恐怖のマタンゴです。
よろしくお願いします。
「へぇ、マタンゴって火で攻撃すると、胞子まき散らしてドンドン増えるんだ」
ビエラヤが同時にいくつも火の玉を出して攻撃している。
でも蠢くキノコは、火の玉で弾けると、周囲にボフッと粉をまき散らして、それが地面に落ちるとすぐにムクムクと大きくなり、元のサイズに戻ってしまう。
しかも一体弾けると、3、4体生えてくるため、ドンドン増えていく。
「ビエラヤ~!悪いな、アタイがやるわ」
レティが離れた所で戦っているビエラヤに呼びかける。
すると、魔狼の方が気付いて戻ってきた。
「はぁ、はぁ。・・・申し訳ありません。任されたのに、この様な結果に」
息を整えながら悔しそうにするビエラヤ。
「まぁ、気にするなよ。相性が悪かったんだろ。あ、そうだ。コブン、あれ貸して」
レティが楽しそうに頼んでくる。
僕から借りたがるモノなんてほとんどないので、すぐに思いつく。
二つの首飾りから、片方の爪の欠片をレティに渡す。
「!?それって・・・」
チコリは見覚えがあるみたいだ。
首飾りの爪が手の平の真ん中に来るように紐を指に絡め、手を蠢くキノコ達に向ける。
「我命ず、冥府の灯、魂の導、我が・・・」
「!れっレティシア様!?詠唱なさるんですか!?」
「ん?あぁ、森の中で火の魔法を使うと放火魔呼ばわりされるからな」
チコリの驚いた声に、呪文を途中でやめて答える。
「ほっほうかま?」
「まぁ、こっちのことだ。・・・漆黒の鱗、常夜の翼、慈悲の牙、原初の鼓動、深き森の女神にして、万物の・・・」
「なんが、前と変わっでない?」
「魔女技術における詠唱は、宣言することで、自分の頭の中の心象をより効果的に、現象として顕現させるための技術よ。だから決まった詠唱は無いの、心の形は常に変わるものだから・・・」
「・・・ごめん。難しくで意味が分がらない」
レティの手の平から円形の複雑な模様が浮かび上がり、次第に大きくなる。
「レティシアだから、てきとういってる」
そんな事を言いながら、ライシェラが、どんどんこちらへ迫ってくる蠢くキノコ達の足元へ糸を飛ばす。
短い脚が絡まって転んでしまうキノコ達、足は遅いし動きも鈍い。
でも、転んだキノコ達を踏み台にして、後ろのキノコ達がさらに迫ってくる。
しかも、踏まれたキノコは弾けて粉をまき散らし、数が増える。
タチが悪い感じだ。
「慣れてしまえば、唱える必要性は薄くなるわ。でも魔力をより精密に制御したり、効果をより限定的にする為には、いい方法よ」
チコリは、周囲に氷の柱建てて壁にする。
「ふーん?」
「レティシア様が今唱えているのは、きっと力を制御するためね」
でも壁を乗り越えてきたキノコ達が、後ろから押されて壁から落ちて地面で弾ける。
そしてさらに数が増える。
「・・・その一欠片を得し我が声に応え、不快なモノ共を薙ぎ払え」
キノコ達がこちらにたどり着く前に呪文が終わったみたい。
レティの背丈より大きくなった円形の複雑な模様から大量の炎が噴き出す。
でも今までのレティの魔法みたくこちらまで、熱くなることはない。
チコリがパチンっと指を鳴らすと、全ての氷の壁が砕けてなくなる。
すると今までそこに寄り掛かっていたキノコ達がバラバラと崩れてくる。
炎はそんなキノコを飲み込みながら、ドラゴンの形になり、全ての蠢いていたキノコを飲み込んでしまう。
しかも、ついでとばかりに僕たちの周りを、口からブレスを吐いて焼き払う。
周囲のキノコの壁も燃やし尽くした後に、吼える様にゴーッと空を見上げ、爆発するように輝いた。
視界が戻った時には消えていた。
「レティシア、はでずき」
「でも、爪使う必要あっだの?」
「アタイは、制御が苦手って言ったろ?周りの木を燃やさない様にするには、触媒とか使わないと難しいんだ」
「じゃあ、森にいる間は持っでで」
「ん?そっか。ありがとね」
「さすが、レティシア様。あれだけの炎をキノコを燃やす事だけに使ったんですね」
辺りのキノコは燃えてなくなったけど、木々や苔は焦げてすらいない。
「地中の奴まではどうにもならないけど、これで何日かは、大丈夫だろ?」
「そうですね、マタンゴは全て滅んだ様なので数週間は大丈夫だと思います」
すると、今までレティの出したドラゴンに頭を隠して震えていたヒュドラが、大きさからは想像できない速さで移動して、木の陰に居た生き物を捕まえる。
どうやら、キノコの陰に隠れていたのが、今の炎で混乱して逃げ遅れたみたいだ。
それをレティの前に置いて、頭で押しやる。
食べろって事みたいだ。
「今日中に着く予定だったけど、せっかくひらけた場所もできたし、今日はここでキャンプするか?」
「えっ!?あ!はい、大きな魔法も使いましたし、そうしましょうか」
レティもライシェラも、ヒュドラの捕まえた大きなウサギしか見ていないので、たぶん食べたいからだと思う。
「どうした?ビエラヤ、驚いたのか?」
レティが固まって動いていなかったビエラヤの目の前で手の平を振る。
「ヒィェ!?あぁ!いえ!なっなんでも・・・平気です」
目の前で行ったり来たりする手の平を赤い瞳で追いながら、そう言った。
「じゃあ、コブン!よろしくな!今日はがっつりがいいな」
その日は、レティが作った広間でウサギの尽くしのご飯になった。
そういえば、明日は街から冒険者の人達が出発する予定の日だ。
ヒュドラの背中で寝ながらそんな事を少しだけ思った。
読んで頂きありがとうございます。
魔法の詠唱って難しいですね。
かっこよく書きたかったけどできませんでした。




