抱擁
ミツル=エミママ になります。
エミママ「もうここには、居られないということ?」
エミ祖母は、想定内のつもりだったが、当惑もしていた。
エミ祖母「そんな堅苦しく考えないで気楽に遊びにいくような感じで」
ミツルパパ「私も、私の車で一緒に行きましょう」
エミ祖母「かまいませんよ」
ミツルママは、立ち上がろうとしなかった。
ミツルパパ「今日は、私と、ミツルで行きましょう」
エミママは、ミツルママ一人を置いていくのに抵抗があったが、なすすべもなかった。
エミママは、エミ祖母の車に乗せてもらって、ミツルパパは、自分の車で後を追った。
Christianhome
ミツルの実の父親は、仕事で単身赴任していた。
そこには、少年が待っていた。
「僕と、取り違えたから男だと思ったけど、女なんだ。ちょっと、かわいいね。長い付き合いになると思うので、よろしくね」
エミママの印象は、小者臭のする男だった。
ミツルパパは、これが実の息子なのか、素直に喜べなかった。
エミ祖母「ミツルちゃん、今度の日曜、礼拝に出てくれるわね」
エミママ「ご免なさい。学校へ行かなければならないので…」
嘘ではなかった。
たまたま、かつての担任でもある海野トリトンが、ミチルの父兄として学園を訪ねる日だった。
エミ祖母「そう…それから、半年後くらいにバプテスマを受けてもらうわ」
ミツルパパ「なんです、それは?」
エミ祖母「信仰に入る証です」
そんな話をいくつかしたあとで
ミツルパパ「今日は、遅いので、『私たち』は、これで」
「ミツルちゃんは、泊まっていけばいいのに」
ミツルパパ「ミツルが、ここで寝起きするのは、君がうちにくるときだ。疑って悪いが、君と、娘を一つ屋根の下に置いてはおけない」
「あんただって他人だろ。父さん」
エミ祖母「そんなこと、言うものじゃありません」
エミママ「ご免なさい。うちに変えるよ」
ミツルパパ「家内も、娘に情がうつって、現実を受け入れられないでいるので、今夜は、これで、失礼します」
車の中、気まずかった。
昨日まで、信じて疑わなかった。
父が、他人なのだ。
うちへ帰ると
ミツルママ「ミツル」
エミママは、ミツルママに抱きしめられた。
ミツルママは、泣いていた。
情がうつったというだけでない、なにかが…?
そして、日曜日。
トリトン、ミチル、EMI、エミママ、しっかり、ミカリもいた。
ミカリ「ここ教会があるんだよ」
トリトン「母さんを救ってくれなかった神の宮」
エミママ「ごめん、今日は、これで」
ミカリ「教会? ミツル君がいくなら私もいく」
ミチル「兄さん行くよ」
トリトン「…ああ」
会堂
ファーザー中浦「いらっしゃい」
ファーザー中浦、学園内は、生徒と、父兄以外入れないので、学園の外の会堂でも伝道するカソリックの司教だ。
会堂の壁には、男が、もう一人の男に水をかけられている絵画がかけられていた。
エミママ「バプテスマ」
ファーザー中浦「よく、ご存知で」
ファーザー中浦「うちの学園は、幼稚舎から大学院まで、神学は選択科目で、『青山学院』のように必修ではないので、くるのも、やめるのも自由です」
ファーザー中浦「最も、青山学院でクリスチャンを探すのは、砂漠の中で一本の針を探すより大変ですけどね」




