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森への依頼はバタバタと

 昨日の内にと思ったのですが間に合わず。

 すみません。

 よろしくお願いします。

 私は出発の日の早朝にギルドへ集まる。

 まだ薄暗いのにもうギルドの入り口には光が灯り、受付の人はカウンターについている。

 イサムと双子はまだ来ていない。

 私はこういう時いつも早めに行動することにしている。

 別にイサムみたく興奮して寝れないとか、家の使用人がうるさいからではない。

 早く着くことで、心に余裕が生まれる気がするからだ。


 以前チコリさんが、魔術師には冷静な判断力が求められる事が多いから、心に余裕を作る事は大事だと言っていた。


 取り合えず、待合場所の椅子に座って魔術の本を開く。

 これは最近この街で入手したそうだ。

 使用人には、定期的に街の店などを探して珍しい書物なら手に入れるように指示している。


 内容を簡単に説明すると、強力な雷の魔法についての考察だ。

 雷というのは普段身近にないので、学園でも教えれる講師は聞いたことが無い。

 この著者も湖の主に接触を試みたとか、嵐の日にずっと外に居たとか、大半が苦労話だ。

 しかも、遂に研究の集大成として、強敵に全力で使用する実験の結果、大したダメージも与えられず、深く傷ついたとか、わりとどうしようもない内容だが、雷という現象に対する考察は中々面白い。

 書き方も巧みで、最近のお気に入りだったりする。


 「・・・だから、あいつらと一緒に行動するぐらいなら早めに出ようって・・・」


 ギルドのドアを押し開きながらそんな声が聞こえてきた。

 何気なく視線を向ければ、真っ赤な髪に赤を基調とした衣装で合わせた4人の女の人達が入ってくる。

 ドアを開けながら後ろを振り返り非難気に喋っていたのは、全身に革の鎧を着込んだ人だ。

 私は前衛の装備に詳しくないので、どの程度の装備品なのかは判らないが、所々傷はあってもよく手入れされている。

 実用の美とでも言うべきスタイルだ。

 その頭から血でも出したんじゃ無いかって赤色を除けばだが。


 「まぁねぇ。でも今回は黒の森まで入るんでしょ?ウチ等だけじゃ万一があるかもじゃん?」


 そう言ったのは、僧院の格好をした人だ。

 服装はラポラと似ているが、こちらは深い赤色の服を着ている。

 たしか特定の高位僧侶の中には、赤い服に特別な意味を見出す人がいると言っていた。


 「そもそも、昼まで出発を遅らせる、意味が不明」


 気の強そうな人はたぶん魔術師だ。

 しかも、アンジュリーナ性のローブだ。

 最新モデルではないが、非常に細やかな作りで、彼独特のレース使いが、随所に見られる。

 一見、華美にすら見える装飾の中にも実用性を失っていない。

 さらに見るからに、柔らかな生地の質感が風になびく様は、まさに1枚の絵画のようだ。

 しかもその軽い着心地たるや精霊の羽衣と言っても過言では・・・。

 えっと、要は、もしかしたらハンドメイドかも知れない。

 そう思えるほど精巧な作りだ。

 正直羨ましい。


 「まじ!?はぁ、ほんと死ねよあいつら。・・・じゃあ先に行く?でもポーターもそこそこ集めたんでしょ?どうしようか?」


 驚いているのは赤い全身鎧を着た人だ。

 イサムが、いつか全身鎧を手に入れるって言ってたけど、前衛の憧れらしい。


 「んなの、早く来てるの捕まえちゃえばいんじゃない?どうせ目的地は同じなんだ」


 革鎧の人だ、武器は持っていないが、たぶん前衛の戦士とかだと思う。

 ギルド内では揉め事も多いため、武器の持ち込みは禁止されている。


 「んな場所で獲物みたいに言わないでよ。下っ端に反感持たれたらめんどうじゃん?」


 冷ややかな言動の僧侶は、ラポラと違い。短髪の赤髪で顔立ちも整っているため一見女性に見えないが、その体のおうとつが性別を主張している。


 「そういえば!もう誰か先行してるって言ってなかったっけ?」


 鎧の人が話題を遮るように話しかけ、革鎧の人が答える。


 「あぁー、猫のだろ?参加者割引とかで、アイテム安く売ってたよな。なんて名前だっけ?」


 「しーらない」 


 「世俗に疎い僧侶には聞いてねぇよ。たしか、ちこれ?」


 「あぁ、そんなだった」


 たぶん、チコリさんの事だ

 間違えるなよ。

 それより先行ってなんだ?

 イサムそんなこと言っていたっけ?


 「親のおかげでギルドから特別扱い。やなやつ」


 アンジュリーナのローブの女が聞き捨てならない事を言った。

 もちろん、他人の会話に入っていくほど無神経ではないが、同じアンジュリーナの仲間でも、好感度はマイナスだ。

 正直好きになれない。


 「んじゃ、ポーター待つかぁ」


 鎧の人が、大した気にした風もなくそう言う。


 「じゃ、ウチ等は先行ってるわ」


 「えぇ、そりゃないでしょ」


 僧侶の宣言に、鎧の人が情けない声をだす。 


 「門までだって、どうせまだ開いてないだろ向こうで大人しくしてる」


 革鎧の人も受付で、出発の報告を済ませ、片手を上げて出ていく。


 「なら、ここで待ってればいいじゃないよー」


 鎧の人が、頬を膨らませて抗議するが、その横をすり抜け。 


 「じっとしてるとか無理」


 こちらも受付を済ませた、魔術師と僧侶がギルドから出ていく。


 「ぶー!薄情者ー」 


 本当にこんなので、実力上位のパーティなのだろうか?

 他人事の様に、そう思っていると、すぐにイサムが入ってくる。


 「あ、ココナ速いな」


 「イサムも今日は速いじゃない。いつもはぎりぎりなのに」


 待ち合わせより、まだ少し時間がある。


 「昨日興奮して寝れなくてさ!」


 相変わらずお馬鹿だ。


 「って、紅雀カルミーニオじゃん!!」


 と受付を済ませ、腕を組んでいた全身鎧の人を指さして大声を出す。


 「指ささない。それに声が大きいわよ恥ずかしい」


 「ん?君たちは?」


 赤い全身鎧の人がこちらに気づいて尋ねてくる。

 さっきまでのぶー垂れていた時と声が全然違う。

 落ち着いた大人びた雰囲気だ。


 「今回の依頼ポーターとしてご一緒させて頂きます!」


 イサムが、直角にお辞儀する。


 「そうか、ならちょうど良い、予定より少し早いが出発しよう」


 頭を下げている、イサムの肩に手を置いて、いきなり話を進め始める。


 「え?でもまだあと、2人来てないんです」


 イサムは一瞬動揺して、こちらを見る。

 そんなのだめよ。

 紅雀っていまいち信用できないし。


 「我々は、先行して安全を確保するのさ」


 「なるほど!!」


 大人びた雰囲気で、告げられると、勝手に納得するイサム。

 おいおい。


 「ちょっとま・・・」


 「おはよう、イサム」

 「おは」


 私が、抗議する前に、絶妙なタイミングで、双子が現れる。

 狙ってたんじゃないかって思うほどだ。


 「マシス!ケシア!ちょうど良かった、少し速いけど出発するよ」


 「了解」

 「了」


 「じゃあ、まずは自己紹介ですか?」


 「いや、ちょうど良かった。紹介は道すがら行おう。」


 もうなんなのよ!!

 こうして、当初数十人で出発すると思っていた依頼は、バタバタと始まる事になった。

 読んで頂きありがとうございます。

 作者には、いきなり沢山の登場人物を考えるなんて事は出来なかったので、こういう形になりました。

 ちょいちょい関係ない話しも入ってますが楽しんで頂けたら幸いです。

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