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半魔の憧憬  作者: 雛咲かなで
第一章 憧れになれないモノ
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△ 夢見の鳥は業火に燃えて

偽リアの姿が消える。瞬間、ディネリンドは悟る。この突きは躱せない。防ぐのも間に合わないと。諦め、自分ごと偽リアを迎撃しようと考える。それでも痛みは少し嫌なため、目を瞑る。…しかし、いつまで経っても痛みはやってこない。するのは肉の焦げる臭いのみ。感覚がイカれたのだろうかと目を開けば…

「…な……」

アミニスがディネリンドを庇うようにして、黒い剣に腹を突き抜かれている。

「なに、やって…」

ディネリンドを庇ったアミニスに声を掛けると、血を吐きながらアミニスは答える。 

「決まって、るでしょう?あたしも、できることを…っ…!」


アミニスの傷口から黒炎が燃え広がっていく。距離をとるアミニスと、剣を構え直す偽リア。

「っ…はっはぁ…!上等!燃えて、きましたよ!」アミニスが木の剣を構える。この村で売っていた剣だ。

「さぁさぁ、皆様!このあたし、『花形役者』アミニスの…!最期の、舞台!是非とも……ご覧あれっ!」


アミニスが左足で大きく踏み込む。前の戦闘で潰れたのであろう凄惨な右足、その弱さを一切見せない素早さ。その秘訣は恐らく──


「最初から、本気で行かせてもらいますよ…!『花形降臨』!」剣を構えたときからほんのりと纏っていた淡い光。身体能力がかなり上がっているようだ。一直線に偽リアの目の前まで飛びかかり、木の剣を振りかぶり…


「……ワタシには、勝てませんよ。」偽リアを中心に、黒炎が柱をあげる。炎がアミニスを包み込み…

「それは、冗談きついじゃありませんか!!」

炎を縦にぶった切ったアミニス。腹部からは常に黒炎が侵食している。


「リアさん!あたしを、殺すなら!本気でやらないと…勝てませんからね!!」

「…いいでしょう。ワタシも本気で相手してあげます。『人魔の軌跡』」

偽リアから、ドス黒い影のようなオーラが溢れる。オーラが偽リアを包み込み、そして──


「さぁ、始めましょう。」紫色の肌に紅色の目、そして背中の左側にだけ生えた黒い翼。禍々しいその姿にアミニスは…

「はっはぁ…!いいでしょう!短期決着といきましょうか…!『業炎』!」

全身に…木の剣ではなく、全身に炎を纏ったアミニス。対するは、魔物の血に支配された偽リア。


何の合図もなしに、2人が同時に動き出す。偽リア

の方が速く、偽リアは赤い斬撃を移動しながら飛ばし、偽リア自体は背後に回り込む。

アミニスは初撃の赤い斬撃を防ぐので手一杯。偽リアの刃がアミニスの心臓を貫こうという時…

「させま、せんよっ!」

アミニスが一瞬で地面に伏せ、刃を躱す。そのまま足を後ろへ半円を描くように上げ、偽リアの刃を蹴り上げる。一瞬左腕を軸に倒立し、右腕に持っている木の棒で偽リアの足へ突き出す。


「……甘い。」

ジャンプして躱す偽リア。逃さないと言わんばかりに蹴り上げた時の勢いそのまま、木の棒を下から上に振り上げながら半回転。うまく着地したものの、アミニスの木の棒に切った感触はなく。


「─黒影刃。」

アミニスの上から声がする。偽リアは翼を使い空を飛んで躱したようで。

隙だらけのアミニスの頭に、偽リアの手が触れる。同時に偽リアの足元から無数の影の刃が生まれ、串刺しにしていく。


「…はっはぁ!ようやく、捕まえましたよ…!」

串刺しにされたアミニス、そんなアミニスが偽リアの腕を掴んで、全身に纏った豪炎が偽リアの腕を焼き焦がしていく。

「ずいぶん用心深いものでしたからねぇ…!今も横腹を燃やす黒炎といい…剣撃といい…反撃をもらわないように、していたんでしょう…!?おおよそ、時間稼ぎして黒炎で焼こうとでも思ったんでしょうが…!あたしはこんなんじゃ、死にませんよ!!」

木の枝が偽リアの腕に向け、思い切り振り抜かれる。今も紫色の肌を黒く焼け焦がしていくその腕に触れるというところで─

「黒影刃。」

アミニスの内側から、無数の影の刃が突き出してくる。

「かは…っ…!?」

アミニスが吐血する。木の枝が手から落ち、赤い炎が弱々しく消えていく。代わりに黒い炎はその勢いを強め、青い着物が灰になっていく。


「………一つ、勘違いがあるよ。」

 

掴まれていた腕を振り払った偽リアが、また動き出し…動かなくなったそれを抱きしめる。手放し、それが地面に着くと同時、黒炎は一気に強さを増し、焼き尽くす。

それを見届けた後、偽リアがこちらを振り返る。髪の色が黒から白に変わり…

「──…わたしは…アミニスを殺すのが怖かったんだよ。」

偽リア…リアが話し始める。

「確かに意識は乗っ取られてたよ。わたしはわたしじゃなくなって、偽物に変わってた。」

…リアが、ディネリンドを真っ直ぐ見つめている。何も変わらない真っ直ぐな目で。

「でも…殺すのが怖かったのも、殺そうって決めたのも、全部わたしが判断した。意識が混ざってたとは言え、確実に。」


リアは剣を捨て、両手を広げて一言。


「そんな極悪人をどうするか……頭のいいディネリンドなら…わかるでしょ?……ね…お願い。」

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