摘発があり、中村では治安維持がされた。これにより、小一郎は信秀から褒められる。
また、小一郎は津島に出向き、交易所を設けた。これは中村と津島の交易を円滑にするために必要なモノだったのだ。
「相模は如何であった?」
小一郎は新しく家臣になった次郎兵衛に聞いた。次郎兵衛は商人もしている。
「ふむ。甲冑、それと米じゃ。奴らは欲しがっておる」
次郎兵衛がニヤリとして答える。関東の雄・北条との交易。それは順調に進みそうだ。小一郎はいつもの不気味笑みを浮かべる。
中村は金が流れ込む一大都市へと成長しつつあった。
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